変態の理屈
明けましておめでとうございます。
今年も数学研究会の変態日和をよろしくお願いします。
個人的には水無月先輩が好きなのでもっともっと暴走させていきたいと思います。
ぶっちゃけ美咲君よりも好きですwww
「私が何でメイド服を着ているかですか?」
「初めて会ったときからずっと疑問に思っていたんですよ」
「それは佐藤君も知っている通り私がドMだからです」
「それってどういう意味ですか?」
「だから私がドMだからです」
だめだ会話にならない。
ドMだからメイド服を着るってどういう意味だよ。
「何でドMとメイド服がつながるんですか?」
「え?だってメイドさんは全員ドMじゃないですか」
イミガワカラナイ。
「すみません。よくわかりませんので詳しく教えてもらえますか」
「はい。わかりました」
佐々木先輩はとても嬉しそうだった。
「古来よりメイドというのは欧米諸国の使用人として働いていた。ここまではわかりますね」
「は、はい」
古来よりという言葉を普通メイド関連で使うのか?
「ここでいうメイドとは女性使用人のことでありますが、これは欧米諸国だけで使われてきた名称です。つまり、欧米諸国以外の、または中世より更に古い古代ローマでの女性使用人は厳格にはメイドではありません。しかし、今日では女性使用人のことをメイドさん、または家政婦と呼ぶときもあります」
「・・・・・・」
「欧米諸国といってもそれそのものが一つの国というものではないので、普通は国ごとにメイドのことが違うと思いますが、不思議とどの国にも同じようなメイドの役割がありました。例えばレディースメイド、ハウスメイド、ナースメイドがあります。そしてメイドのイメージも各国で変わることはありませんでした」
「・・・・・・」
「古代ローマにおける女性使用人は中世におけるメイドの扱いよりも酷く、奴隷として扱われてきました。実際これは女性使用人に限った話ではなく男性の使用人でも同じような扱いでした。では中世ヨーロッパにおけるメイドはどのような扱いだったのか?これは簡単な話でただの女性使用人です。まぁ、今のメイドよりも少し立場が悪いといったところでしょうか」
「・・・・・・」
「しかしメイドというものは女性使用人として働くと共に愛人としての役割もありました。ただの女性使用人であるが故にご主人様には逆らえません。なのでメイドが妊娠するということはそんなに珍しいことではありませんでした。しかも妊娠したメイドは解雇されますので酷いものですよね」
「・・・・・・」
「要約するとメイドとは女性使用人でありますがその認識は奴隷に近いものであります。今日のメイドとはただの女性使用人で終わっていますが」
「・・・・・・」
「結論を話しますと私はそういう服従と隷従の存在としてのメイドをドMとして心から憧れています。なので私はメイド服を着ているのです。つまり私はメイド服を着ているのではなくメイドになっているといったほうが正しいですね」
「はぁ」
結局、全然意味がわからなかった。
「まとめるとメイドさんは全員ドMということですよ」
「それは絶対違うと思いますけどね」
途中から話聞いていなかったけどその結論に至ることはおかしいと思う。
「私はメイドさんです。なのでドMです。だから早く私をいじめてください!」
「そんな頼みは引き受けません!」
「どこでもいいんで体を強くつねってみてください!」
「人の話を聞いていますか、佐々木先輩は」
水無月先輩といい、佐々木先輩といい、常人の思考が通用しないのか?
「む~。私のことをいつまで佐々木先輩と他人行儀で呼ぶんですか~」
「いつまでって、昨日会ったばっかりでしょう」
「そうですよ。昨日初めて会ったというのに口に含んだ紅茶をぶっかけるだなんておかしいですよ」
「ぐっ。それはわざとじゃないって何度も言っているじゃないですか・・・・・・」
「わざとでもわざとじゃなくてもあんな行為をされた時点で佐藤君に対する私の好感度はマックスなんですよ。なので早くいじめてください」
「あなたの好感度上昇の条件はいじめることですか!」
「はい。その通りです!」
・・・・・・だめだこの人は。もう終わっている。
「なので私のことは奈央かメスブタと呼んでください!」
「あなたは常識というものをご存じですか!?」
下の名前だけならわかるけど、なんなのメスブタって!しかもそのキラキラとした目で頼むか、普通?!
