第27話「歳の重ね方」
会談を終え、一度屋敷に戻った。
屋敷の部屋に五人は集い今日の予定について話し合う。
「まず、サラティス様。感服いたしました」
「じぶんのためですから」
「ささ、サラティス様お部屋にどうぞ」
今日はこの後、牧場に行き乳しぼりなど体験する。
スカートのままでは不都合なためパンツに着替える必要があった。
「あ、レザクターちょっとへやにきてください」
「かしこまりました。ユリス少し席を外します」
「俺は試食会に備えて先出るぜ」
昼にはお肉が振る舞われるとのこと。
三人は私室に向かう。
「ハルティック、しばらくせきをはずしてください」
「しかし、サラティス様……宜しいのですか?」
「なにかあります?」
「ここは私室ですよ?使用人とはいえ、男性であるレザクター様と二人きりになるのは好ましくありませんよ?」
「こんかいは、わたしたちだけですから。つぎからきをつけます」
ハルティックはそのまま退室した。
「お話とは何でございましょうか?」
「ユリスのことです」
「不甲斐ない弟子で申し訳ありあせん。サラティス様から見てどうでしょうか?」
「レザクターのおでしさんなので、ゆうしゅうなのでしょ?」
「有能ではありますが、こういった場はまだまだ不慣れ。成長の機会と考えましたがいやはや……」
「それはレザクターがわるいです」
「私の教育力不足ですな」
「ちがいます」
サラティスは静かに否定する。
「ユリスはおそらく、きおくりょくがすぐれているんでしょ?」
「判断基準は如何にして?」
「しごとちゅうめもを、いっさいとってないです。わすれてたらレザクターがなにかいうはず。めもをとるのを、めんどくさがるようなじんぶつなら、でしにとらないとおもいます。ならめもをとらなくてもへいき」
「その通りでございます。彼は一度見たものは忘れない程の記憶力を持っております」
「やはりですか。ならレザクターが、わるいとおもいます」
「……」
「ユリスはいれるのはとくい、だすのはにがて。そして、レザクターあなたは、せつめいしなさすぎなのです。みてまなべは、りかいというどだいがなければ、もろくくずれるものですよ?」
「っ……」
「じゅうようなしょくむです。きびしくそだてるのは、ひつようでしょうし、こえれなければ、せきのあるたちばにはなれないでしょう。しかしユリスはまだこどもです。きびしさをこえるまえに、おれてしまうことだってあるのですよ?レザクターからすれば、へいきであってもユリスはちがう」
「…………」
「なら、きちんとはなすべきです。せつめいをし、りかいさせてあげるべきです。それはあまえだというかもしれませんが、それでせいちょうできるのなら、いいじゃないですか」
「……ふっ、歳を重ねそれを自覚し、自分が昔忌避した先達と同じにはならないと意識がけしてましたが、やはり未来ある後身には同じく写るようで……」
「それじたいが、わるいわけじゃありません。ユリスにはあいしょうがわるいというだけで」
通常であれば、何も知らない子供の説得力はありそうだが実体のない言葉。
しかし、レザクターの隅々まで染み渡っていく。
「レザクターがいたおかげで、いまのおとうさまがあるのです。これからもりょうのため、よろしくおねがいします」
レザクターは跪く。
「ハルティックおねがいがあります」
部屋の外に声をかけるのと同時に音もなく扉が開きやってくる。
「みしようの、めもちょうってあるかしら?」
「……メモならございますが、メモ帳はこの部屋にはありませんね」
「おとうさまのしごとべやには?」
「複数備えがあるかと」
「ひとつもらっても?」
「その程度の備品なら問題ないかと。お持ちします」
ハルティックは数分で戻ってきて所望の物をサラティスに渡す。
「レザクター」
サラティスはレザクターに渡す。
「これをあなたからユリスに」
「よいのですか?」
「もちろんです。ぎょうむのめもとしてじゃなく、かんがえをかくためのめもです。まず、だすのうりょくをきたえてあげるのに、やくだつかと」
レザクターは頭を下げ退出した。
当たり前だが、着替えに同席するはずもない。




