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公爵様がんばる

突然アンドロメダさんにプロポーズしちゃった公爵様。

カツカツカツ、と靴音も高らかにアンドロメダさんのところに一直線に行き、いきなりその足元に跪きました。


「なぜでしょう。ああ、雷に打たれたように啓示が下りてきました。私が探し求めていたのは貴女だ」


真剣かつ甘い声音で語りかけています。

一方のアンドロメダさんはというと、困惑にオロオロしています。両脇の子供たちをしっかりと抱きしめて、


「突然そのようなことをおっしゃられましても……」


返事するのがいっぱいいっぱいな様子です。そんなアンドロメダさんの様子にさえも愛おしいと言わんばかりにさらに目を細め、


「私は今まで誰とも結婚したことがございません。側室も愛人もおりません。ただ『巡り会うべき誰か』を探していたのです!」


暑く、いや、熱く口説く公爵様。

そんな公爵様を見、そしてメグちゃんを見てから、アンドロメダさんは覚悟を決めたのか、ゆっくりと口を開きました。


「私、実は先程こちらの世界に転生してきたばかりなのです。名前も先程決まったばかりというくらいの。そして、強いえにしで前世の我が子に再会したところだったのです。ですから、私はこの世界に落ちてきたばかりの、何の後ろ盾もない一般庶民ですので、公爵様の奥様などできるような身分ではございません。このような身寄りも住処もない女を娶ったなど知れましたら、公爵様の名前に瑕がついてしまいます」


どうかお捨て置きくださいませ、と言い切ったところで、何故か公爵様のお顔がパアアと明るく輝きました。


「身よりも住処もないですと!! ならば尚更、私のところにおいでください」

「いえ、だから身分が釣り合いませんと」

「我が国はリベラルで有名な国です。身分差など何の障害にもなりません」


公爵様、口説きに一層熱が入ります。


「そーいや、ケンタウルス公国って、身分差があんまりなかったわね」

「じゃあ子爵さんと公爵さんが結婚とか?」

「そんなのアタリマエ。庶民公妃もざらじゃないわよ」

「わお!」


私とメグちゃん、ショウくんは三人ひと塊になってこそこそと内緒話です。

そんな私たちにアンドロメダさんは目配せしてきました。


『HELP!!』

『『『無理!!』』』


私たちは速攻、ブロックサインで答えます。それを見たアンドロメダさん、頭をフリフリ諦めの吐息をついています。そしてもう一度、公爵様をまっすぐに見つめ、口を開きました。


「お申し出は有難いのですが、やはりこの子たちと遠く離れたところで暮らすのはつらいので、辞退させていただきます――」

「いえ! 我が国はこのスピカ王国に隣接しているのです。平たく言えばこの子たちの住む村のお隣なんです! 近いですよ! なんなら国境近くに離宮を建ててもいい!」

「いや! そこまでなさらなくとも結構です!!」


いやにしつこい公爵様です。辞退する、お断りするといった言葉はちっとも受け入れてもらえません。揚句には離宮まで建てちゃいますか! 太っ腹です。

慌てて公爵様を押し止めるアンドロメダさんです。

しかし、何故にここまで公爵様は執拗に食い下がるのでしょう?


「ケンタウリ公、こんなキャラだったかしら?」


首を傾げるメグちゃんです。


「そうなんですか?」

「どちらかというと淡泊というか? しつこくするところなんて見たことないし、聞いたこともないわ」

「ふうん」


何か引っかかるものを感じながら、私たちは成り行きを見守ることにしました。

すると、少し冷静になった公爵様が、


「実は私には昔からよく見る夢があるのです。――美しく優しい女の人と、小さな子供二人を遺して死んでしまう夢。悲しくて悲しくて涙を流しながら目が覚めるのです。その夢の女の人に、貴方がよく似ているのです――」


そう話した刹那。


ドッ!!


いきなり公爵様が倒れてしまいました。


「キャー?!」

「ケンタウリ公?!」

「どうした?!」


その場は騒然となりました。先程まで元気いっぱい、暑く熱くアンドロメダさんを口説いていた人がいきなり倒れたんですよ?

とりあえずショウくんが抱え起こして、メグちゃんが異常無いかをスキャンしました。


「どうです? メグさん」

「うん、異常はないみたいだね。打ち所も悪くないし」

「じゃあなんで?」

「ん~」


メグちゃんが公爵様に手を翳したまま考え込んでいます。珍しいです。


「――絆が見えた」


ぽつり、メグちゃんが言いました。


「「絆?」」


私とショウくんがハモります。キョトンとしながらメグちゃんと公爵様を交互に見ていると、バチッっと公爵様の眼が開きました。あ、清々しいお目覚めですね☆


「ああ……何だ、何がどうなったんだろう? ……おや、お前は……」


目覚めて、フルフルと頭を振っていた公爵様ですが、またアンドロメダさんを見て固まってしまいました。も一回惚れ直しましたか? 深い青色の瞳を目一杯開いています。


「あなた……」

「お前……」


何ですか、その夫婦のようなやり取りは。

アンドロメダさんも、目を見開き、公爵様を見つめています。あれ? なんだか二人の間に漂う雰囲気が変わってきたように思うのは私だけでしょうか?

さっきまで『貴女』だった呼称がいきなり『お前』に変わっているのも気のせいでしょうか?


子供たちを抱きかかえてきたアンドロメダさんが、その手を解き、ふらふらと公爵様に近付いてゆきました。そして、未だショウくんに支えられている公爵様の手をそっと取りました。


そして。


「……こちらに……生まれ変わっておいでだったのですね……」


泣き笑いの顔で、言いました。


今日もありがとうございました(^^)

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