第4話
エボールと婚約解消の話が終わった後、ユトピアはカートと共に歩きながら笑い合っていた。
「カート様のお陰で難なく婚約解消できましたわ」
「いえいえ、貴女の事前準備が完璧だったからですよ」
二人は心底愉快そうにしていた。二人とも、自分勝手なエボールに辟易していたのだ。だからこそ、手を組んで婚約解消に同意するように仕向けたのだ。
「これで私はもう悩まなくてすみます」
「ですが、今度は婚約者を選ばなければなりませんよ?」
「ふふふ、そうですね。いい人が見つかればいいのですが……」
不安そうなことを言うが、ユトピアはあまり心配していない。彼女の立場を考えれば婚約者選びなど困ることがないのだ。とはいえ、理由があれど王子との婚約が白紙となった以上は婚約者に高望みはできない。
最も、幸せになれればいいというのがユトピアの願い――つまり、爵位はあまり気にしていない。浮気者の王太子を見てそういう価値観を培ったのだ。
「……ユトピア嬢、それならば俺なんかどうでしょうか? 俺は貴女のことを尊敬していますし、貴女も俺のことをよく理解しておられるでしょう」
「まあ! カート様が?」
ユトピアはカートの突然の告白に驚いた。彼女はカートの気持ちに気づいていたが、馬鹿王子と婚約解消してすぐに告白するとは思ってもいなかったのだ。慎重に動くため、こんな大胆なことをするとは予想していなかった。
「……カート様のお気持ちは以前から気づいていました」
「え!? そうだったのですか? 隠しきれていたつもりだったのですが……俺ではだめですか?」
「いえ、逆に私でいいのでしょうか? 私は、義妹に婚約者の心を奪われるような令嬢ですよ?」
「そんな事はありません。不貞をしたあの二人に問題があることくらい理解されてるでしょう」
「ええ……まあ……」
元婚約者と義妹の性格に問題があるのは間違いない。それでも不貞された事実は変わらない。貴族の世界では、たったそれだけでも不利になる要素としては十分なのだ。新たな婚約を希望する人がいない限り。
「ユトピア嬢、俺にはエボール殿下や他の側近、そして貴女にも隠していた秘密があります」
「秘密ですか?」
「今貴女にその秘密を明かします。それで俺の気持ちが本気であると伝えたくて……」
カートの秘密。それは確かにかなり重要なことだった。おそらくは今の彼の周りとの関係が大きく変わること。それを覚悟しカートはユトピアに伝えると決めた。
「実は俺は、」
カートが口にする直後だった。
「姉上!」
「「ッ!」」
カートの言葉を遮って、髪も瞳の色も緑色の中性的な容姿の青年がユトピアに向かって大きな声で姉と呼んだ。
「グレム?」
この青年は側近の一人であり、ユトピアの実の弟グレム・リン・サジタリスだった。エボールがサキュラに執心するようになってからは何故か姉の彼女に冷たい態度をとるようになっていた。ただ、今は何やら慌ただしい様子。




