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チート! 040 炎の迷宮攻略記録4

 


 40層を我が家の庭のように進むシローたち。

 先ほどテイムした七匹のスライムはシローの【モンスターテイム】スキルによってテイムされた魔物用の異次元居住空間に送還されている。

 なぜ送還したかというと、スライムの歩く速度が非常に遅く、それにイラついたシローが送還してしまったのだ。


 そんなシローたちの前に初めて見る魔物が現れた。

 その魔物は火属性金属系魔物のフレイムアイアンだ。

 その姿はスライムを平たくしたような姿で体表が波うっていることからその僅かな波うちで移動をしていることが分かる。

 体表は焼けた鉄を思い浮かべる赤色であり、およそ30メートルほど離れているのにシローたちの周囲の温度が急激に上がっていることからも触れれば火傷では済まないことが分かる。

 弱点は水や氷属性の攻撃。ここにスノーが居たならば簡単に倒すことが可能だったとシローの表情を曇らせる。

 しかし同時にスノーを助けるために自分はここに居るのだと気を張るのだった。


「私に任せてもらえるかな?」

「しかしジーナの苦手な部類の相手だぞ?」


 シローの言う通り、フレイムアイアンはその見た目から物理攻撃に対する耐性をもっており属性攻撃のないジーナにとっては非常に相性が悪い魔物に見えた。

 しかし相性が悪いからといって避けていては自分は成長しないとジーナは敢えて前に出るのだった。


「分かった、ジーナに任せる。しかし危なくなったら介入するからな」

「ジーナさん、ガンバです!」

「すまない」


 ジーナはその長身を隠すほどの大きな盾を左手に、そして普通の者であれば両手で扱うような長い剣を右手で構える。

 アダマンタイト製の大盾は見た目以上に重く、同じくアダマンタイト製の長剣も重い。

 熊の獣人であるジーナは大柄で身長は2メートル近い198センチメートルだが、大柄な彼女であってもその大きな盾と長い剣を扱えるのかと思われるほどだ。


 フレイムアイアンはジーナを見据えるように見下ろす。

 長身のジーナを見下ろすほどに大きな体を持つのがフレイムアイアンであり、あるか分からない目でジーナをしっかりと見据えていた。

 平たいのに見下ろすほどの高さがあるのだから横幅は十数メートルもあるだろう。


 先に動いたのはフレイムアイアンである。

 その体の一部を切り離すことでサッカーボールほどの高温の球をジーナに向かって射出したのだ。

 ジーナはその高温の球を自慢の大盾での中心に受け止める。

 ベチャリという音がし大盾の表面に纏わりついたのは超高温の液体金属のようなねっとりとした粘度のある物体だ。

 一般的な鋼やミスリル製の盾であれば受け止めて攻撃を防いでも盾が融解するほどの高温の攻撃である。

 しかしジーナが使っているこのアダマンタイト製の大盾はクルルが鍛えてくれた自慢の大盾なのでフレイムアイアンの高温の球を受け止めても溶けることはない。


 次に動いたのはジーナである。

 その大柄の体から想像もできないほどの速度でフレイムアイアンの目の前にまで迫ると、これもクルル製の自慢の長剣を振り下ろす。

 フレイムアイアンの巨大な胴体を綺麗に切り裂き地面にも大きな亀裂が入るほどの攻撃だったがジーナは素早く後ろに飛びのくと、次の瞬間にはジーナが居た場所がフレイムアイアンの液体金属のような体が埋め尽くしていた。


