第65話「煙」
そして、屋敷が慌ただしくなる。
「あら」
「あれは……」
森の上空に煙が上がる。
ケイトを除き二人は事態を把握した。
「ケイ、一度屋敷に戻りましょう。どうやら、魔獣の被害が出たようです」
「え、本当に?」
急いで三人は屋敷内に戻った。
「あ、三人とも良かった」
「お父さん、手伝います」
「……分かった。支度してくれ」
「サラティスとケイト君は屋敷内にいてくれ。 レニトス最西端辺りに魔獣が大量に降りてきたみたいだ。飛行魔獣も現れてらしい」
「ヴォルゲドですか?」
「まだ、詳細はきてないから断言できないけど、うちの領にヴォルゲドは出たことないから、たぶん違うと思う」
「せ、セクド様」
「なんだい?ケイト君」
「ご迷惑でなければ、何でもいいので御手伝いさせてくれませんか?」
「へ?」
セクドは思わず目を丸くする。
「お父さんから、リステッドで魔獣と遭遇したら倒してこいって。もちろん無茶はしません。別に荷物運びとかでもいいので……」
「あーなるほどね。分かった。今ケイト君の装備を用意はすぐできないから雑用になるけど、本当に大丈夫かい?」
「はい」
「よし、ではリステッド領主セクド・ルワーナ・リステッドがケイト・バインドの協力を要請する」
「う、承りました」
「お父様」
さすがにこの流れで自分だけのんびりしているなどできない。
「サラティスは確かに見習い騎士より強いかもしれない。けど、不確定要素は集団任務を乱す恐れがある」
「違います。後方支援です。もし、医者が足りない時にお手伝いします。手が足りてたら、大人しく見てます」
サラティスに自分が治すという信念はない。
大事なのは怪我人を治療することで、誰が治療したかは重要でない。
何より、現代で回復魔術は訓練が大変である。
貴重な経験を本職から奪うことはしたくない。
「よし、分かった。お願いするよ。緊急事態、サラティスが指揮で動かせるかい?」
セクドはあの晩を思い出す。
ただ治療するだけなく、的確に医者、看護師に指示を出していた。
終いには指示を仰ぎにやってきていた。
その姿は将の器を感じさせるほどだ。
リステッドの医者はこういった、状況に一番慣れていると自負している。
魔術は練習で腕は磨くことはできるかもしれないが、人を動かすという経験を積む機会は貴重である。
「大丈夫です」
「分かった。サラティスの判断で構わない。皆には領主として通達しておくよ。ひとまず、二人は着替えておいで」
ジェリドとサラティスは急いで着替えに戻る。
特にサラティスはスカートで行くのは好ましくないため、動きやすく、汚れても良い服に着替える。
そして、髪も縛る。
「サラティス様、何か屋敷から持っていくものはございますか?」
「ハルティック申し訳ありません」
「いいえ。領の有事なのですから、領民である私も他人事ではございません」
サラティスはハルティックに謝罪した。
自分が手伝いたいと言わなければ、使用人であるハルティックは危険な現場に向かわなくて済むのだから。
「そうですか。では、行きましょう」
ハルティックは実際微塵も忌避も恐怖もなかった。
リステッド家の人間は緊急事態であれあるほど、頼りになるのを知っているからだ。
ケイト、ジェリドは騎士のホンスに相乗りして向かうことになった。
サラティスは小型の獣牽車で現場まで向かう。
作品へのブックマーク、評価等誠にありがとうございます。
宜しければまだしてないという方はブクマ、評価是非お願い致します。
いくつか質問を頂きましたので、活動報告にて返信を公開しました。




