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第五話

俺の渾身の『え?なんだって?』は空しくも何もプラスに働くことはなかった。

「おじゃましまーす。」

いつものような軽い気分で、俺の家に入っていく寺田くん。

軽すぎて羽根のようだ。

どうやら、妹のゆりの方はまだ家には帰ってきていないようだ。こいつと妹が家の中で鉢合わせとかいう、目も開けられない状態にならないことを、俺は心底祈るばかりであります。

できれば、このまま妹が帰宅する前にアニメを見て、寺田君に帰ってもらうのが一番理想的と言えよう。

ならば、ここは積極的に先手をとっていくべきか。

「なら、早速アニメ見るとしようぜ。」

「えー。先にゲームしようぜ。」

などと言って、寺田は勝手にテレビの下のゲーム機を収納している棚からコントローラーを取り出す。

「そんなことをしている暇はない!すぐさまアニメを見るんだ。」

「なんかいつになく迫真な感じだけど、お前大丈夫か。」

「あーアニメ見たい見たい症候群来たー。だから早く見よう!な!」

我ながらなんと素晴らしい演技だ。ドラマで演技もこなしていた妹の爪の垢を煎じて飲んだ効果かな?

我ながらなんと気持ち悪いんだ。ちなみにさっきの嘘だからね。信じないでね。

「そ、そうか。そこまで言うなら見ようか。」

と寺田は少々顔を引きつらせながらも言ってくれた。

こんなに優しい寺田がいるだろうか。いや、いない。


そんな寺田の優しさを感じてからすぐに時間は経ち、アニメも次回予告に入った。

「今回も笑ったなー。」

「腹よじれるかと思ったわ。」

などと軽い感想を口にしながら伸びをして、俺は立ち上がりダイニングのキャビネットからポテトチップスの袋を取り出し開封した。

あれ?開封?手紙?

「関西だししょうゆ美味しいよなー。」

寺田は右手でテレビのリモコンを操作し、左手でポテチを取り、食べる。

いや、食べる。じゃねーよ。なんかアニメ見てたら全部忘れてしまっていたよ。

こいつを早く家から出して、ゆりとの邂逅だけは避けなければ。

「あっ、寺田悪りい。俺ちょっとこの後用事があるんだわ。だから今日はこの辺で。」

「そうなのか。何か手伝えることがあるなら手伝うけど?」

そんな優しさやめてええええええ!

心が痛む。チクチクする。あぁ^~こころがチクチクするんじゃぁ^~。

「大丈夫だ。ここは俺だけで充分だ。」

「わかった。なら今日はもう帰るわ。」

さすが空気の読める男、寺田健太君。俺は率先してリビングのドアを開けてシークレットサービスが如く廊下に躍り出て、妹が潜んでいないことを確認した。なに×おれSSだこれ。

「それじゃ。」

玄関で靴を履いて、寺田が外に通じる扉に手をかけようとした。


その時。


扉は開かれた。寺田ではない。もちろん俺でもない。答えは外から入ってくるそいつ。

「あっ」


妹のゆりであった。


これなんて修羅場?




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