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天変地異

「ジュリさん!! 無事でしたか!!」


ドアを開けると、ジュリさんが立っていました。

どこもおかしな様子はありません。むしろとってもキラキラしている気がします。


美少女なジュリさんが、満面の笑みで私に飛びついてきました。

「ああ、リサさん! どこもおかしなところはありませんか?」

私の身体を気遣い、あちこち確認してくれます。

でも、地味にいろいろぶつけてきた身としては、ジュリさんが確認のために触れるところで、ちょいちょい痛みが走ります。

が、そこは我慢しますよ。ええ、ジュリさんに心配なんてかけられません。

「私は大丈夫です。で、ジュリさん、今までどこにいたんですか?」

私から少し間を開けてくれたジュリさんの顔を見ながら尋ねました。

「話せば長くなるのですが……。リサさん、ちょっとついてきてください。その間にお話ししますから」

私の手を引きながら、ジュリさんは廊下を歩きだしました。




コツコツコツ……と、私とジュリさんの足音が、石造りの廊下に響いています。

石造りで重厚な感じではありますが、中庭に面して窓が大きくとられているので、そう大して暗くはありません。

ちなみに今は二人きりではありません。

私たちの後には、部屋で私のお世話をしてくれていたアゲナさんがついてきています。

お目付けですか? まあ、気にしませんけど。


「ここはアケルナルという国だそうです」


ジュリさんが先に口を開きました。

「アケルナルですか。む~、あまり聞いたことのない国ですね」

「そうなんですか? 私はよくわかりませんが、リサさんたちの居るスピカ王国からは結構離れているようですね」

「ほほう。そうなんですか」

「ええ。で、ここの王子様として、ロベルト様はお生まれになっておられたようなんですの!」

「はひ? ロベルトさん発見?」

「はい!!」

満面の笑みで肯くジュリさんは、うっすらと頬を染めて嬉しそうです。

「へぇぇ。でもどうやってジュリさんがうちにいるのを知ったのでしょうね?」

「ほら、メグさんとショウさんがあちこちでロベルト様を探してくれていたじゃないですか? それで『魔女のマルグリットの家にジュリという転生者がいる』と風の便りに聞いたのだそうです」

「なるほど~。さすがのメグちゃんも、ロベルトさんが王子とは思わなかったのかしら?」


そうこうしているうちに、私たちは立派な扉の前に立っていました。

今まで後ろに控えていたアゲナさんが、すすっと前に出てきたかと思うと、

「さあ、どうぞお入りください」

と、扉を開けてくれました。

「さ、リサさん? 大丈夫ですから!」

ジュリさんも笑顔で私の手を引きます。

開いた扉から、中のゴージャス感が垣間見えるのですが、ここってやっぱり謁見の間とかいうやつですかね?

なぜか気後れがバンバンするのですが、女は度胸です。礼儀もへったくれも知りませんから、普通に入って行きましょう。

ジュリさんに手を引かれるまま部屋の中に一歩踏み出した私。


きらっきらのシャンデリア、ふかふかの絨毯、よくわからない絵画。どれもお高そうです。

中庭に面している壁が、一面ガラス張りになっているので、外の穏やかな光が部屋中に溢れています。


その部屋の奥にこれまたゴージャスな椅子が置いてあり、黒髪の男の人が座っています。

いや、先程まで座っていたのですが、ジュリさんを見るや否や、嬉しそうにこちらに飛んできて、ジュリさんに抱き付いてきました。

「うぉっ!? ナンデスカこの人!」

その勢いに、思わず飛び退いてしまいました。いきなり何してるんですか。まったく。

じと目で見てしまうのは仕方ないことだと思います。いきなり人前でイチャつかないでください。

「ああ、もう、ごめんなさいリサさん。この人がロベルト様です」

苦笑しながら、ロベルトさんをべりっと剥がして、私に紹介してくれます。

「はあ……」

「ああ、この方がリサ殿だね? ジュリがお世話になっているようで。ジュリを助けていただいて、ありがとうございました」

艶々とした黒髪は、清潔感のある短めに切られ、緑の眼はエメラルドの様。堀の深い顔立ちは、なかなかのイケメンさんなのですが、いかんせん、第一印象が「いきなり隣でイチャつき出した男」なのと、私とジュリさんを拉致ってきた主犯は、確実にこいつだろうと思うと、私の中では『残念なイケメン』という格付けになってしまいました。

「いえ、お世話なんてとんでもないです」

「このように荒い所業は申し訳なかった。部下への指令が行き違ったようで」

どうやったら『お迎え』と『拉致』の指令が行き違うんでしょうか?

