第303話「目が……」
シェリーが言っていた通り、サラティスは驚いた。
建物の広さも、人の多さもリステッドとは桁違いである。
受付でチュースが用件を伝えると、職員やってきて、四階の一番奥の部屋に案内した。
部屋の中は広く、言われたままに四人はソファーに腰を下ろす。
扉の横にはフィーナの護衛が佇む。
この部屋は見る限り、広さや家具、調度品の質からして、貴族相手のために用意されているのかもしれない。
しばらくすると扉が開いた。
「これはこれは。お待たせしてしまい、申し訳ありません」
「!」
「!!」
すらっとした中年男性が入ってきた。
頭部には毛髪がなく、綺麗な素肌が光を反射する。
フィーナとエステリアは驚愕を零す。
それは彼の後ろ姿を目にしたからだ。
「おっと、これは失礼致しました」
男性はすぐさま振り返る。
「め、目が……」
エステリアが言葉を漏らす。
そう、男性の後頭部には、眼球が二つ存在していた。
子供の落書きなどではなく、見るからに本物の目である。
「私は魔人でして、慣れないお嬢様方を怖がらせてしまいましたか。因みに先に言っておきますと、後ろの目も普通に見えています」
「わざわざ、貴方が出て来る案件でしょうか?学生が申請しただけなのですが」
「チュース君がわざわざ来たのですから当然でしょう。お嬢様方、私は魔術協会本部副部長のウォールダと申します。生憎部長は仕事で国を出ていましてね。私が本日対応させていただきます」
「もしかして、王女である私が申請するから、かしら?」
「それもありますね。平の職員ですと権力や肩書で公正な目で見れない恐れもあるので」
「……一応説明させて頂くが、彼女達は学園の学生であり、フィーナ・ロスダル・ダルサグとエステリア・ノウヴァ。この二名が魔術協会への所属申請に参った」
「む、二名ですか。そちらのお嬢様はしなくていいのですかな?」
「彼女はサラティス・ルワーナ・リステッド。既に会員なので不要です」
「おや、一学年ですよね?」
「はい、そうです」
「失礼ですが、どちらで?」
「あ、うちの領……リステッドの支部で登録しました」
「なるほど。通常ということは審査を経て?」
「はい。回復魔術を見て貰いました」
「それで合格と。将来が楽しみですね」
「二人の素性に関してはこちらを」
チュースは封筒を渡す。
「これは差別などではないと宣言します。エステリアさん、貴方はこの国の人間でしょうか?」
「はい。生まれも育ちもカネカノノノです」
カネカノノノは国内の南西の領地である。
位置でいうとザバラットの下で.ある。
サグリナ王国の最南領は三つある。
三つの領がほぼ横ならびになっている。
西からカネカノノノ、ウーシュ、エンダルシアだ。




