第55話「到着」
気づけば朝であった。
「おはようございます。サラティス様、お体に異変は?」
「……おはようございます。たぶん、特にないですね。少し眠いのと、お腹がすきました」
「ふふ。畏まりました」
「あれ?お父様は?」
「下にて少々」
「?」
意味深だった。
着替えを済ませ下に降りる。
「すごい量ですね」
朝食が既に並べられていた。
しかし、一つの机に収まりきらずに、三つほど机を占領していた。
「ああ、起きたのかい。サラティス」
外にいたのだろうか、セクドが戻ってきた。
「村を救ってくれたお礼ってすごい、貰ったんだ」
この量の犯人が判明した。
「食べ物だけじゃなくて、もういろいろ貰って獣牽車に入りきるかどうか……」
「皆さん元気のようですね」
サラティスはここまで眠いのに。
「昨日の事は父として、人間としてサラティスを尊敬するよ。誇張抜きで、サラティスがいたから救われた命がたくさんある。本当に良くやったね」
セクドは思いっきりサラティスを抱きしめる。
「それに最後の締めだって領主顔負けだよ」
ハルティックも大きく頷く。
「ひとまず食べたら直ぐに出よう。中で寝てていいからね」
村を出るまで獣牽車に向かって感謝の声が届いた。
夕方になり、街に着くと騎士が待ち構えていた。
報告がララストの領主まで届き、感謝の印として宿を抑えておいてくれたらしい。
豪華絢爛な食事を堪能した。
サラティス個人的には村や、街などのこじんまりした宿の方が好きではあったが。
これはこれで経験したことはないので興味深かった。
サラティス達はその後は何一つ問題が起こることなく、王都に到着した。
「大きいですね」
リステッド領は土地だけは大きいがそれよりも、二倍以上の面積で、人口だって四倍以上である。
人も魔族も多い。
大きい建物も多い。
「アレが王宮なんですね」
国の中枢。
セクドは門の前に立っている騎士に手紙を見せる。
獣牽車が案内され到着したのは王宮の敷地内の別館であった。
ここは来客用の建物とのこと。
暫くして、午後から謁見とのことで、着いてすぐだが準備を始めた。
サラティスは苦手なお化粧という拷問が待っている。
先にドレスを着用、髪を整えつつ、化粧をされる。
因みに手を動かすのはハルティックでサラティスはじっとして耐えるだけだ。
この耐えが大変なのだが。
貴族の女性はよく我慢できるなと常々思う。
広大で上質な建物内を移動し大きな謁見の間に辿り着く。
大人二人の力により大きなドアが開かれる。
荘厳で優雅な椅子に最上級の服に身を包んだ老人が座っていた。
姿は老人だが、姿勢が良く、細身だがきっちりと筋肉がついている。
横には大柄な男性が立っていた。
そちらの男性はセクドと同じくらいか少し上くらいの見た目だ。
当然すぎることだが、二人を初めて見るが、知識として知っている。
セクドが口上を述べ、それに合わせて二人は跪く。
「急に呼びつけてすまんな。楽にしていいぞ。内密で話すこともあるから、お前らも外で待ってろ」
護衛の騎士達が全員謁見の間を出た。そしてドアがゆっくりと閉められる。
サグリナ王国、国王ナクロス・ロスダル・ダルサグ・サグリナ。
と、ヴァルザ・ロスダル・ダルサグ王子。
セクドは顔を上げる。
少し遅れた事情を説明した。
「そうか。御苦労だったな、いきなりで悪いが本題に入ろうかの」
王はぱちんと手を叩く。
「セクド、ヴァルザ、よいと言うまで退室しておれ」
「はい?」
セクドは困惑の声を上げる。
「お言葉ですが、サラティスはまだ五歳です。作法礼儀も十分とは……」
「構わん、確かに王命で呼んだが公式の場ではない。理解るだろ?」
サラティスにはさっぱり分らない。
「サラティス、くれぐれも不敬のないようにね」
セクドとヴァルザは部屋を出た。
サラティスは現状を把握できない。
何が起きているのか。
正直な話、自分はただ傍にいるだけかと思っていた。
まさか、直接対話することになるとは。




