第二十一話『連盟の暗部――告発される“正義”』
グリマルクの残骸から、煙が細く立ち上っていた。
砕けた魔導コアが静かに脈動を止める。
玄道は傷だらけの身体を引きずりながら、仲間の元へと戻る。
ティオが駆け寄り、ミレイナが手を貸す。
「先生……! 大丈夫ですか?」
「まあな……ちょっと、拳が腫れちまった」
玄道は笑った。その拳には、焼けた痕が残っていた。
だが彼の目は、しっかりと前を見据えている。
その時だった。
「その場で動かないでいただきたい――“玄道”。」
厳粛な声が、戦場に響いた。
石畳の道を歩いて現れたのは、王都の監査官。黒衣に身を包み、法典を抱えた初老の男。
その背後には、王国直属の親衛兵が数十名。
そして、彼らが取り囲むように歩み出たのは――銀髪の女、エリシアだった。
だが、様子がおかしい。
彼女の手首には、魔導封印の枷がかけられていた。
「な……!?」
「王都評議会の緊急決議により、魔導連盟所属のエリシア殿を、“職権乱用および違法兵器の無許可使用”の容疑で拘束する。証拠は、貴殿の拳が砕いたグリマルクと、その戦闘記録である」
監査官が書状を掲げる。
その場に、驚きと動揺が走る。
「そ、そんなはずが……! 私は王都の許可を得て……っ!」
「許可など存在しない。貴殿は、個人の判断で召喚兵器を展開した。さらに、学生団体への実戦攻撃を指揮した事実が確認されている」
冷静な口調で監査官が続ける。
「……よって、すべての責任は、魔導連盟上層部に問われることとなる。貴殿も含めて、内部調査が始まるだろう」
拳士団の面々が息を呑む。
玄道は、静かにエリシアを見据えた。
「なぜ、あそこまで俺たちを敵視した?」
エリシアの瞳に、わずかな陰が差す。
「“拳”などという原始の力が、我々の体系を脅かすとは思いたくなかった。ただそれだけだ……!」
そのまま彼女は、親衛兵に連れられ連盟塔へと消えていった。
戦場には、ようやく静寂が戻ってくる。
監査官が玄道の方へ歩み寄り、一礼した。
「君たちの行動は、正義であった。魔導に偏りすぎた王都の力体系に、一石を投じてくれたことを感謝する」
玄道は、少しだけ笑った。
「……正義か。それは、俺の拳じゃなくて、こいつらが証明したことだ」
そう言って振り返ると、拳士団の仲間たちがみな、真っ直ぐに彼を見つめていた。
彼らの拳が、彼の言葉に応えるように、ひとつ、またひとつと高く掲げられていく。
――そして、それは王都の民衆たちへと広がっていった。
新しい“力”の形を、彼らは目撃したのだ。




