第300話「余計なこと」
「ドグレダさんが一方的に攻めているわね。ケイトさん、負けちゃうんじゃない?」
「ケイはまだ平気ですよ。これくらいでへこたれたりしません。でも、このまま反撃できないと、体力的に厳しいかなと」
サラティスはケイトをよく知っている。
ケイトは攻めより守り、受けて捌くを重視し特訓してきたことを。
それはサラティスの助言の賜物であった。
将来、ケイトが魔獣相手以外に剣を振るような事態が訪れないことを願っている。
だが一度一緒に誘拐された身である。
何かあった時どう対処するかは考えていた。
不意打ちでもない限り、サラティスの魔術で人間相手なら対処できる自信があった。
なので、ケイトに求めるのは自らの身の安全と、もしもの時間稼ぎ。
初めのうちはケイトは僕が守るよと言っていたが、次第とサラティスと一緒に戦うよへと変わっていった。
それにケイトの父ガルヴァにさんざん、アピールしてきた。
ケイトに必要なのは守りの剣であると。
魔獣を相手にする経験を積めば、自然と攻めの剣は覚えれられると。
サラティスがそういうのならと、ケイトの指導方針が変わっていった。
「あ、今のおしかったわね」
「ドグレダさんの鍛え方が上手のようですね」
針の穴に糸を通すかのように、ケイトが猛攻の雨あられの中、一瞬を狙い攻めに転じた。
剣先が脇腹を霞めたが、直撃はせず、勝敗が決まる程のダメージにはならなかった。
ケイトを応援しているが、サラティスは冷静に分析しており、余計なことに気付いてしまった。
ジェリドやセクドと比べれば二人とも同じく、将来に期待である。
だが、その中で二人を比べるのであれば、技術的面に関してドグレダの方が上のようだ。
恐らく、日ごろの訓練で攻めを重点的に行っているのが察せられる剣の運びをしていた。
その中でまだ勝負が決着してないのは、慣れの問題であろう。
ケイトは基本防戦している。防戦一方の相手と戦う経験が不足しており、攻め切れていない。
だがそれよりもまずいのがケイトである。
技術面においてややドグレダの上であるが、なんとか凌げている。
だが二人の間において、かけ離れているものがある。
それは体力である。
成長期なので仕方ないが、ドグレダの方が体格が大きく、鍛えているので体力があるだろう。
受ける、捌くには技術が必要だが、それ以外に必要なものがある。
長けた人物であれば、それらを最小限の労力でこなす。
だがケイトはその域には到達してない。
必死に防いでいる状況で余裕はない。
徐々に徐々に動きが鈍くなっていく。
つまり体力が減ってきているのだ。
体力不足から捌く動作が緩慢になり、それを補うためにより大きな動作を行い、さらに体力が減る。
ドグレダもそれに気付いたようで、急所を攻め込む一撃を止め、体力を削る大振りな攻撃に変えた。
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