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転生・召喚・トリッパー様、受け付けます  作者: 徒然花
亜空間の森へようこそ
3/35

転生様がやってきました

カラン。


今日もおずおずと扉が開かれました。

見ると5歳くらいの女の子です。金色の髪はつやつやと肩のあたりで揺れています。ものすごく不安そうにこちらを見ているのがたまらなく庇護欲を刺激しますね。大きな青い瞳にいっぱい涙を浮かべてこちらを伺っています。お人形さんのような子です! うう、ぎゅっとしてもいいでしょうか? あ? 怪しまれる? やはりここは怖がらせてはいけませんね。


「こんにちは。どうしたのかな?」

私はいつもとは違うお出迎えの言葉をかけます。優しい笑顔も忘れてはいけません。繰り返しますが、怖がらせてはいけないのです!

いつもなら机に座ったまま応対するのですが、今日は扉のところまで出て行き、しゃがみこんで女の子と視線を合わせます。

近くで見ると、頬は涙で濡れているじゃないですか!! かわいそうに!!

「怖かったのね? こっちにいらっしゃい」

女の子を促し、いつもの受付ではなく、その奥にあるダイニングスペースに連れて行きます。椅子に座らせると、

「ほら、おしぼり」

と、ショウくんが濡れたタオルを持ってきてくれました。ああ、気の利く人です!

「ありがとう!」

ショウくんからそれを受け取ると、女の子の頬を拭ってあげます。そのままタオルを手に持たせて、私はキッチンへ急ぎ、温かいココアを作りました。

女の子からタオルを受け取り、ココアを渡して飲むように促します。

これで少しは落ち着けるといいのですが!


ふうふうしながらココアを飲む女の子を見ながら、落ち着いてきた頃合を見計らっていつもの質問をぶつけます。

「お名前は? わかるかな?」

すると、ココアから視線を上げた女の子が、驚いたように目を見開いて私を凝視してきます。しばらくガン見されていたなぁと思っていると、

「ううん。知らない」

ぽつりと答えてくれました。

ははん。これは前世の記憶のない転生ですね。


トリップや召喚ならば、記憶があります。

転生が一番種類があって、複雑です。そもそも3種類あって、赤ん坊としてこちらの世界に生まれ変わる、若返って出現ポイントに現れる、獣化して出現ポイントに現れる。基本は以上です。

ちなみに赤ん坊として生まれ変わる場合、出現ポイントは関係ないので、メグちゃんは関与しません。これは人でも獣でも同じです。

若返る場合も、前世の記憶がある転生、記憶がない転生に分けられます。獣化の場合は、一般的な動物(馬とか羊とか猿とか)と魔獣と呼ばれる性質の悪いものとに分けられます。

まだまだ細分化できるんですが、ざっとこんな感じです。複雑です。


「名前も何も覚えてないんだね?」

「うん」

「転生だな、こりゃ」

またココアを飲みだした女の子を見ながら、私とショウくんは顔を見合わせます。

「メグさん呼んでくる」

ショウくんが立ち上がり、二階に向かいます。

転生の場合も、求人があればそちらに紹介します。なければメグちゃんがなんとかします。その辺はメグちゃんの采配なので、私ごときにはよくわかりません。メグちゃんのコネクションは物凄いので、どこからか情報を仕入れ、落ち着き先をさがしてくるのですよ。

