私が私でいるために~愚者か賢者か~
「なぁ、ちょっとこっち来い」
「どうしたんだよ。少しぶらついて時間潰そうかと思ったのに」
「いやそっちの用事は終わった。そうじゃなくてな、これ見てみろよ」
「骨か…」
「ああしかも、教国のだ」
「なんでんなことがわかるんだよ」
「ちょっと持っていたものの中にな。私の知っているもんがあったからな」
「どーゆうことだ?」
その日は秋にしてはそこそこ暖かい日だった。
その暖かさと共に来た優しい人は…
「勇者がついた?」
「そう。危険はないとは思うけど注意して、この街で教国の人間は好かれていないからこっちに情報が流れてくるはずよ」
「そうなんだ」
なんでもこの都市は、魔王と勇者に尽力によって作られたらしい。
で茶々を入れてきたのが、教国。その時にはそれほど力を持っていなかったそうなのであえて無視。
しかし現在は、そうもいかないほどの権力を得てしまったそうでその権力を盾にやりたい放題している人が多く、お代の踏み倒しから強制的な教国への勧誘ほか諸々教国の威光を笠にきた所業ばっかり。
そのため、教国=無理難題をぶつけてくる鬱陶しい奴らという公式が成り立ってしまっているようで。
無論一部の人だけなのだが、”一部の”というには多過ぎる人数のおかげですっかり嫌気が差しているのだ。「また教国の連中が無茶を言いに来やがった」と教国の紋章を見ただけでそう考える人が出るくらいに。
「そんなに嫌われてるのになんでここに来るのかなぁ」
「勇者と聖女が、教国から来たからじゃない?それにここが魔王領であった頃から、お母さんは統治していたみたいだしね」
sidechangeto勇者
「あんたら教国の人間に話すことなんてないよ!」
そう言って、取り付く島もなかった。
「これで十件目ですね」
「なぁ、ここなんで教国目の敵にしてんだ。これじゃまるでこっちが悪いことしてるみたいじゃねぇか」
「いえ、そんなはずはありません。みんな真面目な方々ばかりです。大方魔王にたぶらかされて…」
と聖女が言っている途中で、
「あぁ?!金を払えぇ?!このお方は教国の偉い方なんだぞ?!なんでこんな飯に金を払わなきゃならない?!なぁ、お前たち?」
通りの向こうの飯屋の方から大きな声がしてきた。
「実際嫌われる理由みたいだな。権力を笠に着ているってことみたいだから」
「そ、そんなはずは…」
ため息を漏らしつつ勇者はつぶやく。
「この調子だと、今日泊まれる宿すらないかもな」
「それは教会支部によれば大丈夫だと思いますけど」
「その教会支部ってあれか?」
勇者が指さした方向にあったのは、随分と寂れた民家サイズの教会だった。
かろうじて残っている屋根の上の十字架が、教会を示している。
「あんなところで大丈夫か?」
「大丈夫です!!…多分」
自信たっぷりに告げたあと、少し不安げな声になる。
「まぁ、一応真面目な人がやってくれてるんだろ…あ」
「『あ』?」
勇者が漏らした言葉につられ、その教会の入口を見る。
蹴り飛ばされてきたと思われる神父(貧相)と蹴り飛ばしてきたと思われる神官(豪華)がいた。
「なんでこんなもんしかねぇんだ。ここは!もっとお布施をせびれよ!!」
「ごほっ…無理言わないでください。これだって切り詰めればひと月は持つんです」
「いやこれは徴収させてもらう。これでも私は忙しい身でね。君がそれっぽちしか持ってこれないのなら、次の人を連れてこなければならないのだよ」
「そんな!ここでそれだけのお金を集めるのにどれほど苦労したことか?!あなたの言う次の人では、きっとこれっぽちすら集まらないでしょう」
蹴られていた神父は神官にそう言ったあと、お腹を抑えながら教会の中へ入っていった。
「これが、私たちのやっていることなんでしょうか?」
「さぁてな」
「勇者は?」
「聖女と一緒に、この都市を回ってた。でも収穫はゼロ」
「そうありがと」
「それと勇者はもしかしたらこちらの味方になってくれるかも」
「そうね。それもありか。」
「ただ、あの大司教のことだから何かあるかも」
「警戒しておきましょう」
「今のところそれだけ」
「ありがとね。……さて彼はどちらかしらね」




