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宿屋の娘は聖女と呼ばれ転生す  作者: 紅羽夜


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403/442

第403話「ニュラシュ」

「そうだ、サラティスちゃんは今日は何しここに?」


 人懐っこい笑顔でフェナクが聞く。

 答えようとして一瞬答えに詰まる。


「……四学期が終わって二週間の休みなでして。せっかく許可を頂いたので一度来てみようかなと」


 サラティスが一瞬詰まったのはある意味感心したからだであった。

 フェナクの問いに自然に、反射的に答えようとした。

 ナメと剣のようだ。

 剣のような厳しさがオドゥゴルグ。

 ナメのように甘く優しくするのがフェナク。

 サラティスにはやましいことなどないので、素直に目的を言っていいが、これが敵であるのなら。

 情報を自然に集めることができるので、要注意人物である。


「そっか……」

「何か問題なのですか?」

「とんでもない、真面目で偉いよ。でも、その許可証は一番下まで行くことができる。つまりサラティスちゃんが下に行くというのなら、止めることができない」


 人当たりの優しい笑みに少しだけ真面目の火が灯る。


「この塔は全て自己責任だよ。例え王族であってもそれは変らない。残念ながら魔獣は身分なんて配慮してくれないよ」

「ありがとうございます。様子見なのでひとまず、平原階層までにするつもりですよ」

「……そっか。じゃせっかくだから案内してあげるよ」

「おい」

「緊急じゃないから時間には余裕あるでしょ。後でオドニイに追いつけば問題ないでしょ」

「……なら俺も同伴するぞ」

「へ?」

「他所の貴族の娘に無礼なことをして、後に追及されても面倒だからな」

「……というわけだから、よろしくね」

「へ?」


 どうやら二人が付き添ってくれることになった。

 もしかしたら自分がリステッド家の娘で、初めて逆塔に挑むから付き添いしてくれるのかもしれない。


「既に聞いたかもしれないけど、今いるここが二階層。二階層から五階層までが平原になってるんだ。因みに出現……」

「わー待ってください」


 わしゃわしゃと、フェナクの言葉を遮る。


「この階層なら危険もないのですよね?」

「そうだね」

「なので、自分の目で見たいなと。先に知ってしまうともったいないです」


 フェナクはきょとんしたが、笑い出した。


「ではお嬢さん、僕達は空気だと思ってお好きにどうぞ」


 サラティスは歩きながら周囲を観察する。


「あ、ニュラシュです。可愛いですね」

 ニュラシュは体長が十から三十セル程の胴長短足、胴と同じくらいのもふふもふの尻尾が特徴的な魔獣である。

 尻尾の毛は魔力により一時的に硬化させることができ、その尻尾で土を掘り穴を空け、そこを巣にする。

 雑食で群れで生活する。自分より少し大きい魔獣なども襲い、捕食することもある。

 ニュラシュは立ち上がり、草に紛れサラティスを観察する。

 恐らくこのまま近づけば勝手にどこかに逃げるだろう。

 ニュラシュを食べたことはあるが、量が取れないのと美味しくはない。

 毛皮を利用することが主流である。

 勿論今回は魔獣と戦うつもりはない。


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