私が私でいるために~教国は揺れて、教えは歪んで~後編
次がリップル・ファート最終話となります。
「せ、精算だと?なんのことだ」
「この国の混血への排斥運動の煽動。そして、神官リルファの殺害についてかな」
「な、何の話だ」
「さっきあんたが自分で言ってたでしょ。それともシラをきるつもり?」
「私の独り言だ。貴様に聞かれたとて証拠にはならんよ」
「そ、ならとっておきの呪いをあげる」
そう言いながら、アリスは大司教に近づくと奇妙な呪文を唱えた。
「なにをした?!」
「簡単な術。あなたがかけた術であなた以外の何者かが誰かを傷つけた場合。その傷がそっくりそのままあなたにも返ってきます」
それが意味するところはつまり、
「あなたが何もやましいことをしていないのなら、その術は死ぬまで発動しません。しかし、なにかしているのなら今すぐに解いたほうがいいですよ」
「………」
彼は動けない、動けるはずがなかった。
自分で設定してしまったのだから、たとえ死んでも事を成すように、と。
もはや彼に打つ手はなかった。
sidechangetoリップル・ファート
いつもの宿屋にて私たちは集まって話し合っていた。
「勇者が来るの?」
「ええそうです。リルファのことで話し合いがしたいと」
「話し合いになると思う?」
「少なくとも殺し合いにはならないでしょう」
「そうだといいけどね」
私は溜息を吐く。
私の不安な的中するのかどうなのかはわからないが、勇者の妹の予言が変わっていたのが気になる。
「避けられない運命があなたをおそう。しかし決して背は向けてはならない。死神の鎌は貴方の背を常に狙っているのだから、それさえ気を付ければ自ずと活路は開ける」
できれば、その運命すらやってきてほしくないのだが、まぁやってきてしまうものは仕方がない。
「抗ってみましょうか」
ほくそ笑んで、翌日を待った。
翌日その運命とやらが来た。
彼が運命のようだ。
決して背を向けず彼を見ていなっければならない。
意外と面倒なことになってきたのかもしれない。
「はじめまして、教国の勇者と聖女様」
軽く会釈をしておく。
そのまま案内を、マイカに任せ私は後から入っていく。
聖女が?って顔していたけど気にしない。
私の命がかかっているのだから。
勇者に背を見せないようにしつつ、不自然に見えない動作で座る。
勇者は気がついたようだが何も言ってこない。
悪い方向で、何かを悟っているのかもしれない。
考えすぎても仕方がない。
今はこの難局を乗り切ることだけを考えよう。
そして、道は
運命は、