「手ごたえが思った以上になかったが、やはり生きていたか」


 顔さえも隠す兜を被っているのでややくぐもった声で最初の攻撃の感想を呟くジーナ。

 兜で隠れているので表情は分からないが、悲観しているというよりウキウキとして嬉しそうな声である。


「参る!」


 地面を蹴りフレイムアイアンとの間合いを詰めると長剣を振る。

 しかし今度は先ほどより威力はない攻撃だ。

 威力よりも手数を意識した攻撃を放つことで線だった攻撃を面の攻撃に変える工夫である。

 目にもとまらぬ攻撃を繰り返すジーナに反撃をしたくてもできないフレイムアイアン。

 もしフレイムアイアンに口があれば悲鳴を上げていたと思えるほど凄まじい攻撃である。


 数秒後、切り刻まれたフレイムアイアンの破片が地面を埋め尽くしていた。

 ジーナも初めての攻撃だったので上手くいくか不安だったが、フレイムアイアンだった破片を見て「フー」と細く長く息をはく。

 強いが決して倒せない敵ではないとジーナは長剣を鞘に納める。


「気を抜くなっ!」


 ジーナが長剣を鞘に納めた瞬間に後方よりシローの怒号ともいえるほどの大声が発せられた。

 そしてその瞬間、バラバラとなって死んだと思われたフレイムアイアンの破片がジーナに向かって飛んできたのだ。

 不意を突かれたことでジーナは胴体に一発の破片を受けた。

 一発以外は大盾を構えて防いだが、ジーナの胴体に当たったたった一つの破片が蠢き高温による苦痛をジーナに与える。


「ぐっ!?」


 アダマンタイト製の鎧を着ているとは言え膨大な熱量を持つ破片が直撃したのだ、我慢強いジーナであってもあまりの熱さに声をあげる。

 ジーナは歯噛みした。それは高温に耐えるためではなく、自分の甘さが許せなかったからだ。


 ジーナは父親が騎士だったことで自身も騎士を目指した。

 そして父が死んだ時に国を離れ一人で腕を磨きながら旅をして繁栄を極めている魔導王国セトマに辿り着いた。

 ジーナはいつかは故郷に錦をと考えているが、今は修行の身であるためシローと行動をともにし自身を鍛えているのだが、その帰るべき国は既に魔族によって滅ぼされていることをまだ知らない。


「ジーナさん、今助けます!」

「ダメだ!」

「え?」

「これは私の越えるべきものなのだ!……すまないが、今は見守ってほしい」

「……」


 アズハは神狼人へと昇華したことでひと皮どころか幾つも皮が剥けたような活躍を見せている。

 しかし騎士を目指し鍛えてきた自分はどうか?と考えるといつまでも皮が剥けない甘ちゃんなのだ。

 それを実感していたところだっただけにここは一人で乗り切らねばならないと考えたのも無理はない。


 ジーナは耐える。

 フレイムアイアンの破片は大盾を覆いつくし、更にジーナの体を覆いつくそうと圧力をかける。

 体を覆いつくそうとするフレイムアイアンの高温に耐える。

 耐えることだけは誰よりも優れていると自負がある。

 しかし自分には耐えることしかできないことも分かっていた。


 アズハはスピードにおいて圧倒的な存在であり、そのスピードによって自分の戦い方を確立している。

 ここにはいないがスノーも魔法においては誰もが舌を巻くほどであり、彼女は攻撃、支援、回復とどれをとっても非の打ち所がない。

 そして極めつけはシローだ。シローは前衛や後衛の垣根を超えたオールラウンダーである。

 しかもどれをとっても一流であり、絶対的な存在である。

 クルルにしたって皆の戦闘を縁の下から支える生産力を誇るのだ。

 自分だけが皆の足手まといになっている。

 フレイムアイアンの圧力によって地面に片膝を付いたジーナは、ここで両膝を付けばもう押し返すことはできないと感じた。

 自分が本当に危機に陥ればシローが助けてくれるだろう、アズハも助けに来てくれるだろう、しかし、しかしその時は騎士としての自分が死ぬ瞬間でもあると感じたのである。


「ダメだ!私は……私は決して諦めない!」


 ジーナが心の叫びと言わんばかりの大声をあげた瞬間、ジーナのその体は眩い光を放つ。

 ジーナの戦う意志が力となり光の奔流となって発せられたのだ。

 人はこれを【闘気】と呼ぶ。

 【闘気】は人の戦う意志が強く、諦めない心によって発現するスキルだ。

 物理でも魔法でもない力である。


「はぁぁぁぁぁぁぁあっ!」


 【闘気】によって体にへばり付いていたフレイムアイアンの破片を吹き飛ばし、更に大盾にへばり付いている破片も吹き飛ばす。

 破片状態でも生命力が尽きることのなかったフレイムアイアンだったが、【闘気】を浴び、そしてその強き意志によって細胞単位で消滅をする。

 そしてジーナが気付いた時にはフレイムアイアンは完全に消滅していた。


「はぁ、はぁ、や……ったのか?」

「ジーナ、それフラグだから!」

「ふ、フラグ?旗?」


 しかしフレイムアイアンは復活しなかった。

 ジーナはフラグ体質ではないようだ。



 ■ 個人情報 ■

 ジーナ・ベアレス

 熊獣人 15歳 女

 騎士 グリゴール王家の血統 冒険者

 対シロー忠誠度:95%


 ■ 能力 ■

 HP:15,000/15,000

 MP:2,350/2,350

 STR:1,200

 VIT:2,500

 AGI:800

 DEX:600

 INT:400

 MND:600

 LUK:400


 ■ ユニークスキル ■

 騎士の魂


 ■ ウルトラレアスキル ■

 闘気術Lv1(NEW)


 ■ スーパーレアスキル ■

 騎士Lv8(UP)

 剛腕Lv6(UP)

 鉄壁Lv6(UP)


 ■ ノーマルスキル ■

 大剣術Lv5(UP)

 大斧術Lv5(UP)


 @闘気術

 戦う意志が強い者に現れるスキルである。

 戦う意志を力に変え身体強化以上の身体能力向上とその気の力によって敵を討つ。


 

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