第298話「言葉の矢」
「次の方」
「実験では手動……人力で魔術行使により、声を運んでいますが、自動化については考えていらっしゃいますか?」
「はい。雷球を動かして指定した地点に、声を届けるだけでしたら、魔術式を改良して、魔術具にして運用する、どちらでも可能ですね」
「そ、それはどうやってですか?」
周囲がざわつく。
サラティス達の発表内容は革新的である。
子供ならではの柔軟な発想によって生まれ、賞賛に値する。
言葉を返せば偶然の発見。
だが、発見だけでなく改良まで視野にあるというと話は変わってくる。
学生の発表ではなく、普段協会内で議論されるレベルとなんら遜色ない。
「いろいろと方法はあると思いますが、魔術具に草刈り機というものがあります。刈った草を吐き出す機構がついているのですが、あれ使えば直ぐにできるかなと」
「草刈り機……最近出てきた、あの庭の手入れをするのに使えるという……?」
どうやら質問者にはあまり、ぴんときてないようだ。
「今見学している方々は基本的に魔術式に造詣の深い者ばかりだ。魔術式に詳しい反面、異なる分野の魔術具の知識はそこまで明るくない。彼のようなのが一般的で両方に知見がある人物はいることはいるが、数は多くないだろうな」
「そ、そうなんですね」
隣にいるチュースが小声でサラティスに告げる。
サラティスは草刈り機の説明を軽く行った。
杭に使われている魔術を使えば、簡単にできると。
その説明で皆ようやく理解の段に足を運び、場の熱気はさらに高まった。
次々と手が上がる。
その四方八方から投げかけられる、質問に対してサラティスが答えた。
仕方のないことではあるが、フィーナとエステリアは質問と答えを全て理解することは叶わなかった。
十人ほど答えを返し終え、そこでチュースが質問を打ち切った。
参加者から不満の声があがる。
「参加者の方々、これは協会で行われる審査会ではない。あくまで魔術師としては幼すぎる……学生の発表会であり、学園の教育課程の一つということを忘れないで頂きたい。侃侃諤諤な質疑応答になったが、ご覧の通り彼女は学生、しかも入学したての一学年である。不満を上げるより、おしみのない賞賛でしめくくるのがふさわしいと思うのだが、いかがだだろう?」
チュースの声に参加者達がはっとし不満を抱きしめた。
『パチパチパチ』
拍手がホールに響き渡る。
「明日以降は展示のみとなるので、先の教室に展示物を移動させる予定だ。今日は大役を無事こなしたのだ。三人は節度をもって、各自自由に学祭の見学を行うように」
初めての発表会は大成功であった。




