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第二話

「おまっ」

俺からこんな声が出るのも無理はない。あの後、妹の持ってきた通帳には見たことのないほどの桁にまで突入した数字が並んでいたからだ。

「こんだけあれば足りんじゃない?」

足りるというか、もうオーバーキルだよ。誰も死んでないけど。

「それじゃ。」

用が済んだとばかりに、ゆりは立ち上がりリビングを後にしていった。十中八九、また自分の部屋に戻るのだろう。

これは今に始まったようなことではないのだが、なんだか釈然としない。

そういえば、何故結局あいつが突然アイドルをやめてしまったのか。その理由も聞けていないでいる。

俺とゆりはここ数年、こういった最低限の会話しかおこなわなくなっていた。今更、俺が親身になってあいつと話し合って、親身になってやるなんてことは考えられないしむしろ御免だね。

正直、俺は妹のことを少なくとも良くは思ってなどいない。

国民的人気アイドルで学業優秀、スポーツ万能、だと?ふざけるのも大概にしろっつーの。そんなスーパーマン、いやスーパーシスターが自分の家族だと、俺がどれほど肩身の重い生活を強いられるか。

どれだけ重いかと言うと、俺がこの前まで使っていたWindowsXPのパソコンくらい重い。立ち上がるのも困難極まりない。誰だ今ジジイみたいとか思ったやつは。

妹はただ家にお金を入れ、そして俺は家事をする。こうやって、俺たち二人はそれぞれに割り振られた仕事と役割を果たしてこの家を守ってきた。


のだが。


事件はその次の日にやってきた。

ゆりが先に登校した後、俺も高校に向かおうと玄関でローファーをはいていた時だった。

淡い桃色の封筒がそこにあった。というか落ちていた。

この家には、俺と妹しか出入りしない。そして俺はこの封筒に見覚えはない。となれば持ち主は妹のじゃない?気になるじゃない?中身見てみるじゃない?

見ちゃダメだ。見ちゃダメだ。見ちゃダメだ。見ちゃダメだ。見ちゃダメだ。見ちゃダメだ。

なんとかどこかのパイロットのような自己暗示をかけて思いとどまることができた。


のだが。


なんで俺はそれを学校に持っていこうとしているんだ?

べ、別に学校で見ようとかそういうんじゃないんだからね。


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