兎にも角にも王都!4
王はその野心故に笛を欲しがり
妃はその欲望故に策をめぐらせ
王子はその優しさ故に滑稽に踊り
王女はその賢さ故に世界が見えず
混血はその素直な心を利用され
貴族はその愚かさ故に身を腐らせ
そして忠義の騎士は
その日の夜、私たちは宿でこれまでのことを話し合った。
「あの笛、そんな代物だったんですか。なるほど、代理の方が焦るのもわかります。ギルドマスターの方には、あす会いに行くことつたえましたか?」
私が片手を上げ、
『今伝えてた。…「こちらとしても、そちらで確認が取れるなら渡りに船じゃ。最悪の事態だけは想定しておく。そちらも想定して動くことは忘れないようにな」だって』
「わかりました。想定して対策まで立てておきましょう。あの笛ならば何が起きても不思議ではないのですから」
全ては明日分かることだ。この笛が古の災禍を運んだ品なのか、それとも新たに災禍を運ぶ品なのか。
ここで話は変わり、時は三週間ほど前にさかのぼる。
それは焦っていた。なぜならば、盗まれてはいけないものを盗まれてしまったからだ。
やっと使えるようになったからといって油断してしまったのだ。
大通りで人ごみを二三抜けたかと思うと気がついたときには、登録する前のそれは、当人の手元から消えていた。
涙目で隠れ家に帰り、翁に事の次第を告げた。
翁は何も言わずに二つ目を作り始めた。
申し訳なさからそれは、三週間必死に翁の世話をした。
朝から晩まで翁が寝るまで世話をし続けた。
翁がそれに命を賭けているのもわかっていた。そしてこれが自分の独りよがりだと言うことも、この三週間のうちに感じ始めていた。しかし、もう止まれない。それは、止まれるタイミングを逸していたのだ。
自分が助けたい人は、自分の助けなどいらないと言うだろうことも、なんとなく考えられた。
だがこの計画は修正する事はあっても、中止する事はもうできない。
例えこれが自分の意志でなく無駄なことだとしても、必ず助けるとそれは誓う。それはその決意を表すかのようにつぶやいた。
聖女様、と。
翌日、私たちはこっそりと宿屋を抜け出す。
あるときは人ごみ紛れ、そしてあるときは背景のようにそこを目指す。
追われているのかいないのかは関係ない、とにかく追跡者に追跡されないよう動く。
そしてやってきた。妖精の贈り物亭である。静かに扉を開く、
「いらっしゃいませー!」
元気な声で話しかけられる。どうやら雇われらしい。
「何名様でしょうか?」
「…四名で」
ニーナがフードを外し、顔を見せると、即座に店長を呼びに行った。
話を聞けば、銀貨を払ってつりももらわず出て行ったとのこと。
リリアはなんか釈然としない顔をしていたが、声に出すことはなかった。
目立つことをするものだ。まあ、役に立ったからいいけど。
「さて、皆そろってる?」
私の周りには、いつものメンバー+一人…一人?
「ああ、その子は私の知り合いから預かった子でね。聖女のところに連れて行って欲しいって聞かなくてね。一緒に行ってね」
元気ハツラツとした子で何の疑いもない眼差しを向けてくる。
それはまるで、濁り一つない湖のような澄んだ瞳だった。
そんな子と共に、店内から大聖堂の地下へ降りていく。
…店が大聖堂の地下と繋がってるってどうゆうこと?
店長に訪ねてみたが、その子にはぐらかされた。
あんな無垢な目でおネェちゃんはすごいのですと言われると質問のしようがない。
いやできない。少なくとも私には無理。
ついたのは真っ暗闇だった。伽藍堂とした部屋は真っ暗闇にもかかわらず陰影がついていた。
「……聖女が来れなかった訳は、光呪を受けているからか?」
マイカが店主にたずねる。店主はくすりと笑い。
「そんなのは本人に聞けばいいでしょう」
しかし店主にそう返され、何か言いたげになりながらも黙るマイカは少し納得がいかないようだ。
「お久しぶりです。皆さん」
奥の方から声がした。
声のした方を見れば、あの代理の人がいた。その隣には、豪華な服を着た方がいた。
そちらに目を向けると、その方がとても朗らかな笑顔を向けて、
「はじめまして、チーム【ツキアケ】の皆さん。こんな薄暗いところまでご足労頂きありがとうございます。それと、久しぶりねマイカ、げんきにしてた?」
「なんでこんなところに閉じ込められているんだ?聖女!!」
イラついた声でマイカが尋ねる。いや、詰め寄っているといったほうがいいだろう。
のらりくらりと話を躱していく。その様に対して私を含めほとんどの人が話についていけずポカーンとしている。
「だから、あんたはいつまであのことを「はいストップ、今はそんなこと話してる場合じゃないでしょ」…っ!はぁ、わかってる。リップル例のアレ見せろ」
………
「おーい、聞こえてるか?」
……はっ
放心から立ち直り慌ててそれを見せた。
「お借りしますね」
とてもやわらかい声でその魔笛(私専用)を手に取る。
そのまま目を開き、まるでその構造を原子単位まで見るかのように瞳が大きく見開かれている。
そのまま見ていること数分、まるでそこだけ時間が止まったかのような印象さえ受ける。
やがて、聖女はその目を閉じて、魔笛を私に返す。
「…間違いなく、それは作られたものです。少し前に確認を取り、アレがあそこにあることは証明できていたのですが、私も信じたくはありませんでした」
聖女の顔が曇る。
「何に使われるか見当はついてるのか?私たちはついていないが」
「…すいません、私たちには見当がつきません。ただこれが彼らなら、こんな程度ではすまないでしょうね」
目を伏せ、彼女はそう言った。
「なあ、耳寄りな情報があるんだが聞くかい?」
店主が口を挟んできた。
「この一件、国王夫妻が関わっている」
投げられた爆弾は、とてつもなく大きかった。
祖国を護るため国を売った
かなり手抜きになったかなと、思いますが王都編はまだ続きます。