眼の前で黙々とココアを飲む女の子。

いい出会いがあるといいんですけど。

「お代わり、飲む? それともお腹すいた? おやつ持ってくるね」

こくりと肯くので、立ち上がりキッチンに向かいます。

ちょうどその時にメグちゃんが上から降りてきました。


いつものように虚空からメモ帳を取り出すメグちゃん。

私たちは慣れてるから気にしないけど、女の子は青い目を丸くしています。いや、普通驚きますよね。

「あらまあ、かわいい子じゃない。記憶もないのなら里親に預けやすいわね。えーと……」

女の子を見てニッコリと笑いかけてから、ぱらぱらとページを捲っていきます。

そんなメグちゃんをなおも不思議そうに女の子は見ています。

「いい里親が見つかるといいね」

私はそっと隣に座ったショウくんに耳打ちします。

「ああ、メグさんに任せとけば大丈夫だろ」

ニッコリと笑って、ショウくんは私の手を握ってくれます。しかし、スキンシップは要りませんから! ペチリ、と握られていない方の手でしばいておきます。

「けちー」

「減ります」

「……」


「ああ、レグルス国の方で里子を探している夫婦がいたわね。うん、あの人たちなら大丈夫だわ。南の方だし、海も近いし、お花畑もあるわよ? とってもいいところよ」

レグルス国は大陸シリウスの南端にあり、オデブ……ごほごほ、デネブ島に渡る船が出ているところです。デネブ島と同じく南の穏やかな気候に優しい人々。きれいな海、美味しい海産物!! おお。私が行きたいです!

「……」

「メグちゃーん、こんな小さな子に行先決めるなんて無理だよ~」

黙り込んだ女の子に代わって、私が代弁します。

「そりゃそうか。じゃ、呼びますか」

飄々とそう応えると、メグちゃんはおもむろに目をつぶったかと思うとテレパシーを飛ばします。多分、その夫婦さんに状況を説明しているのでしょう。私たちには一切聞こえないのでよくわかりませんが。魔法が使えないと色々見えないことも多いのですが、ワタシ的には気にしません。ちなみにショウくんは攻撃魔法・防御魔法・転移魔法が使えますけど、こういった通信機能は無いようです。

「……すぐ来れるって。ちょっくらお迎えに行ってくるわ」

そう言うと立ち上がり、外に出て行くメグちゃん。

「「いってらっしゃーい」」

ショウくんと私はお見送りします。あ、立ったついでにお茶でも淹れてきましょう。


ちょうど二人分のお茶が入ったくらいの時間で、メグちゃんが例の夫婦さんを連れて入ってきました。さすがはメグちゃん、召喚の魔法も完璧です!


「まあ!! 話で聞いたよりもなんてかわいいの!!」

奥さんと思しき女の人が女の子に駆け寄ってきました。別段美人さんという訳でもありませんが、優しい雰囲気のかわいらしい人です。

「本当だ。君さえよければうちにおいで?」

だんなさんも優しそうな眼をした恰幅のいい人です。二人とも30歳過ぎくらいでしょうか?そんなに歳でもなさそうです。

二人に優しく手を握られて、女の子ははにかんだ笑顔を浮かべました。おお、好印象でしょうか!

「うん!」

にこっと笑って肯きましたよ!


「よかったじゃないの。じゃあ、送っていくわ」

しばらくみんなでお茶なんかして、和やかに過ごした後メグちゃんが立ち上がり言いました。

「「はい、ありがとうございました!」」

嬉しそうに返事をする夫婦さん。

ああ、今日もいい仕事しました!! そうだ、送って行きついでに……

「メグちゃん、メグちゃん! 私もレグルス行ってみたい~!!」

ちょっと観光をおねだりしてみました。これくらいはいいでしょう?

「う~ん、そおねぇ」

メグちゃんが腕組みして思案していると、

「あ、じゃあオレが送って行きます! で、ついでにリサと旅行してきます!!」

はいはいっ! と手を上げながらショウくんが立候補します。

「ショウくんの転移魔法、一度に二人しか移動できないじゃない」

しかし軽く私がショウくんの移動魔法の欠点を突きますと、

「ぐっ……」

萎れるショウくんでありました。


「じゃあ、ショウくんお留守番お願いね~!」

「お土産買ってくるから、受付お願いねショウ!」

「……いってらっしゃい」


結局ショウくんが留守番で、私とメグちゃんはレグルス観光に行くことになりました。

しばらくバカンスです☆


今日もありがとうございました(^^)

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