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決戦は金曜日

すいません。金曜日ではありません(笑)

あれやこれやがありました。


ショウくんの攻撃魔法が炸裂しまくりました。

勇者サマのスペシ○ム光線も拝めました。

肉弾戦もありました。生ラ○ダーキックは見ものでした。

メカが出てきて合体!! ……は、さすがにありませんでしたが。


そして――


「残るは魔王、お前だけだ」


勇者サマのクールな声が告げました。




そもそも私たちが侵攻した時点で半壊だったお城は、今や全壊に近い状態にまでぼろっぼろになりました。石造りだから堅牢だとは思うんですけどねー、いかんせん、手抜きなしの攻撃魔法を、みんなしてあっちこっちで乱発してましたからねー。

『ドカーン』とか『グッシャァァァ』とか、もうものっそい破壊的な音が鳴りっぱなしでした。

でもそれ、言っても5分かそこらの出来事でしたけどね。どんだけ強いんだ? ショウくんと勇者サマ。


そんなこんなで、私たちを囲んでいた魔物たちは消え去りました。

さすがの魔王様も、これにはお口あんぐりみたいです。お初にお目にかかった時のような怜悧な美貌も、今やすっかり間抜け面へと成り下がってしまいました。う~ん、残念です。


じりじりと距離を詰めるショウくんと勇者サマ vs 魔王様。

手に汗握り、状況をガン見する私。


が。


不意に『バチッ!!』と目が合ってしまいました。

――そう。魔王様と。


「ぬあっ?!」


思わず声が出てしまいました。

今まで勇者サマとショウくんの頑強な結界で守られてきたので、魔獣や魔物からは見えていなかったようなのですが、さすがに魔王様、レベルが高い! 私の存在に気付いてしまったようです。って、今頃~?!

しかし魔王様と突然目が合ってしまって、思わず腰を抜かしてしまいました。ヘチョっと結界内でへたってます。

そんな私を見つけた魔王様は、さっきまでの間抜け面を引っ込めると、もはや貫禄のニヤリ顔。基本スペックの悪人面を出してきました。

わ~、笑顔が黒いです~。って、これってヤ~な予感がビシバシするんですけど?


「面白いものを隠していたな。勇者どもよ」


間抜けオーラ一転、真っ黒いオーラがまた漂ってきました。地味に復活しないでくださいよ。


「なんのことだ」


クールに勇者サマが受けます。


「勇者と魔法使いの後ろに、面白いものを見つけたぞ。先程までは気付かなかったが……」

「ほう」


ショウくんも、何事もないかのように受けていますが、魔王様に見えないところで握った拳に力が入っています。

私はこれ以上変に声を出さないように、両手で口を押えています。

ジリッと私の方にショウくんがにじり寄ってくれましたが――


「それはお前たちの弱点と見た――」


あ、バレマシタ。


黒い笑顔を一層深めている魔王様。


まあ、正確に言うとショウくんのなんですけどね。

あ~、でも魔王様ぁ? 弱点ではあるけど私を攻撃するのはやめといた方がいいと思いますよ? お勧めしませんよ? 弱点でもあり、カンフル剤でもあるんですから――


私の制止も聞かず(そりゃ心の声が聞こえるわけないよね☆)、魔王様が翳した掌に、見る見るうちに黒い粒子が集まってきます。そしてそれは、勇者サマでもショウくんでもなく、私に向かって放出されました。


「リサっ!!」

「わはははは!!」


さも悪代官のような高らかな笑い声を上げる魔王様。

私に向かってくる黒い粒子。


でも。


ぱかーーーん!!


「んなっ?!」


私(というか結界)に触れるずいぶん手前で、その粒子は打ち返されてしまいました。――もちろん、ショウくんに。しかも素手で。

それを見て、また間抜け面に戻った魔王様。びっくりが過ぎたのか、打ち返された自分の魔力に直撃されてしまいました。


「ぐっ……、お前……本当に普通の魔法使いのレベルか?!」


前のめりに倒れ込み、魔力が直撃したお腹を押さえながらショウくんに問うてきました。


「んなもん知らねー。リサに手ぇ出したお前がわりーんだよ」


崩れ落ちる魔王様を半目で見ながら、ショウくんは言いました。




「くそっ!!」


しかし、崩れ落ちる刹那。

魔王様は残りの力を振り絞り、こちらめがけて攻撃魔法を投げつけました。


「危ない!!」

「きゃっ!!」

「貴様っ!!」

「ぐえっ!!」


……どうなったのかというと。

攻撃魔法が私の方に飛んできた「危ない!!」 → ショウくんが払いのけた「きゃっ!!」 → 払いのけた先には勇者サマがいた「貴様っ!!」 → 飛んできたやつを勇者サマがまた払いのけたが、その先には魔王様がいて、また直撃した「ぐえっ!!」


そしてあっけなく魔王様は伸びてしまわれました。って、全部自分の出した攻撃じゃん……




「魔法使い!! お前またわざとこちらに飛ばしただろう!!」


手にした魔法のロープ(魔力を込めて編んだもので、魔王を捕縛できる)でぐるぐると魔王様の上半身を縛りつけながら、勇者サマはショウくんに文句を言ってます。


「違うわっ! とっさに払いのけたらそっちに行っただけだろうが。いちゃもんつけないでください」


ショウくんは足を縛っています。


「いいや、わざとであろう。こちらに私がいるのが判っていたのだからな」


ぐーるぐーるぐーるぐーる。


「ちげーよ! しつっこいなぁ」


ぐーるぐーるぐーるぐーる。


二人、言い争いながらの作業だから、手元、全然見てません。


「あの~、二人とも?」


一応約束通り、勇者サマの結界から解放してもらった私は、今度はショウくんの結界に護られています。またぷよぷよ浮いてます。

それはいいとして。


「なに?」

「なんだ?」


甘い笑顔のショウくんと、渋面のままの勇者サマ。二人揃ってこちらを向いてくれるのはいいのですが。


「魔王様、もはやミイラですよ?」


二人が言い争いなんかしながら縄でぐるぐる巻きにしてたもんだから、すっかり縄まみれ。いや、ミイラ状態です。


「「あ」」


床に横たえられたままのミイラ……いや、魔王様を見下ろす二人。


「まあ、これならさすがに縄抜けもできねーだろ」

「ああ。さっさと封印してしまおう」


最後はなんとなく意見の一致した二人でした。


今日もありがとうございました(^^)


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