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魔女マルグリット

「当たり前じゃないの。リサをこっちに喚んだのって、理奈と恭一の転生を促すために決まってんじゃない」


しれーっと言い切ったメグちゃんです。そしてなぜかドヤ顔。

えーと。私にはいろいろと理解に苦しむセリフなんですが? メグちゃん?

私だけでなく、ショウくん、お父さんもお母さんもキョトンとしています。そりゃそーですよ。


「え、と。どゆこと? いろいろ解らないよ、メグちゃん……」


私は戸惑い、お父さん、お母さん、ショウくんと視線を彷徨わせてからメグちゃんに尋ねました。すみません。キョドキョドと挙動不審です。でもお父さんもお母さんも戸惑っているようです。

そんな戸惑う私たちに優しく微笑みながら、メグちゃんは話し始めました。


「まず、両親としては、リサに執着残して逝ったはずでしょ?」

「ええ」

「もちろん」


メグちゃんの言葉にお父さんもお母さんも力強く肯きました。


「そう。そんな執着があれば、転生も促されるの。『絆』の力、見てきたわよね? リサ?」


メグちゃんは私に向かって肯きます。


『絆』の力。


確かに私は見てきました。先日のベガとアルタイルだけではありませんね。

コクン、と肯きます。


「向こうの世界では二度と同じ時を生きることがないけれど、こちらの世界では違う。だってこっちは向こうの世界で言うところのファンタジーの世界だから」

「魔法も、生まれ変わりも、何でも、あり?」


「そう。魔法もあれば不死もある。つまり、ヒトとしての有限の寿命もあれば、ヒトとは違う無限の寿命もある」


ゆっくりとメグちゃんが言い切りました。


「無限の寿命?」


それに呼応したのはショウくんでした。


「転生してくるときにいろいろと付加するものがあるでしょう? ショウならば魔法の力だったり」

「ええ」


理解し、肯くショウくん。それを満足げに見たメグちゃんは続けます。


「それと一緒。リサには無限の寿命が付加されているのよ。他の能力は敢えて付けなかったけどね」

「それって、メグちゃんが付けられるものなの?」

「召喚の場合、召喚者の望む能力が付加されるでしょ?」

「あ、そっか」


そうでした。だからべらぼーに強い勇者サマとかを召喚できるんですよね。フォーマルハルトさんのような。


「強い執着を遺したならば、こちらにいる限り必ずやリサの元に転生してくる。でもそれはさすがの私にもいつとは言い切れない。だから召喚の付加に無限の寿命を入れたんだけど、まさかこんなに早く現れるとは思わなかったわ」


メグちゃんは話し終えると目を閉じ、ほうっと息をつきました。

誰かが『ゴクリ』とつばを飲み込んだ音がしました。


でも、ひとつ。私は疑問が浮かびました。


「メグちゃんは、あちらの世界のすべてを把握してるの?」


だって。一庶民である私の悲しみを察知して手を差し伸べたんですよ? たまたま察知したのが私だったのか、それともあちらの世界の何億人分も見つめてるのか。おはようからお休みまで見つめているの? どこの獅子? 違うね、ごめんなさい。


「まさか!!」


あはは~、とメグちゃんは笑い飛ばしました。


「メグちゃん?」


ムッとして唇をつき出す私に、メグちゃんは、


「そんなわけないでしょ! さすがのメグ様でもそんな芸当できないわよ! リサ、あんたはね、私の孫の孫よ」

「へっ?」

「ついでに言うと、理奈は孫の娘だからひ孫ね」

「えっ?」


ぽかんとする私とお母さん。そのまま顔を見合わせました。

え? メグちゃん、今何て言いました?


「ひいひいおばあ……ちゃん?」

「嫌な響きね。でも、まあ事実は事実。そうよ」


ちょっとむすっとしながらも肯定するメグちゃん。そんなメグちゃんはとってもキュートなんですが、じゃあ、メグちゃん100歳は軽く超えて……


「いたっ!!」

「リサ、あんたいま私の年齢計算したでしょ!」

「ゴメンナサーイ!!」


デコピンが飛んできました。涙目でメグちゃんを見遣ると半目で私を睨んでいます。うう、こわい。

でもすぐにその表情を改めると、また続きを話し出しました。


「……こほん。それはさておき。自分の子孫のことはこちらでしっかりと見守らせてもらってたのよ」

「そうなんだ……」

「見守っていたからこそ、リサのことをこちらに喚べたんじゃないの」


私の身に起こった悲劇。私はそれを深く自覚する前にこちらに召喚されました。何がなんだかよくわからないままに召喚され、そしてまたよくわからないうちにこちらでの生活が始まったわけです。まあ、流されまくったとでも言いましょうか。

我知らず、悲しいことから目を逸らせていたのもあるでしょう。


「……おばあちゃまの優しさ、ってことね」

「おばあちゃまって言わない!」

「あたっ!」


またデコピンが飛んできました。

もう、絶対おでこ赤くなってますよ!! おでこをさすりながらメグちゃんを睨むと、ニヤリ、と笑われました。


「まあ、こちらに喚んだものの、リサはめっきり感情の起伏が減ってしまったから、私なりに心配はしてたの。でも、ショウがこちらに来て、それからいろんなトリッパーたちの悲喜こもごも、過去未来を見ているうちにちょっとづつ変化してくれたから、ほっとしてたのよ」

「変化?」

「そ。初めはショウがべたべたと濃厚な愛情表現したって『はいはい』って流してたじゃない」

「まあ、それは」

「そ! リサってホント冷たかったよなぁ」


私の隣でさっきまで静かだったショウくんが、しきりにうんうんと肯いています。そんなにしみじみ言わないでください。


だって。


「だって、もう大切なものは作りたくないって思ってたから……」


蚊の鳴くような声で私は言いました。


今日もありがとうございました(^^)


脱☆風邪っぴき!!(笑)


あと1,2話で完結予定です!

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