第十九話『決別の拳――暴くは偽りの正義』
魔導兵たちが四方から一斉に攻めかかってくる。
詠唱された火球、氷刃、雷光が空を裂き、拳士団の拠点へと降り注いだ――
「今だ、分散して避けろッ!」
玄道の号令と同時に、ミレイナとティオが左右に飛び、他の団員たちも訓練で鍛えた身体能力で魔法を回避する。
ドォン!
地面が爆ぜ、木片が飛び散る。しかし――直撃した者はいない。
ただひとり、玄道だけがその場を動かなかった。
「ひとつ、見せてやるか……俺の“拳”の意味を」
魔導兵の一人が、至近距離まで詰め、雷撃魔法を放とうと詠唱を叫ぶ――だが、その声が終わる前に。
ガッ!
玄道の拳が、音速を超えて男の腹に叩き込まれた。
「ッが……!?」
魔導兵の身体が宙に浮き、2メートル後方へ吹き飛んだ。
息を呑む連盟兵たち。その目には、もはや“魔法に劣る力”という偏見はない。
「おい、あの団長……“人間”の動きじゃないぞ……!」
ティオはその様子を見て、小さくつぶやいた。
「本気になった先生の拳……やっぱり別格だ……!」
だが玄道は叫ぶ。
「勘違いするな! これは俺一人の戦いじゃない! 拳は――皆で磨き上げる道だ!」
その言葉と共に、拳士団の仲間たちが次々と応戦する。
ミレイナは身軽な体術で魔導兵の足を払って転倒させ、ティオは魔法の隙をついて肩に肘打ちを叩き込む。
拳士団の動きは、まるで一つの生き物のようだった。
連携。信頼。そして“心を折らない強さ”。
数に勝るはずの連盟兵たちが、次第に後退し始める。
――そのときだった。
「やはり……ただの徒党ではないようだな」
場に響く冷たい声。
玄道が顔を上げると、王都塔の上に立つ人物が目に入った。
銀髪の女幹部、エリシア。魔導連盟の戦術顧問であり、精鋭魔導兵“蒼き裁定者”を率いる女。
「このままでは演習とは名ばかりの敗北だ。貴様らの“異端性”を、私の手で証明しよう」
エリシアの手が掲げられる。
空気が震えた。
次元の裂け目が開き、そこから現れたのは――
魔導式召喚兵“鋼鉄のグリマルク”。
魔導連盟が誇る、半自律型の戦闘兵器だ。
ミレイナが目を見開いた。
「あれ、連盟の最高禁術の一つよ! 本来、実戦でしか使われないはずの――!」
エリシアは静かに言った。
「“正義”とは、勝った者が持つ資格。ならば……貴様らを“敗者”にしてやろう」
玄道は、少しだけ笑った。
「上等だ。拳士団が歩く“道”に、敗北の二文字はない。――俺たちは、決して折れない」
そして、玄道が静かに拳を構えたとき。
まるで大地が、それに呼応するように震え始めた。




