第378話「圧縮」
「サラ、圧縮って何よ?」
「フィーナ君。授業で習う内容ではないが、皆無意識のうちに利用しているのだ。例えば、この先学習予定の火魔術の炎焙。火の強さ、火力は魔力の量で調整する。これは意識して行うことだ。だが、その火が形を保っているは魔力で形作っているからにほかならない」
フィーナとエステリアはきょとんとした顔でチュースを見つめる。
「見たまえ」
チュースの手元に小さな炎が灯される。
「魔力で制御しないとこうだ」
まるで地に固まっている落ち葉が風でまきあげられ、無造作に周囲にまき散らされたかのように、火が不細工な形に周囲に飛び散り、消えた。
「そうだな。もう少し噛み砕くと、水球も同じである。あの水が球体を保っているのは魔力で制御しているからだろう?」
「あ、そっか」
「確かに魔力の調整が下手だと水球が歪になりますね」
二人はそれぞれ自身の脳内に散らばる情報と、紐づけることができ実感できた。
「普通の水球と圧縮した水球があるとしよう。同じ大きさであっても圧縮した水球の方が水量が多い」
「……つまり、攻撃魔術は圧縮した方が威力が出るってことですか?」
「正解だ、フィーナ君。二人は今見たので理解できると思うが、決して授業で真似したりしないように。成功しても威力のせいで事故に繋がる」
「チュース先生。圧縮に失敗したらどうなるのでしょうか?」
「魔力操作が拙いと水球は綺麗な形を留めておけず……」
チュースの手元に水球が出現する。
「魔術は失敗となり、消滅する」
水球はでこぼこと無造作に形を変え、地にぼたぼたと落ち溶け込んだ。
「これが圧縮に失敗するとどうなるか……」
チュースは離れた所に水球を出した。
『ボンッ』
「うわ」
「ひゃ」
先程の水球より小さい水球はまるで親を探す子のように震えていたが、突如大きな音を立て破裂した。
破裂の勢いは凄まじく、かなりの距離に水が飛び散った。
「意識した圧縮は魔術の制御が難しい上、暴発させれば被害が甚大になる」
「あわわ……」
「確かにこれは危険ね。……てことはサラの魔術の威力が強いのって普段から圧縮してるからってこと?」
「そうだ。だが慣れた者であれば多少の圧縮は無意識で行うものだ。サラティス君に見栄がなければの話しではあるがな」
「フィーナ、普段のは完全に無意識ですよ。圧縮しようと、頑張ると魔力消費が増えるので」
「サラティス君、すぐさま協会に行って魔術を登録してきたまえ」
「あー……」
「どうしたのだ?」
「今回は登録しないでおこうかと」
「何故だ?」
ぴくり。
チュースの眉が微かに動く。




