第35話「一緒にお菓子作り」
「ごきげんよう、ケイ」
「ごきげんよう、サラちゃん」
ケイトが久しぶりに遊びにやってきた。
今日はケイトと一緒にお菓子作りをする予定だ。
二人は遊ぶ内容の希望を交互に出しあい遊んでいる。
サラティスの日ならサラティスがしたい遊び。
庭で追いかけっこしたりなど。
前回はサラティスの日であり、今日はケイトの日であった。
ケイトは昔サラティスとお菓子作りを経験し、興味を持ったようだ。
「ごきげんよう、ダヴァン。ずいぶん、ひさしぶりなきがします」
「そりゃーサラティス様のせいであちこち飛び回ってるからな」
ダヴァンはワイルボロルの件で調理の責任者として飛び回っていた。
「ダヴァンさん、きょうはよろしくおねがいします」
「あいよ」
最初は怖がられたものの、お菓子作りの時は必ず一緒にいるので今は慣れたものだ。
二人は大分手慣れたものなので、最近は見ているだけなことが多い。
「そういえば、さいきんぼくも、けんをならいはじめたんだ」
「へー、それはたいへんですね。でもまた、どうして?」
「おとうさんが、おとこなら、けんでたたかえないと、はずかしいって」
「あらー」
単純な性別的な肉体差を考えれば基本的には近接戦闘、格闘は男性の方が筋肉量的には有利である。
しかしそれだけで、恥ずかしいかどうかは性別は関係ないとはサラティスは思うが、他人の価値観なので否定するほどではないと言葉を留めた。
「それだけですか?」
サラティスと違いケイトは体を動かすことは比較的苦手な方であった。
何より一番付き合いのある家族、使用人以外の相手がケイトである。
ケイトの態度から父から言われた以外の理由がありそうだなと感じた。
「それにサラちゃんを、まもれるようになりたいなって」
「もう……だめですよケイ」
「ええ、なんで?」
何だこれ。
菓子作りなので甘い匂いがするが、何故か今日は特段甘い匂いがするなーと明後日の方向を見るダヴァン。
「なにごとも、きそからですよ。ケイのきもちはうれしいですが、まずわたしじゃなくて、じぶんをまもれるように、なってくださいね」
ケイトには申し訳ないが、ケイトに守られるような事態は訪れないと思われる。
「そうだ、こんどケイのおうちにいってもよろしいかしら?」
「サラティス様それは、まずセクド様に許可貰ってからの話だな」
一応爵位が下の相手、かつ可愛い幼い娘の遠出は危ないからとサラティスが行くことはおあずけされていた。
「じゃ、ぼくもきいてみるね」
「そういえば、おにいさまももうじき、がくえんにいっちゃうのよね」
「そうなんだ。さびしくなるね」
「そうなのよー。ケイはもう、しょうらいのゆめって、きまった?」
ケイトは既にサラティスから人生の目標を聞いていた。
その時ケイトはそんなこと考えたこともなかったため、答えることはできなかった。
「きぞくとして、りっぱなつとめをはたす……かな」
「もう、だからそれはまた、ケイのおとうさまに、いわれたことでしょ?」
四歳の男の子が義務に心から目覚めるとは考え難い。
「……どうして、サラちゃんはそんなにわかっちゃうの?」
今のはサラティスでなくとも分るだろう。
「ケイのことなんて、なんでもおみとおしです」
「すごいなー。まだきまってないよ」
領地を継がない、領地を持っていない貴族は将来を自ら動き、決めねばならない。
重責がない分、自由度が高いが生活に困窮する可能性だってある。
ケイトはこのまま婚約が破棄されず結婚することになれば、リステッド領で暮らすことになる。
リステッド領の騎士になるか、役人になりサラティスと共にリステッド領に貢献するのが一般的な未来だろう。
だがサラティスは金に困ることがなければ、ケイトが何を選択しても応援するつもりであった。
「ならがくえんにいくまでには、しぼっておいたほうがいいかもですね」
「サラちゃんはがくえんに、なんさいになったらいくの?」
「……ダヴァンわかります?」
ジェリドは八歳で行く予定だが、それは領主の跡継ぎとしての事情があってのこと。
「さぁ?だけど、普通七歳で行くんじゃないですかね?」
ダヴァンが思うのは正直な話サラティスの場合、学園は社会性を学び、交流し縁を築く場になりそうだ。
既に大人を凌駕する知識なのだ。今更学園で学ぶことなどそうそうないだろう。
「よかった。そしたら、ぼくといっしょだ」
「ケイ、がくえんにはいったら、たくさんともだちつくるんですよ?」
ケイトは少し人見知りの気があるなと思っている。
「う、うん。がんばるよ」
貴族として交流も大事な責務だ。
なにやら祖母と孫の会話のような気もするなーと思うも口に出さずにダヴァンは明後日の方向を向く。
「おいしいです!」
ケイト作のお菓子を頬張り、サラティスは爛漫に笑う。
「確かに、ケイト様この出来なら将来菓子作りでもやってけるかもな」
ダヴァンにも褒められ、ケイトは少し恥ずかしそうに喜んだ。




