お断りの回答
歩美は一瞬、パソコンの前で固まった。
あれ?お断りされたの?
歩美は特にお見合いに自信があったわけではなかった。「お見合い必勝法!」のようなテクニックも、全て実践できたわけではなかった。それでも、無意識に次もノリヒロと会えると思っていた。ノリヒロにお断りされたという事実を、歩美はしばらく受け入れられなかった。
「そっか、たしかに相手も選ぶ権利があるものね。」
極めて当然のことだが、歩美ははじめてそれを理解した。自分が選ぶのと同様に相手も選ぶことができる。そのうえで、なぜお断りなのかが気になってきた。
「あーあ、結構楽しかったんだけどなあ。」
歩美は軽く落胆した。いや、軽くと思いたかったが、実際はかなり落ち込んでいた。
「うわあ、これで明日から仕事かあ。」
今日は日曜日だ。しかも、日曜日の夜だ。明日から始まる1週間が急に憂鬱になってきた。
「せめて、どうしてお断りされたか、聞いてみようかな。」
歩美は、担当カウンセラーの優奈にメールして、お断りの理由を確認した。
「まあ、仕方ない!今日は寝よう!」
嫌な思いを振り切るように、歩美はベッドに入った。しばらく眠れない時間が続いたが、やがてぐっすりと眠ることができた。
次の日は、前日のショックもなく、意外と普通に出勤できた。いつも通り授業を終え、放課後の書道部の活動に参加した。8時くらいまで学校にいたが、その間婚活のことは忘れていた。
家に帰ってきて、昨日のお見合いについてのお断り理由が気になってきた。結婚相談所の自分のプロフィールを開けると、優奈からメールの返信があった。
歩美さま
お世話になっております。
この度は誠に残念でございました。
ノリヒロさまからのお見送りの理由ですが、
他に仮交際されている方が複数おられ、
これ以上仮交際は増やせないとのことです。
優奈のメールから、歩美は婚活の現実を知った。
「なるほど、自分がいいと思う人は、他の人もいいと思うわけね。」
少し考えれば当たり前なのだが、歩美はこの時はじめて婚活の厳しさを知った。自分がいいと思う相手には、ライバルがたくさんいる。逆に自分がいいと思わなかった人は、他の人もいいと思わないということだ。
「うーん、難しいなあ。」
歩美はため息をついた。TVやインターネットで、婚活の厳しさを伝える情報は、何度か触れたことがある。いつもはなぜそんなに厳しいのかと思っていたが、その理由を身をもって知ることとなった。
だが、歩美は
「仕方ない、他の人とのお見合いをがんばろう。」
と言って、他にお見合いが決まっている3人と、日程調整をした。その日のうちに3人と日程が決まり、次の土日もほとんどお見合いに費すこととなった。