「いや~、あちこちぶつけてたいへんでしたよ。地味に打ち身がたくさんできて痛いのなんのです」

ニコリとしながら嫌味は言っておきましょう。

「誠に申し訳ない。お詫びもあるので、ぜひ食事に招待したい」

申し訳なさそうに頭を下げるロベルトさん。お? 意外といい人ですか? ちょっとポイントアップです。

食事っていうのもいいですね~。胃袋を掴むのは基本ですからね。とりあえずお腹は減ってます。

さっきまで美味しいお菓子やお茶はいただいてましたけど、それが何か?

「それは喜んで」

今度は嫌味なく、ニッコリと返事しましたよ。




「ぷはー! ごちそうさまでした!! とっても美味しいお食事でした」

人生初のフルコース料理を堪能した私。満腹のお腹をさすりさすりご満悦です☆

いろんなお料理が、ちょっとずつ、上品に盛られて出てくるものなのですね~! 今後の料理の参考になりました。 今度メグちゃんやショウくんのお誕生日にでもチャレンジしてみようかしら。

「本当に。ロベルト様、美味しかったです」

こちらも満面の笑みでロベルトさんに話しかけるジュリさん。

さすがはお貴族様のお姫様。マナーも完璧で、思わず見惚れてしまいました。それに食後にお腹をさすったりしませんしね。

「それはよかった。さ、食後のお茶でもいかがかな?」

侍女たちが淹れてくれたお茶を、にこやかに勧めるロベルトさんも、完璧な紳士です。

「では――」

と、お茶の入ったカップを手にした時でした。


ゴロゴロゴロゴロ……


それまで晴れ渡っていた空が、にわかに搔き曇り、見る見るうちに真っ黒な雲に覆われてしまったかと思うと、雷鳴が轟いてきました。

「きゃあ! 雷!!」

かわいらしい反応をするジュリさんを、ロベルトさんはさっと傍に駆け寄り、抱きしめます。

私は雷なんて平気なもんで、平静なままお茶を飲んでますけどね。

あー、またイチャついてますよ。見てられません。お菓子でも食べよう。


ピカッ!! ドーン!!!


「あ、この辺りに落ちましたね」

雷鳴と同時に閃光が走り、何かがぶつかるような衝撃が走りました。

お城が揺れました。直撃しましたかね?

窓の外はさらに暗く、大粒の雨がガラスを叩きつけています。滝のようですよ。

まるで嵐のようだなー、と、呑気に外を眺めていたのですが、


グラグラグラグラ


今度は地震です。シャンデリアがブランコみたいになってます。

「キャー、キャー!」

「大丈夫だよ、ジュリ。落ち着いて」

ジュリさんはロベルトさんに必死にしがみついています。

ロベルトさんも、顔色を変えてはいますが、結構冷静なようです。ジュリさんの背中を撫でて落ち着かせようとしています。まあ、自然現象なんて、ジタバタしたってどうしようもないですもんねー。


ピカッ!! ドドーン!! ピカッ! ドーン!!


また閃光が走り、落雷した模様。て、どんだけ落雷するんですか?

このお城、呪われてます?


……ん? 呪われている? あ……!


ちょっぴり心当たりがある気がしてきました。

それ、かなりの確率であるなぁと思っていたら、廊下が急に慌ただしくなって、この部屋の扉が性急にノックされました。


「ロベルト様! 先ほどからの落雷で、塔の方から出火いたしました!! ただ今消火作業に入っております!」

衛兵さんみたいな恰好をしたお兄さんが報告しています。

地震・雷・火事ですか。

足りないのは親父ですね☆ どうでもいいですが。


でも、そう言っている間にも、ばんばん雷は落ちています。地震も、さっきから揺れっぱなしです。


これでこのお城が崩れちゃったりなんかしたら、私も巻き込まれちゃうんですけど?


ちょっと間が開いてしまいました(^^;)


今日も読んでくださって、ありがとうございました!

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