「もしこの二つで呼ばないというのならさっきあった神崎さんと如月さんに『女子更衣室のロッカーの中で佐藤君に襲われた』って言いますよ」
「少しだけ現実を混ぜるのをやめてください!妙にリアルですから!」
「さあ、どうしますか?言ってもいいですよ」
「くっ・・・・・・わかりましたよ。奈央先輩」
「先輩?」
「・・・・・・わかりました、奈央」
「やっぱり敬語もやめてもらいましょうか」
「もう十分でしょう。やめてください」
「いいえ、SMプレイをするときに敬語で呼ばれたらいけませんから」
「いつからSMプレイをするって決まっているんですか・・・・・・」
「佐藤君が紅茶をぶっかけたときからです。あの時ピーンときましたよ。あ、この人しかいないってね」
過去の僕よ、何故あの時に紅茶をぶっかけてしまったんだ・・・・・・。
「もう三十分は過ぎたんじゃないですか?そろそろ行きましょうよ」
もうこんな会話をしたくないためにこの狭いロッカーからの離脱を宣言する。
「そうですね。それと私のことは敬語で話さないでください」
「・・・・・・わかったよ。奈央」
正直抵抗感が激しかったが、自分の身の保身のためにタメ口で話すことにした。
「どうやら無事に二人とも逃げ切ったようですね」
僕たちは集合場所に向かおうとした途中で水無月先輩に会った。
しかし、すごいなこの人。傷一つないぞ。二階から飛び降りて、服もきてないというのにかすり傷一つすらないなんて常軌を逸している。
「水無月先輩はどうやって逃げ切ったんですか?」
「部室から飛び降りた後に近くで練習していた陸上部に『剣道部員に水着をはかされて犯されそうです』と言って助けを求めました」
鬼だ、この人・・・・・・。
「剣道部員は陸上部全員から粛清を受けていましたね。さらに他の部活からも白い目で見られていました」
「その時点で止めてあげようとは思わなかったんですか?」
「いいえ、まったく」
「満面の笑みで言わないで下さいよ」
やっぱりこの人は鬼だ。
「じゃあ部員全員の安全が確認したことですので部室に戻りましょうか」
「え?部室に戻っていいんですか」
「ええ。先ほどの粛清で剣道部員には大きな牽制となりました。しばらくはおとなしくなるでしょう」
これは・・・・・・酷すぎる。
部室は崩壊していた。
窓ガラスのほとんどは割れていて、床にはその破片で充満している。まるで世紀末のようだった。
「幸いにもテーブルのところにはガラスは飛び散っていないようですね」
いや、その他にも気にすることがあるでしょう。
「さて、佐藤君。君に伝えないといけないことがあります。これは今君が一番知りたい情報のはずです」
「それは・・・・・・剣道部関連のことですか?」
「ええ、数学研究会と剣道部は仲が悪いを通り越してお互いに牽制し合っています」
「それは何故ですか」
「それは今から説明します。剣道部の部員は全員BLの人たちで構成されています」
え?それってどういう意味?
「ここでいうBLの人たちというのは初めからBLだったのではなく入部してからBLになるように教育された人達です」
「え・・・・・・それは何のためにBLにするんですか?」
すると水無月先輩はとても言いにくそうにしていたが答えた。
「剣道部の顧問が、その、BL好きでして自分の生徒を好きに改造しているのです」
「・・・・・・」
あのとき剣道部に入らなくてよかった!!
「それに対し数学研究会はBLを含め全ての性癖の人たちを受け入れるグループです。それに対し剣道部はBLしか認めないグループです。これだけだと特に争う理由はないのですが、仲は悪かったです。仲が悪いが故にお互いに警戒し合っていました」
なんかものすごい難しい話題になってきたな。国家間の問題みたいだ。
「そこで私はこの現状を解決するために剣道部主将であり、序列第二位の前中駿河君と友達になりました。君と初めて会ったときに駿河君もこの部室に来ていましたよね。それは君と神崎さんを勧誘するときについでに彼も入部させようとしたからです。形だけでも数学研究会に入っていれば和解になりますから」
なるほど。あのときにそんな深い理由があったのか。そしてやはり前中先輩はBLだったのか・・・・・・。
しかし気になるところがある。前中先輩が剣道部の主将ということは知っていた。しかし主将なのに何で序列第二位なんだ?
「結局断られてしまいましたがね。そしてこの襲撃が起きた理由は二つあります。一つは駿河君を勧誘したことが剣道部にばれたことでしょう。そしてもう一つは・・・・・・君です。佐藤君」
「・・・・・・何故僕が?」
「君は剣道部の顧問に気に入られてしまいました。なので数学研究会から剣道部に入部させるために誘拐しようとしたんでしょう」
「いや、ちょっと待ってください。何で僕がその顧問の先生に気に入られているんですか?」
「佐藤君の顔、体つき、そして尻の形からしてその先生にベストヒットだったからじゃないんですか?」
「いや『ないんですか』じゃないですよ!どうすればいいんですか僕は?!」
何で変態関連でこんなに僕は苦労しないといけないんだ?!
「大丈夫ですよ。君には私が、数学研究会がついていますから」
やばい、水無月先輩かっこよすぎる・・・・・・はっ!いけないぞ。この人は露出狂の変態なんだ。そしてこれ以上BL疑惑を深めたらいけない。
「しかし今回は追い返せましたが、襲撃を受けてしまったじゃないですか」
「それはチェスの指し手を私が誤認してしまったんですよ」
「そういえば襲撃された時にも言っていましたよね。その『チェスの指し手』ってどういう意味ですか?」
「その通りの意味ですよ。戦場を指揮する人のことです。私は最初駿河君が剣道部を指揮して佐藤君をさらうのかと思っていました。彼は優しい人なので数学研究会に襲撃することにためらい2,3日ぐらいは時間がかせげると思っていました。しかし私の予想は違っていた」
「最初から前中先輩以外の人が剣道部を指揮していたんですか?」
「その通りです。まさかあの人が、剣道部序列一位が直に指揮を下すとは思っていませんでしたよ」
また序列第一位という言葉がでてきた。主将よりもえらい存在って誰なんだ?
「それでどうやったらこの状況を解決することができるのですか?」
「いい質問ですね。実はもう考えてあるんですよ」
「本当ですか!」
「ええ。この場合もう和解は無理でしょう。なので最強の女王で相手の戦意を無くす必要があります」
「最強の女王ということは・・・・・・まさかっ」
僕が知っている人の中で最強、もとい最恐の人は一人しかいない。
「神崎結衣さんのことです。なのでこれからの数学研究会の最優先目標は神崎結衣さんに警戒されないように仲良くなることです」