第7話
ユトピアとエボールの婚約解消から数日後。ユトピアは公爵家の屋敷でお茶を飲んでくつろいでいた。そんな時に、一人の令嬢が慌しい様子でユトピアに会いに来た。
ユトピアの義妹、サキュラ・シグマ・サジタリスだ。
「お姉様! エボール様が王太子じゃなくなるってどういうこと!? 私、何も聞いてないわよ!?」
「今頃になって気付いたの? 私との婚約が解消になってすぐに決まったことなんだけど?」
「どうしてよ!? エボール様が臣籍降下になるなんておかしいじゃない!?」
「何を言ってるの? 貴女のせいじゃない?」
「え?」
サキュラの言葉にユトピアは首を傾げる。心底不思議そうな顔をして。
「私という婚約者がいるのに他の女性、それも妹の貴女と堂々と浮気している時点で、王太子としての自覚が足りないと判断されたのよ」
「はぁ!? 何よそれ!?」
「王族は貴族の見本とも言われているの。そんな立場の方が浮気なんて裏切り行為をする。時期国王にふさわしくないに決まっているでしょう?」
「う、浮気って、そんな……」
そんなつもりはなかった、と強く言えない。サキュラとしても姉から王太子を奪ってやろうという野心があったのは確かなことでもあった。結果的にユトピアとエボールが婚約解消となったと聞いたときは喜んだものだが、その後が気に入らないのだ。
「ほ、ほんの出来心だったのよ! エボール様は王太子だから格好いいし、お姉様が伴侶になるんだから結果的に家族になるんだと思ってたし……」
「浮気じゃなくて出来心? 家族になるから? それが理由で人目も憚らずにくっついていたの? 二人とも貴族の勉強が足りていなかったみたいね」
「そ、そこまで言わなくてもいいじゃない! それに、お姉様と婚約解消しても私とエボール様は婚約できなかったんだし……!」
サキュラは婚約解消したのなら自分がエボールの婚約者になれると思っていた。そのことを父に聞いてみたのだが、何故か「できない」と言われて締め出されてしまった。何故そんなことを言われたのか分からずにエボールにも婚約しようと願ったのだが、肝心のエボールは青ざめた顔で「できない」と言っただけだった。
「お父様にもエボール様にも婚約はできないって言われたのよ! 私だって公爵令嬢なのにおかしいじゃない!」
「すぐには婚約なんてできないでしょう。エボール様の資質からしてどれくらい臣籍降下すればいいか話し合ってる最中なんだからね」
「……どういう意味?」
「浮気したから王太子から外れる王子のその後の処遇をどうするかなんて難しいからよ。そんな中で公爵令嬢と婚約なんてできるわけがないわ。まぁ、問題児同士ならお似合いかもね」
「も、問題児!?」
「婚約者の妹に手を出す王子、姉の婚約者に手を出す令嬢。問題児同士よ」
「~~っ!」
サキュラは顔を真っ赤に染めた。怒りと羞恥からなる激情で叫び出したい気持ちだったが、「勉強が足りていない」とまた言われるのが嫌でそれだけは耐えた。




