楽しいお見合い
ノリヒロは、「国語は好きだったけど、テストが苦手だった」と言う話を上手く笑いに変えて、歩美を楽しませた。歩美も、国語が苦手な生徒でもこういう風に思ってくれたらいいな、と思って知らず知らずのうちにノリヒロの話に引き込まれていった。
だが、ノリヒロのことも知りたいと思い、今度は歩美が質問しようと思った。
「あの、ノリヒロさんはIT系の会社ですよね?どのようなお仕事されてるんですか?」
歩美はコンピューターやインターネットがとても苦手だったので、ノリヒロの仕事について全く見当もつかなかった。そんな歩美の心中は知らず、ノリヒロは、
「まあ、会社のシステムを作る仕事なんですけど、」
と言い、
「今はメーカーのシステムを作ってますね、工場の生産管理なんかの。」
と付け加えた。歩美は、
「あ、そうなんですね。」
と答えることしかできなかった。
だが、ノリヒロは上手く自分の仕事を紹介した。
「化学メーカーがあって、その、薬品とか化学物質とかを配合するんですけど、そのシステムを開発してるんです。コンピューターで適量を計算して、いいタイミングで混ぜ合わせることができるようにしてますね。」
と情熱的に語った。その雰囲気に歩美も「楽しそうだな」と思い、自然と笑顔になった。
「すごいですね、そういうの。」
と言って、
「すみません、こんな感想しかなくて。」
と謝った。だが、そうやって謝ったことも、ノリヒロのおかげで深刻にならずに済んだ。彼は
「いえいえ、そんなことないですよ。」
と言って少し謙遜した後で、
「結構初歩的なミスが多いんですよね。システムとは言っても、最後はアナログです。」
と言って笑った。歩美もだんだんと安心感を覚えていった。歩美は、
「でも、私、理科が全然できなくて。」
と言った後で
「というか、理系科目が全然ダメなんですよね。」
と付け加えて笑った。ノリヒロは、
「やっぱり、国語とか英語が得意ですか?」
と聞いてきた。歩美は、学生時代に国語や英語が好きだったことを話した。自分でも学生時代の楽しかった思い出が蘇ってきて、時間が過ぎ去っていくのが速く感じた。
お見合いが終わる時間になって、名残惜しい感じがした。歩美にとってノリヒロは、初対面だけどもっと話をしていたいと感じさせる人であった。
「では、失礼します。」
ノリヒロは別れ際に礼儀正しく言った。
「今日はありがとうございました。楽しかったです。」
歩美は笑顔で挨拶した。偽らざる本音であった。
「僕もです。」
ノリヒロの笑顔が、歩美の心に強く印象に残った。




