人格崩壊
テスト期間中ですが毎日少しずつ書いていってなんとか10話を書き上げることになりました。
「変態とは本来、社会で偏見されるべきじゃないのです。誰だって性癖を持っていて、誰だって変態なんです。そもそも異常な性癖なんて言い方はおかしいです。人はそれぞれ個性があり、普通の人間なんていないのです」
長い。体感時間がものすごく長く感じる。
しかもまだホームルームが終わってから三十分しかたっていない。
「なので私たちは人間としての人権を必要とする義務をもっています。そのためには革命が必要です。そして革命のためには行動が必要です。そう、そのために私は数学研究会を創設しました」
「そうですか・・・・・・」
「そしてあなたにはわが数学研究会の活動を支持してもらいます。同じ変態として、変態の明日のために戦いましょう!佐藤君!」
「断固拒否します」
「何故ですか?!」
「いや、なんですかその裏切られたような顔は!僕は一度も変態の活動に協力するなんて言っていませんよ!」
「私に賛同していて、共に覇道を突き進むと誓い合ったのに・・・・・・」
「あなた記憶大丈夫ですか?!僕たちは昨日あったばっかですよ」
「あんなに君は変態だというのに・・・・・・」
「いやだから何でそんなに裏切られた顔をするんですか!」
っていうか僕は変態なんかじゃない。ただ単に結衣ちゃんにつきあっているだけだ。
「・・・・・・佐藤君、君は本当に佐藤君なんですか」
「そうですか何か」
「私の活動に協力しないというのなら、手段を選びませんよ」
「・・・・・・何をするというんですか」
「脅迫します」
「最初からあなたは僕を脅迫しているよ!」
そう。残念ながら僕は、僕と結衣ちゃんは水無月先輩に脅迫されて数学研究会に入部することになった。
あの時の僕は数学研究会に入部したほうがましだと思っていた。けど現実は違った。
数学研究会の部長の水無月先輩は成績優秀で女子からの人気があり、授業態度も真面目の絵に描いたような優等生だ。そう、部活中にブーメランパンツをはく露出狂ということを除けば。
「さて、では二人だけですが早速、変態研究会としての活動を始めましょうか」
「変態じゃなくて数学研究会ですよ」
いや、もうぴったりの名前だけどね。
「失礼しました。では二人だけですが始めましょう」
「活動って何をするのですか」
こんな変態たちが集う異次元空間で行う活動は予想ができない。宇宙空間で活動した方がまだ難易度が低いだろう。
「雑談するだけです」
「え?」
「私たち変態はまだ変態について多くを知っていません。自分の性癖についてしか知っていない状態で活動をしようにしても混乱するだけです。それに部員同士の性癖を互いに理解することによってより変態について学ぶことができます」
「なるほど。水無月先輩の理論を理解するのが不服ですか確かにそうですね」
「というわけで佐藤君には私ともう一人の部員に対して親睦を深めてください」
嫌だ。
「ってかもう一人部員がいるんですか」
「ええ、いますとも。これがなかなかの変態でして・・・・・・」
「いいです。もう聞きたくないです」
水無月先輩が賞賛するぐらいの変態なんて想像ができない。絶対に会いたくない。
仮に水無月先輩と同等だとしても二人が一緒にいたら多分精神が崩壊して死ぬ。いや、本当に死ぬ。
「さて、ここで一つ佐藤君に伝えないといけないことがあります」
「もうなんですか・・・・・・」
「神崎さんを先に帰らせた理由です」
「結衣ちゃんがどうしたんですか」
「実は神崎さんは入部する必要はないのです」
「えっ?」
じゃあ、どうして結衣ちゃんと僕を入部させるために脅迫したんだ?確か脅迫した理由は部員が少なくて廃部になるからだった。そのために僕たちを脅迫した。いや、多分水無月先輩は単に僕たちの変態性に興味をもって入部させた理由もあるだろう。本当に不本意だが。
「部を続けるためには最低三人の部員が必要です。だから私ともう一人と佐藤君の三人で既に足りているんです」
「ちょっと待ってください。少なくとも結衣ちゃんは僕よりも変態性として上回っていますよ。それなのになぜ僕を選ぶんですか」
「神崎さんは・・・・・・数学研究会の空気にあうかどうかわからないです。昨日と今日で会話をしましたが彼女はわが道をゆく女王様のような性格は集団行動に会いません。今日だってしぶしぶといった感じで嫌そうに部活にきていました。だから今日は様子見といったところで佐藤君にだけ数学研究会の存在意義について教えました」
僕も部活にくるの嫌です。
水無月先輩は非常に言いづらそうにして理由をしゃべった。
確かにSな時の結衣ちゃんは女王様だ。対等な関係なんてとてもじゃないが築けない。けど――――
「多分ですけど、あの時の結衣ちゃんは二重人格みたいなもので怒ったときにでてくると思います。いつも僕と話すときは温厚な性格です」
「・・・・・・そうですか。だったら入部の可能性はありますね。これからも友好に接していきましょう」
「いいえ、それには及びません」
「どういう意味ですか」
ここなんだ。僕が結衣ちゃんから独立する分岐点は。きっと。
今まで、この選択肢が出るたびに逃げてきた。自分の保身のために。結衣ちゃんから離れたくないがために。
けどそれじゃいけない。人は誰だって一人で生きていく必要がある。助け合うことなんて響きはいいけど、きっとそれじゃ僕は一生僕のままだ。そんなきれいすぎるものはどぶ川にでも捨ててしまえ。
だったら僕のやるべきことは決まっている。まったく、この決断を下すまでに何年かかったのだろうか?
