第61話「バハーイの店」
「あ、雑貨屋に寄ってみたいです」
「よし、寄ろうか」
『雑貨屋バハーイの店』
木目調の装飾が特徴的な雑貨屋に入った。
文房具、靴下などの小物な服装品、一般的な魔術書、子供向けの玩具など幅広い商品が売られているようだ。
「いらっしゃい。お、貴族のお方かな?」
「一応。お構いなく」
サラティスは店主を見て驚いた。
男性だが、背は低く大人の女性の平均身長くらいだろうか。
そして、長年蓄えたであろう髭。
白い髭はまるで顎から生える絨毯である。
首に幾重にも巻きつけているように見える。
背は低いが、腕や足は丸太のように太く、サラティスの倍以上の太さである。
「ご主人、娘は初めて王都に来るものでね。気に触ったら申し訳ない」
「お嬢さん、魔族を見るのは初めてかな?」
そう、店主は人間ではなく魔族だったのだ。
そしてその魔族はサラティスもよく知っている。
タヌルーディ族だ。
タヌルーディ族は見た目も身体構造も人間とさほど変わらない。
人間よりは背が小さく、筋肉量が多い。
洞窟や鉱山内に住んでいることが多い。
人間とほぼ変わらないのだが、唯一乖離しているのは歯である。
タヌルーディ族は人間と同様な食生活であるが、魔石や鉱石も食す。
魔石や鉱石を噛み砕けるほど、頑丈な歯なのだ。
魔石を食べることで、魔力を接種することができる。
髭の一本一本に魔力が流れており、水分をよく吸収する。
洞窟など湿気を吸収し住みやすくするために進化したと言われている。
因みにたっぷりと水分を吸収した髭はきらきらと暗闇で光る。
寿命は大体百年前後と人間よりは少し長い。
「いいえ。綺麗なお髭だと思って」
「おおお、嬉しいです」
女性から髭は余り印象はよろしくなく、小さい子供だと怖がられたりなど多々ある。
「この髭の良さに気づいてもらえるとは。お嬢さんは素晴らしい目利きですね」
髭が綺麗なのではなく、きらきら光ってることに対して綺麗だと言ったのでは?と思ったが、そこで否定するのも可哀想なのでセクドは黙っていた。
「家族へのお土産を探しているんですが、何かおすすめはありますか?」
「家族ですか。因みに家族の誰宛でしょうか?」
「お母様と、三歳年上のお兄様と、今年生まれた赤ちゃんの三つです」
「なるほど。少々お待ちくださいな」
鼻歌を謡いながら店主は店の中を移動する。
しばらくして、いくつかの商品を持ってきた。
「まず、お母様にはこれなんてどうですかな?」
出されたのは筆だった。
筆といっても絵を描くものではなく、化粧に使うものだ。
「こちらは化粧筆で、持ち手の木はキルトトから、毛はヒュバールのもの。値段は一万フェルです」
「何が良いんですか?」
「まずは肌に優しいですね。それに、ヒュバールの毛のみを使用しているので長持ちします」
「なるほど、ではそちらを一つ」
「ありがとうございます。次はお兄様にはこちら」
出されたのはベルトだ。
「うーん。お兄様は今学園に通っているので、もっと別のはないですか?」
学園には制服があるので不要である。
「おっと、それは失礼しました。では、こちらはどうですかな?」
小さい丸い缶を出してきた。
「これは手荒れに効く薬ですね。魔術専攻していなくても、武術の授業で武器を使うでしょうから、おすすめです。値段は千二百フェルですが、おまけして千フェルでいいですよ」
「本当ですか?なら、そちらくださいな」
「ありがとうございます。赤ちゃんには断然これですね」
涎掛けであった。
「ノグラトンの皮で作った涎掛けですね。吸水性はばっちり。週に一度火の近くで熱すれば消毒でき、手洗い不要のお手軽さ。三枚セットで二千五百フェルです」
「買いました」
さっそくサラティスは懐から袋を取りだす。
意味不明な物体の刺繍と、意味不明な物体の刺繍がされている袋だ。
「サラティス、父さんが出すけど」
「だめです。それだと、私じゃなくてお父様のお土産になってしまうじゃないですか」
「う。じゃ、サラティスのために何か買ってあげるよ」
「期待してます」
サラティスはお金を支払い店をでた。




