第409話「ピピピ」
サラティスは二階層に戻ってきた。
ここは平原エリアだが、草だけが生えた空間が広がってる訳ではない。
サラティスは今、三階層へと降りる出入り口を背にしており、距離的に視界には映らないが、視線の遥か先には地上へと戻る出入口がある。
サラティスの左側方面は高さがおおよそ揃っている、木々が生えている。
きっとあの林の中にも多数魔獣が生息しているだろう。
それだけではない。
サラティスから見て左側からくねくねと曲がり、右奥へ曲がる小川があり、水がきっちりと流れている。
どうやって水の管理をしているのか不思議である。
小川はサラティスのくるぶしが浸かる程度と浅く、水も川底の砂利が目視できる程度には澄んでいる。
川幅もサラティスが両手を広げた状態で、五、六人分くらいの幅で学生、子供であっても溺れるようなことは起きまい。
「あ、ピピピですね」
木々の方からピピピが飛んできた。
ピピピは川辺に降り、嘴を水の中に突き刺す。
どうやら水を飲んでいるようだ。
ピピピは小さな小さな飛行型の魔獣である。
体長は二十セル未満。
時期によって体毛の色が変わり、緑色の時と茶色と装いを変える。
嘴の上に鼻の穴が二つあり、さらにその上に二つ穴が空いている。
正面から見るとなんとも独特で愛くるしい見た目をしている。
鼻の穴ではない、その穴からは半透明な液体がぷしゅっと吹き出すことができる。
その液体を浴びせ、空気を裂くように甲高く『ピー』と鳴く。
すると液体が発火する。
人間の大人の指程の大きさの火ではあるが、顔で発火すると大怪我になることだってある。
ピピピは襲われたりしなかぎり、自ら襲ってくるような性格ではないため危険度は限りなく低い。
ピピピはどこにで生息している魔獣であり、もちろん食べたことがある。
労力の割に食べる所も少ないし、味もいまいちであり食料に困りでもしない限り獲ろうとは思わない。
川辺にやってくるピピピを狙っている魔術師を見かけた。
恐らく、魔術の練習のためであろう。
さすがにこの場は開けた視界のため、誤って巻き込まれるなんてことはない。
サラティスは木々の方に進んだ。
林の中は適度に間隔が保たれているため、全体的に明るく気分転換に歩いて気を紛らわすのに丁度よい雰囲気だ。
『ビュー』
風が吹く音が耳を撫でる。
「デュービイーがいるとは珍しいですね」
デュービイーの群れが慌てた様子で、サラティスの眼前を通過していった。
デュービイーは不可思議な魔獣で、見た目を表すのであれば、雲に花が咲いてぷかぷか浮いているである。
雲は正体不明の半透明で少し黄色いガスのようなものが魔力によってデュービイーの魔石の周りを覆っている。




