第296話「反面教師」
「はい。別々の部屋で拡散魔術を使用して声を届ける。この状況って例えば、王宮で王のお言葉を部屋に入りきれなかった方に届けるとか、かなり限定的な気がするんですよね。だったら魔術具にしてお互いが声を送りあえた方がいいなーって」
「魔術具にするのは、単に魔術式を弄るのとは別に、専門的知識と魔術具に落とし込むセンスが要求されるが?」
「あ、魔術具の専門家の方と知りあいなので、その方にその時は相談しようかなと。ワイビーさんって方なのですが」
「ワイビーだと?」
「ワイビーさんですか?」
チュースの顔が険しくなる。
エステリアの顔が輝く。
「サラちゃん。ワイビーさんはもしや、美髪器を作った方ですよね?」
「はい。ご存じですか」
「当然ですよ。今一番有名な方ですからね」
「いいか諸君。技師の技術に憧れるのは構わない。だが、決して人間性に目を向けてはならない。特に奴のような人物は猶更にな」
この様子だとチュースはワイビーの名以外も知っていそうだ。
「チュース先生はワイビーさんをご存じなんですか?」
「多少な。奴が如何に勤勉な学生に悪影響を与えるかを理解している」
「サラ、ワイビーさんって人は悪い人なの?」
「そんことないですよ。独特な方ですが、悪い人ではないはず……」
「善か悪かでの話ではない。奴は……一部の天才と呼ばれる人間は思考回路が極端な場合が多い。自身の興味のある分野の専門性は目を見張るものがある。だが、興味のない分野は一般常識ですら欠如している」
「あー」
理解した。
「奴は王の名を知らなかった」
「うそ」
これにはフィーナも驚く。
「分かる気がします」
「サラ?」
「あ、そっちじゃなくてワイビーさんらしいなって」
「ああ、なるほどね」
「学生のうちは満遍なくさまざまな分野の知識に触れるべきである。学園の意義に反する奴を見習わないで貰いたい。反面教師とするように」
三人は寮に戻った。
それ以降の授業は学園祭の準備などが入り、生徒の空気間が普段のそれとは異なっていった。
三人の研究内容は申請が通り、発表会に出せることが決まった。
展示用の大きな紙にチュースに指摘されたことを意識しながら記録を写していく。
因みに学祭だが、一週間開催される。
その間は授業がない。
学祭への来訪者は王宮関係者や、魔術協会関係者のみである。
親だからという理由のみでは参加はできないとのこと。
警備や日程調整の都合、学祭は親に見せる成果物ではないからなどの、いくつかの理由からそういう決まりになっていた。
サラティス達が参加する、発表会は盛り上がるのは初日だそうだ。
武術、魔術の大会では決勝戦が学祭の最終日に行われ、初日は一回戦が行われる。
なので最終日は、そちらがメインとなり、発表会の方にはあまり人がこないそうだ。




