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宿屋の娘は聖女と呼ばれ転生す  作者: 紅羽夜


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第63話「あついなつ」

 リステッド領に夏がやってきた。

 夏は暑い。

 サラティスは実感したことないが、リステッドの夏は国内でも一番マシだそうだ。

 他と比べてマシかもしれないが、現実問題今暑いのである。

 だが、嬉しいことばかり続きでサラティスの機嫌は上々だ。

 ワイルボロルの肉、肉料理は予想を上回る好評であった。

 王都でも大流行し、専門店を立てる計画もちらほら上がっているとのこと。

 領内でもワイルボロルの扱いも増え、ワイルボロル専門の牧場も誕生した。

 初めは大量生産ができてしまうので、供給過多を懸念し制限しようとも考えた。

 王宮から国外への輸出の打診が届いたのだ。

 輸出専用と分けるので、増えても領内にはそれほど、影響がない判断であった。

 確定ではないが、今年の税収は黒字になる見込であった。

 そして、もう一つがササモである。

 屋敷の庭に植えたササモが二度目の豆をつけた。

 孤児院との共同事業も順調に進んでおり、植え育てている最中であった。

 アレシアの協力の元、菓子作りの方も順調に進んでいる。

 大量生産が可能になる頃には、新しいお菓子を売ることができそうである。

 そして、暫く家を空けていたジェリドが帰ってくるのだ。

 学園が夏季の休みになるため一ヶ月ほどだが一緒にいられる。

 さらにはケイトが一週間ほど屋敷にお泊りする予定もある。

 また三人でいろいろ遊べるのだ。

 それから、フィーナとシェリーから手紙が来た。

 一通は手紙というより、通告の方が適切だが。

 フィーナからは日常の話、魔術の話などやりとりしている。

 シェリーからは何故か王族に魔術を教えることになったこと。

 少しばかり久しぶりに会って話したいから行くからと書いてあった。

 文面から絶対文句を言われそうだが。


「夏季休暇のため、戻って参りました」

「お帰りなさい、ジェリド」

「あ、お兄様大きくなってますね」


 ジェリドは盛大に迎えられた。

 仕事を中断してまでセクドもやってきた。

 ジェリドは学園生活中に身長が十セルほど伸びたそうだ。

 サラティスからすればすごい大きく見えた。

 その日は家族水入らずでジェリドの学園での話を聞いた。

 それから数日後ケイトが泊まりにやってきた。


「サラ、体は大丈夫なのか?」

「元気ですよ」


 ジェリドはセクドから不在の間に起きたことを聞いたらしい。


「なぁ、ケイトと一緒にサラも剣やったらどうだ?」

「遠慮しときます」


 自身が剣を振るうことに興味がない。

 なにより、魔術を使った方が強いし早い。


「よし、ケイト剣の練習しよう」

「は、はい」


 三人は庭に向かった。


「あ、そうだ、お兄様。剣はやらないですが、訓練はお手伝いできますよ」

「そうなのか?」

「はい」


 サラティスは自信満々に答える。


「ケイ、やってみましょう」

「う、うん」

「行きます」


 サラティスは指を鳴らす。

 サラティスの周りに水球が十個ほど現れた。

 ジェリドは驚いた。

 ジェリドは学園に通い、ようやくシェリーの驚きを理解できるようになっていた。

 クラスの魔術の苦手な子は、水球を一つ出すのも苦労していた。

 それを十個同時。しかも、無詠唱でだ。

 この時点でクラスの誰よりもサラティスの方が上である。

 だが、ジェリドは慣れてしまっていたため、サラティスだしと納得していた。


「や、は、たぁ」


 ケイトは掛け声で剣を振る。

 剣を振りながら、飛んでくる水球を躱す。


「おお、何だそれ、すごいな」


 ジェリドは興奮した様子でケイトの動きを見る。


「サラ、頼んだ」

「了解なのです」

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