第37話「五歳、そして誕生」
サラティスは五歳の誕生日を迎え、ジェリドがもうじき学園に入学する頃、五年ぶりにリステッド家は慌ただしかった。
当主であるセクド・ルワーナ・リステッドは閉められた扉の前で椅子から立ち上がったり、廊下を歩いたりと落ち着きがなかった。
何故なら、最愛の妻アレシア・ガウェル・リステッドの出産中であるからだ。
ジェリド、サラティスは自室にいた。
「失礼します」
「どうぞ」
ドアがノックされハルティックがサラティスの私室に入ってきた。
「念のためですが、サラティス様はお部屋でお待ちくださいね」
「分かってます」
「本当にですか?後でこっそり抜け出してとか、何かあれば回復魔術でなどはダメですからね」
「もう、さすがに大人しくしてます。赤ちゃんのためだもの」
出産の場に男が同席しているのは宜しくないが、男だけではなく子供もである。
赤ん坊は生まれた直後はとても弱い。
子供は同じく病気に掛かりやすい。
子供が赤ん坊に病をうつすことを防ぐために生まれてから一日は接触を避けるのが一般常識であった。
サラティスも医者同様に知識があり理解しているため、本当はすぐにでも見たいが我慢しているのだ。
「安心しました。私は女だから同席しても大丈夫です。なんて言いかねないので」
「子供じゃなければ言ってました」
「慌ただしいかもしれませんが、今日はしっかりと寝てくださいね」
「分かってます。お兄様は?」
「ジェリド様は落ちついてらっしゃるようです、これで二度目ですし」
「……あ、私か」
「はい」
「お父様は?」
「同じように、部屋の前でお待ちです」
領主らしからなる様子であることは名誉のために秘す。
「遅くなかったら無事なこと、性別くらいは教えてもらえる?」
「それは勿論でございます」
「ハルティック」
部屋を出ようとしたハルティックを呼び止める。
「何でございましょう」
「当分家の中はあわただしいと、思います。申し訳ないけど力をかしてくれるかしら?」
「そのために私が、私達がおります。そして何より、金銭、条件よりもリステッド家の皆様全員を敬愛しております。なので、お任せください」
頭を下げたのでサラティスには見えなかったがハルティックは穏やかで力強い目で笑っていた。
母子共に健康で、気になる性別は男の子だった。
「名前はロザリアだ」
セクドは高らかに宣言した。
余談だが、この時レザクターも密かに涙を浮かべていた。
何もないのが一番だが、ジェリドに何かあればリステッド家は終わりの状況であった。
しかし、それがロザリアの誕生により悪い言い方だが、保険ができた。
仕える立場として家の存続は大切だ。
そして、暫くしてジェリドは学園に入学し寮生活を始めたので、家を離れた。
サラティスは弟のロザリアを溺愛し、お世話のお手伝いもすすんで行っていた。
だが、五歳になりサラティスもやることが増え今までと生活が少しずつ変わっていった。




