戦場は部室から
なんか友達が登場人物を覚えられないとか言っていたのでまとめたいと思います。
佐藤美咲 主人公
神崎結衣 主人公の幼馴染。とてもドS。
如月椿 主人公の同級生。
水無月壮馬 数学研究会の会長で三年生。露出狂。
佐々木奈央 二年生の先輩。ドM
前中駿河 三年生。BLで剣道部主将。
思いかえしてみれば、僕の人生ってなんだったんだろう?
裕福ではないが貧困でもない家庭に生まれ、小さい頃から結衣ちゃんにいじめられ、少し大きくなって結衣ちゃんの背を抜かしてまたいじめられ、歳を経るごとに過激なプレイをするようになり、わけのわからない部活に強制的に入部させられ今に至る。・・・・・・なんかいじめられてばっかだな。
まだ十五歳の未熟な僕にとって、死とは実感がわかないものだった。
「美咲君、詳しい話を聞かせてもらうよ」
「・・・・・・はい」
だめだ、涙が止まらないよ。
「佐藤、嘘偽りなく本当のことを話せよ」
「如月さん、君と僕は友達だよね」
「それがどうした」
「友達だったら僕をたす――――」
「断る」
神様、なんで僕はこんなに不幸なんだ!
結衣ちゃんを説得することは既に諦めているので如月さんに助けを求めようとしたら失敗した。
いや、まだ生き残る可能性はある。僕はぶっかけたといっても紅茶ぶっかけただけだ。何もやましいことはない。だからそれを話せばいいだけの話だ!・・・・・・多分。
「さっき佐々木先輩が言ったことは本当なの?」
結衣ちゃんは全ての生命を根絶やしにできそうな絶対零度の瞳で僕をにらんでくる。おまけにまだ僕のふとももを指でつねっている。超痛い。
おちつけ。ここで言い間違えでもしたら助かる命も助からない。深呼吸をするんだ。
深く息をすったりはいたりすると少し心が落ち着いたような気がする。
「僕は佐々木先輩に紅茶をぶっかけてしまっただけなんだ。だからやましいところは何もないよ」
完璧だ。これ以上何も言うことはないだろう。
「それは本当のことか?」
如月さんが真偽を確かめる。・・・・・・いい加減僕の足を踏むのをやめてほしい。
「うん。これは本当のことだ、僕を信じてくれ」
「そうか。では原告、被告人はこのように言っていますが反論はありますか」
いつから君は弁護士になった。
「た、確かに佐藤君がぶっかけたのは紅茶でした」
この僕にとって生命の危機的状況でも変わらず恥ずかしそうに発言する佐々木先輩。
きた!これで僕の命が救われる!
「けど、佐藤君は故意に私に紅茶をぶっかけました!」
違う!それだけは絶対に違う!
「それは先輩の妄想の中の話でしょう!」
佐々木先輩はドMだ。だからきっと頭の中では僕がわざとぶっかけたという設定になっているかもしれない。
「被告人には黙示権があるので黙ってください」
「黙示権はそういう権利じゃない!」
「・・・・・・三角木馬・・・・・・ろうそく・・・・・・亀甲縛り・・・・・・ムチ☆」
「だんだんテンションが上がっていくのはやめてくれ!」
くそっ!このままじゃ本当に結衣ちゃんが挙げていったSMプレイが全部実行されることになる・・・・・・!
何か手はあるのか!この場を収めることができるのは・・・・・・水無月先輩だ!
あの人は策略を考えることに長けている。だからきっと僕を助けることができるはずだ。
僕はおそらく水無月先輩が座っているところに視線を送ろうとしたが・・・・・・何故かあの人はこういう状況でもまだ紅茶を飲んでいた・・・・・・。
いや、まてよ。ここは水無月先輩に話を振ればなんとかなるのかもしれない。なんだかんだであの人は部員思いで優しいし。期待はできるな。
「水無月先輩!僕はあの時わざとではなく、偶然佐々木先輩にぶっかけてしまったんですよね!」
僕は最後の希望に期待を寄せる。頼む!
「いや、私はあのとき部室にいなかったのでなんともいえません」
・・・・・・そこは話を合わせてくれよっ!
