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魔王城ですね

「これが音に聞く魔王城ですか~」


ほへ~と間抜けな声を出しながら、私は目の前に『デデ~~~ン!!』と聳えるお城を見上げました。

相変わらず私は結界の中ぽよぽよと浮かんでますが。


私たちは今、魔王城のすぐ近くの森の中から様子を伺っているのです。いきなり「えいやぁ!!」とは切り込んでいきませんよね。まずは様子見です。


なんとなーくどす黒いオーラを放っているそのお城は、やたらに古びています。もうちょっと庭師さん、手入れをしましょうね! 雑草をのさばらせてはいけませんよ~なレベルの荒れっぷりです。石造りのそれは苔むしてるし、しかもその上から蔦も絡む絡む。もう無駄に古びてます。まあ、言いようによっちゃぁ『オドロオドロシイ、いかにも魔王の城』なんですけどね~。


「静かだな」


周りを伺っていたフォーマルハルトさんがポツリとつぶやきました。

そうなんです。今見ているお城の外には誰も居ないんですよね。これまで結構わんさか魔獣や魔物が出てきたのにもかかわらずです。とってもたくさん出会ってきたのできっとお城の前ではお祭り騒ぎになっているんじゃないかと思ってたんですがね。肩すかしです。

しかし。


「城の中にやたらとでっかい魔力を感じるな。恐らくそれが魔王のものだろ。属性は……火、か。後は大したことのないのがうようよと」


眼を閉じ、意識を集中させて魔王城の様子をサーチしていたショウくんが、ふっと息をつきながら感じ取ったことを伝えます。ちょっと眉間に皺が寄ってますね。

魔物の皆さん、城の中にいるんですかね。そしてやっぱり魔王様の魔力っていうのは凄いものなのでしょう。


「そうか。……では水で攻めるか」

「だな。水と、雷と。……後の眷属は大したことないけど、今までの魔獣よりは手ごたえありそうだ」

「わかった」

「どうやって攻め込むか、だけど」

「魔力の集中しているところに私と魔法使いで雷を落とし、それに乗って攻め込む。奇襲だが」

「うわ~。力技だね勇者サマ」

「ここでは正攻法も役には立たんだろう」

「まあね」

「お前も力いっぱい雷を落とせよ」

「はいはい。目一杯頑張らせてもらいますよ」


そんな会話をする勇者サマとショウくんを見ているしかない私。何の役にも立ちません。むしろ足手纏いだと思うんですけど、まさか私も中まで連れて行かれちゃうんでしょうか? できればここでお留守番していたいです。全力でそう思います。


「ショウくんショウくん。私はどうなるの?」

「う~ん、本当はここで待っててもらいたいんだけど、ここも安全ていう訳じゃないからなぁ。連れて行くよ?」

「う~~~。かなり腰引けてるんですけど?」

「大丈夫! できる限りのことはやっておくし、絶対オレが守ってやるから」

「……そうだね。ここで心細く待つよりかは一緒に行く方がいいかな?」

「そ。オレを信じろって」


私を安心させるかのような優しい笑みです。

いつも軽いノリのショウくんだけど、絶対嘘はつかないんですよね。言ったことは必ず守ってくれます。だからきっと、今回も大丈夫なんでしょう。


「……うん」


私は笑ってショウくんに答えることが出来ました。




どっかーーーーん!!! ガラガラガラガラ……!!!


物凄い雷鳴が響いたかと思うと、魔王城の中心めがけて雷が落ちていきました。

勇者サマとショウくんの渾身の雷です。すんごい破壊力です。魔王城が半壊してますよ!

いきなりの襲撃に城内は混乱模様。魔物魔獣が右往左往してます。

落雷の開けた穴から、私たちは城内に乗り込みました。


すると、なんということでしょう。


もう目の前にはえらっそうな……こほん、強そうな御仁がいらっしゃるではないですか。


普通、下っ端の魔物から徐々に格上になり、最後にラスボス登場ですよね? 順序的には。

でも、いいんでしょうか? これ、きっと魔王様ですよね? いきなりラスボスの目の前ですよ? 

魔王様と思しきその方は、水の流れのようなキューティクル艶々の紫紺の髪を背に流し、能面のような無表情。切れ長の目元は冷淡さを伝えて余りあります。そんなにこちらをガン見しないでくださいYO☆

整った美貌は、無表情だと迫力ですね~。同じく美形のショウくんが怒ったら怖いのと同系統です。


なぜか広間の中央に立っておられた魔王様(と思しき方)。


それと対峙する私たち。


そして少し距離をおいて、取り囲む魔王様の眷属たち。


一触即発です。




「お前が魔王か」


鋭い視線を投げかけながら、勇者サマが確認します。そうです、誤認逮捕はよくないですからね! まずは本人確認からしましょう。免許証とか保険証があれば完璧なんですけどね。もうちょっと友好的に質問できれば上等なんですけど、いかんせん、状況が状況なので、好戦的になってしまうのは致し方ありませんね。


こちらの質問に、


「我はヒュードラ。火の魔王なり」


酷薄そうな笑みを、その薄い唇に乗せながらキチンと名乗ってくださいましたよ。

目は笑ってませんけどねー。

そして、そのまま続けて、


「お前たちは勇者の一行と見た。我らを倒しに来たのか。ふふ、愚かな。――やれ」


すっと右手を上げたかと思うと、眷属たちに命を下してしまいました。えっ? もう開戦??

うろたえる私とは違って、そんな魔族たちの様子を見ても、余裕綽々なショウくんと勇者サマです。


「何とも好戦的だな。じゃ、勇者サマ、やりますか」

「そうだな」


おもむろにローブの袖をまくり出したショウくん。

王様からいただいた剣を振り上げる勇者サマ。


いざ開戦です。


今日もありがとうございました(^^)

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