昨日の結衣ちゃんのように、同じことをする。今度は僕が結衣ちゃんを助ける番だ。
「僕が結衣ちゃんの代わりに数学研究会に残ります。だから結衣ちゃんには手をださないでください」
「断ります」
・・・・・・。
はい?
「え?別に結衣ちゃんは数学研究会に残らなくてもいんじゃなかったんですか?」
「いや、やっぱり彼女は数学研究会に必要だなと思いました。サディストの性癖は一般的でありながら数学研究会にはそろっていないのでやっぱり必要だと思いました」
僕がこの決断を下すまでの決意はいったいどこにいったんだよ!
「なに簡単に心変わりしてるんですか!」
「いえいえ。結構悩みましたよ。あんなに佐藤君が真剣な表情で言っていましたから。入部したばかりのかわいい後輩の頼みを聞かないで何が先輩だ、何が部長だ、と自分を叱りました」
「自分を叱っておきながら何でこんな決断に至るだよ!」
「私も本当は嫌だったんです」
「嘘つくんじゃねぇぇぇぇ!」
もう敬語なんて知るか!!!!全部ぶちまけろ!!!
「そもそもなんなんですかあんたは!まだブーメランパンツでしゃべっるし、変態の人権のために数学研究会を創設するってもうおかしいだろ!そもそも脅迫犯の時点で人間として間違ってる!それに変態についての価値観が既にもう腐っている!っていうかたまには僕のことを考えて発言してくれ!」
心の中にたまっていた不満を全部ぶちまけたっ。
もう限界。大声出しすぎてのどがかれている。
口を思いっきり大きく開いて新鮮な空気を肺が求める。うん。変態の腐った空気しか感じない。
「・・・・・・佐藤君」
水無月先輩は驚いた顔で僕を見ていた。
まあ、当然だろうな。先輩に対してため口で怒鳴ったから。けど後悔はしていない。むしろ清々しい。すっばらしく清々しい。
「この水着はブーメランパンツじゃないってことを覚えていますか?」
・・・・・・そのネタはもういいです。
水無月先輩はでは、と腰を上げて。
「今からショートパンツとブーメランパンツの違いを研究するために水泳部を見学しましょう」
「いやですよ!もう僕は疲れました!」
「まあまあ。水着はなかなかいいですよ。佐藤君は特に競泳水着に興味をもつかもしれませんよ」
「そんなマニアックな趣味を持つ予定はありません!」
「では行ってみましょうか」
「何押さえつけているんですか!離してください。そんな半裸の男性に抱きしめられる趣味なんて僕にはありませんからぁぁぁ!」
「・・・・・・水無月先輩」
「なんですか?佐藤君」
「うちの部活って何時までですか?」
「そうですね、あと三十分ほどです」
あと三十分耐えればこの先輩から解放されるぞ・・・・・・!
解放される未来を想像するだけでなんとかなりそうだ。
「私はトイレにいってくるので先に部室で待っておいてください」
「わかりました。って、水着のままでトイレに入るのですか」
「安心してください。シャワーはちゃんと浴びます」
わざわざシャワー浴びるまでするぐらいなら水着はくなよ・・・・・・。
けどこんな思考をするのもあと数十分程だ。仮に水無月先輩がトイレまでいって用を済ませるのに3分かかるとして、次にシャワーを浴びるのに移動含めて10分かかるとする。そして体を拭いたりして部室に帰るのに5分かかるとしたら18分かかる計算になる。
つまり、30から18を引けば12分だ。それだけならなんとか耐えきる。
そう。この時の僕は油断していた。
部室には誰もいないと先入観を抱いていた。
それが間違いだと気づかずに―――――――
「失礼します。といっても誰もいないだろうけど」
教室の中央にあるテーブルの傍にある、僕が座っていたイスに。
なんかメイドさん座っていた。
そういえば数学研究会のもう一人の部員の存在は2話から書かれていましたね。
出るのが遅すぎたので作者もメイドさんの名前を既に忘れましたw
もう一度プロットを確認する必要がありますね。