「では情報を整理すると、昨日美咲君は劣情にまかせて紅茶をわざと佐々木先輩にぶっかけたということだね。そうだよね、如月さん」
「確かに異論はない。それであっているだろうな」
「二人ともこういうときだけ仲良くなるのはやめてくれよ・・・・・・」
いつから結衣ちゃんと如月さんはそんなに仲よかったんだよ。さっきまで修羅場状態だったじゃないか。
「おまちください」
凛としたとても透き通った声が二人の会話を止めた。僕はこの声が誰の声なのかを知っている。そう、これは露出狂の先輩の声だ。
「佐々木さんは故意だと言っていますが、佐藤君はわざとではないと言っているではありませんか。だったら佐藤君は悪くないはずです」
「しかし佐藤が嘘をついている可能性も――――」
「佐藤君は嘘をつくような人ではありません。私が保障します」
やばい、水無月先輩かっこよすぎる・・・・・・。惚れるまではないけどとても尊敬してしまう。
「まだ納得がいかないのなら、次にこういうことがあった時に話し合ってください。その時は私も佐藤君のことをかばったりしないので」
水無月先輩は威厳のある発言で如月さんと結衣ちゃんを抑えた。
「・・・・・・わかりました」
「・・・・・・わかった」
二人ともしぶしぶといった感じで了承してくれたようだ。
それにしても今回はやばかった。寿命が10年縮んだような気がした。
「それではこういう雰囲気なので数学研究会の今日の部活はこれにて終了とします。寄り道しないで帰ってくださいね」
そして数学研究会の部活は終わった。
・・・・・・そして本当の数学研究会の部活の始まりだ。
「水無月先輩!先ほどはありがとうございました!」
腰を九十度に曲げてできる限りきれいな礼をする。
「礼には及びませんよ。大事な部員のためですから。そんなことよりも神崎さんには気づかれなかったですか?」
「特に気づいたような様子はありませんでしたし、気づかれるような行動もしていないと思います」
数学研究会の活動は表と裏に分かれる。
表は結衣ちゃんにいつも部活があると錯覚させるためにある。
裏は結衣ちゃんには聞かれたくないことを話し合うためにある。
この裏の活動は結衣ちゃんがドSとしてのプライドを捨てていつものようなお姉さんのような性格で部員のみんなと接することができるまで続くだろう。
僕は早くそういう日が来てほしいと思う面があれば、そういう日はこなくて結衣ちゃんには数学研究会を辞めて欲しいという気持ちがある。だからすこし複雑だ。
「それにしても如月さんでしたっけ?如月さんはあまり私の体を見てくれなかったですね。だからすこし残念でした」
「・・・・・・」
やっぱりこの人は露出狂の変態だ。すこしでも尊敬した僕は頭がおかしかった。
「あの、佐藤君」
改めて水無月先輩の印象を改めると佐々木先輩が恥ずかしがりながら声をかけてきた。
「あの時の行為がわざとじゃないっていうことは本当ですか?」
「本当ですよ。何回言ったらわかるんですか」
「そうですか、残念です」
何でそこで残念がるのだろうか?どちらかと言えば先輩の性癖に僕が残念だと思う。
「そんなことよりも近い未来に大変なことが起こります」
そんな気持ちを打ち消した理由は水無月先輩がいつもよりも真剣な声だったからだ。
何かやばいことが起きるのだろうか、と思ったがこの人の性格から考えて変態関連のことだからすぐにどうでもよくなった。
「今度は何ですか?また変態関連のことですか」
「変態関連、ということは間違ってはいませんが先ほどの修羅場とは比べようにもならないぐらいに危険なことです」
「・・・・・・何が起きるというのですか」
思わず危機感を覚えてしまう。
さっきの修羅場という比喩表現を用いたのでかなりやばいことだろう。少なくとも三角木馬で亀甲縛りでろうそくを垂らされてムチでたたかれることよりかはやばいのかもしれない。
「剣道部と数学研究会の全面戦争が始まります」
「・・・・・・はぁ、そうですか」
なんか拍子抜けした。どうせなんかお遊びみたいなもの――――
「この戦争に負けたら佐藤君は剣道部の部員全員に輸姦されます」
「なんだって!どういう意味ですか、それはっ!」
意味がわからない!どういう因果で僕が剣道部の部員全員から掘られるんだ?!何故?!
「何でですか?!何で僕がBLみたいなことをしないといけないですか?!そもそも理由は何ですか!」
思わず水無月先輩の肩を掴んで質問攻めにしてしまう。
「落ち着いてください。そんなにいっぺんに答えられるわけがありませんよ。少なくともあと二日か三日ぐらいは時間があるはずですから落ち着いてください」
「・・・・・・わかりました。すみません」
「では一から説明したいと思います。まず、剣道部のことなんですが、数学研究会と剣道部は―――――」
「水無月!覚悟しろ!」
水無月先輩が説明しようとしたところで、背後から怒声が聞こえた。
ドアを思いきり開いた音が先に聞こえる。そしてたくさんの、おそらく十人以上の足音で部室が占領されたことがわかる。
反射的に後ろを向いてみると、そこには十数人の男子生徒が僕らを包囲していた。
何だ?これから何が起きるというんだ?まさか剣道部の襲撃?けれどまだ時間があるはずじゃ。
「水無月先輩、これは・・・・・・」
「どうやら読み間違えたようですね。チェスの指し手があなただったとは思いませんでしたよ」
どういう意味だ?チェスの指し手とは何だ?
「佐藤君、これから全面戦争が始まります。いえ、もう既に始まりました。一応覚悟しておいてください」
僕の貞操はどうなるのだろうか・・・・・・。それはまだ誰にもわからない、神のみぞ知ることだった。
やっとここまでかけた・・・・・・