2002年4月 SIDE TOOKO
抱き締められて、耳元で「俺、今の彼女と別れたら、次は絶対お前を選ぶ。」と、また、言われた。その言葉は酔った時のさくやの常套句と判っていても魔法のようにあたしを動けなくする。
「どうして、そんな事言うの?まるで、今の彼女とダメになるみたいじゃない。」
「どうだろうな。ダメになるんじゃね。」
「そんな、後ろ向きなこと言わないで。」
「最近、連絡が取れてねぇんだ。一か月以上も放っておかれて、俺、本当に付き合ってるって思われてるのかな。」
「彼女、夜のお仕事が忙しだけだよ。さくやの事、大切に思っているよ。」
なんで彼女の味方をしなきゃならないのか判らないけど、さくやの傷付いた顔は見たくなかった。
「だと、いいけどな。」
投げやりに言って、さくやはタバコに火をつけた。
「でも、本当に思っているんだ。次は必ずお前を選ぶって。」
その言葉は、さくやが酔っぱらった時の決まり文句だ。判っていても舞い上がる。さくやに選んでもらえたらどんなに幸せだろう。
けど、さくやは?さくやはあたしを選んで幸せになれるの?
「それで、さくやは幸せ?」
「なってみねぇと判らねぇ。」
「とーこは、さくやが幸せじゃないと、幸せになれない。だから簡単に考えないで。さくやが一番幸せになる道を選んで。」
「お前って不思議なヤツ。」
さくやはそう言うと、あたしの腕を引いて引き寄せ、キスをした。
「お前といると、癒されるんだよ。幸せかどうか判らねぇけど、ああ、ここに自分がいてもいいんだって気分になる。そんな気分は初めてだから、どうしたらいいのか判らなくなるんだ。」
タバコの味がするキスは、温かい言葉を運んできた。
さくやはあたしといて癒されるんだ。
その言葉が聞けただけで十分だった。
「俺、抜け出してきたから、そろそろ帰らねぇと。」
「今日は誘ってくれてありがとう。」
「四日なんて直ぐ過ぎるよな。」
帰りがけにもう一度キスをした。タバコの味がする甘いキスだった。




