第6話
「まったくグレムは義妹を甘やかすんだから」
「多分、グレムの方は単純に妹かわいさですむ話ではないと思いますが……」
「? どういうことですの?」
「いえ、何でもありません……」
カートはグレムのサキュラに対する感情が恋愛感情に近いものだと気づいていた。だが、そんなことをグレムとサキュラの姉であるユトピアに言っても気まずくなるだけなので黙ることにした。それに、先程ユトピアにあれだけ言われてしまえば、グレムもサキュラのことを考え直すことだろう。特に問題はないとカートは思った。
「ユトピア嬢、先程言おうとしていたことなのですが実は俺は、」
「ユトピア嬢!」
「「っ!?」」
またしてもカートの言葉を遮るかのように、黒い髪にマゼンダ色の瞳の大柄な体躯の男が大きな声がユトピアを呼んだ。その青年は側近の一人、デケイド・アノ・ザライダだった。
「殿下と婚約解消となったのは誠か!?」
「デケイド様、本当です。さきほど私から婚約解消を求めて受け入れていただきました」
「がはははは! それは良かった!」
デケイドは婚約解消の話が事実だと聞くと嬉しそうに笑った。不思議に思ったカートは「何故、貴方が喜ぶ?」と尋ねると愉快そうに答えた。
「ユトピア嬢と殿下が婚約解消となった理由、それは殿下が不甲斐ないからであろう? ユトピア嬢?」
「それは……」
「当然だが、それがどうしたんだ?」
「つまり、筆頭公爵の御令嬢に殿下は振られたのだ! そんな不甲斐ない王子など、もうサキュラが相手にすることはあるまい! あの軟弱な王子よりも強く逞しい俺のほうがいいに決まっているからな! がはははは!」
「「っ!」」
ユトピアとカートは、「ああ、そういう考え方か」と同時に思った。確かにエボールは細身な体型で力も弱々しい。逆にデケイドは騎士団長の息子なだけあって体つきは鍛えられて強そうだ。以前、サキュラがデケイドを強そうで格好いいと口にしたことをユトピアもカートも覚えている。
「ユトピア嬢、婚約解消のことは俺からサキュラに伝えておこう。ユトピア嬢は新しい婚約者を見つけることを願っておこう。がはははは!」
デケイドは豪快な笑い方をして去っていった。その姿をユトピアとカートは振り返ることはしなかった。
「何だったんでしょう、あの方は……」
「まあ、彼は独特な考え方をしているというか……そんなことよりも俺から大事な話があって……!」
二回も遮られたこともあってか、カートは周りを見渡して誰にも邪魔されないことを確認する。そして、大丈夫そうだと思い、真剣な顔でユトピアと向き合った。
「実は俺は……―――」




