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宿屋の娘は聖女と呼ばれ転生す  作者: 紅羽夜


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第21話「初めてのお小遣い」

 数日後、準備が整った知らせが来た。

 アレシアは視察のことを聞いた時、セクドとは違い開口一番出たのは反対ではなく、注意だった。

 環境が違うからといって夜更かししたり、食事回数を変えたりしないこと。大人の言うことはきちんと聞くことなどを言ってきかせた。

 翌朝、庭に出ると皆準備ができていたようだ。


「サラティス、これを渡しておくよ」


 可愛らしい花の刺繍がされた袋。

 受け取ると中には硬貨が入ってるのが分かった。


「その中には五千フェルほど金貨で入ってるよ。それはお小遣いだから好きに使っていいよ」

「でも……」

「それは正当な報酬さ」

「ほうしゅう?」

「そう。この間魔獣を倒してくれた報酬。だからサラティスの好きに使っていいよ」

「ありがとうございます」

「サラティス様、鞄の中に入れておきましょうか」

「はい、ハルティックおねがいします」


 ハルティックとは女性使用人で今回の同行者の一人である。

 主にサラティスの身の回りのお世話をする予定でだ。

 他にはレザクター、ダヴァン、そしてサラティスの知らない少年だ。

 ダヴァンは視察先で、関係者にワイルボロルのステイルを食べてもらうのに必要なためだ。


「はじめまして、わたしはサラティス・ルワーナ・リステッド。よんさいです」

「は、初めまして。僕……わ、私はユリスです。十六歳です」

「はぁ……作法の勉強し直しですな。サラティス様、彼は私の弟子のユリス。私の職務に同行させます。庶民の出でまだ作法に関して勉強中でして、御不快な気持ちにさせてしまうことがあるかもしれません。その時は容赦なく私に言ってください。彼の今後のためになりますので」

「わかりました。ユリスさん、よろしくおねがいします」

「さ、さんなんて不要です。ユリスと呼んでください」

「さ、時間が惜しいので乗りましょうか」


 乗るとは獣牽車にである。

 獣牽車は移動手段の一つで魔獣に繋いで、魔獣に引いてもらうのだ。

 獣牽車に繋がっているのはホンスと呼ばれる魔獣だ。

 ホンスは人間が乗る、荷物を運ぶ、獣牽車を引かせるために家畜化され、改良を重ねた種だ。

 四足歩行で、体高はおおよそ二百セル程度。大人の男性より若干高い。

 草食で性格は穏やか。

 背中の皮がとても分厚く、伸縮性が高い。脚先は蹄となっており鉄より硬い。

 尾が三本生えており、振り回し風を生むことで熱が溜まりやすく熱くなった背中を冷やす。

 獣牽車は人が乗る用、荷物を乗せる用などいくつか種類がある。

 目の間にあるものは当然人が乗る用だが、貴族向けの獣牽車である。

 中は座席が向かい合う形で六人まで乗れる。

 座席も皮張りで高級さを感じられる。

 同席するのはダヴァンを除いた四人だ。

 ダヴァンは体が大きいため護衛にホンスを借りることになった。

 そして、サラティス一行は屋敷を出た。


「サラティス様、早速ですが今回五つの街を巡ります。ユリス、領地と街、各街の説明できるかね?」

「ま、任せてください」


 ユリスは頷く。


「まずですね。リステッド領は六つの街から構成される領地となります。って師匠、よく考えたら説明もっと簡単にしないとですよね?これ以上どうすればいいでしょうか?」


 サラティスの才を知っているのはあくまで使用人までである。

 レザクターは使用人でありながら、財務の長を勤めている。が、弟子であるユリスは身分としては領主に仕える役人である。 

 レザクターが伝えてないので知らないのであった。


「サラティス様は非凡なるお方だ。君の説明程度難なく理解はできる。サラティス様も理解度が低い箇所、気になった箇所は質問していただけますでしょうか?」

「わかりました」

「なら、続けますね」


 まず、領主の屋敷があり今まさにサラティス達がいる場所、領土内でも北に位置するレニトス。東からルムク、サワランダー、ラパー、ロナティッタ、アイスティア。

 今回はレニトス以外周る。


「ルムクは領で唯一海に面している街です。港があり、リステッド領の食用される水生魔獣は基本ここで捕られたものですね」

「すいせいまじゅう……」


 家だと焼いたものしか食べたことないが、捕ってすぐだと生で食べられる種もあるそうだ。

 街の三分の二の領民は漁師、漁業関連に従事している。


「サワランダーは商業の街ですね」


 お店の数が一番多い。他の街、他領の物資が集まる。


「ラパーは領地を運営するにあって領の重要施設が集約されてます」

「サラティス様、何故セクド様のお屋敷があるレ二トスではなく、ラパーに置かれているのか分かりますかな?」

「師匠、いくらなんでもそんなのさすがに無理ですよ」

「君と一緒にしないでいただきたいですな」

「まぞくのしんこうが、あったさい、いきなり、りょうのきのうが、ていしするのを、ふせぐため」

「うそ」

「ふっ。さすがでございます。他にもさまざな理由の結果ですが、一番はそうです」


 いくら不可侵を約束したところで未来永劫守られると考えているのなら、領主に向いてない人物だろう。


「なんで……」


 ユリスは驚愕した。自分も弟子になった直後同じ質問をされた。その時の自分は最北で不便だからと答えた。


「は、これが英才教育……」

「いいですか?私は教えておりません。それに、教えて覚えること自体がサラティス様の能力の高さを表しています」

「た、確かに」


 教えた所で覚えれるかどうか。それが四歳という幼さで。


「ロナティッタは畜産が主で農業、アイスティアも同じく農業が盛んな街です」


 今回サラティスの目的はこの二つの街である。


「そろそろ、ルムクですね」


 領主の別宅に到着した。

 別宅レニトスを除く各街全てにある。

 仕事場と私室が棟で分けれている。

 が仕事以外であまり使われることがない。

 なるべく家族と離れたくないからである。

 なので使用人はおらず仕事場には絶賛仕事中の役人がいるだけである。


「私は報告書を受け取り、少々確認します。なのでサラティス様は自由時間です。港をご覧いただければと」

「ありがとうございます。おしごとがんばってください」


 レザクターが降り、獣牽車が再び動きだす。


「ユリス、じゅうけんしゃは、どこまでちかづけるのですか?」


 獣牽車の窓から外を確認する限り道は広く、獣牽車が四台ほど通れる幅だ。

 が、それがどこまで続くのか。道が狭くなったら途中で降りて向かう必要がある。


「サラティス様、ご予定ですと港から歩いて十分程度の所で停めそこから歩いて向かうとのこと」


 予定に関しては全て把握しいるハルティックが答えた。


「因みに、獣牽車がどこまで近づけるかなら、港まで直接乗りつけられます」

「うみでとれた、まじゅうを、はこぶため?」

「っそうですね。えっとハルティックさん、サラティス様は歩かれるのは平気なんですよね?」

「ユリス様、勿論です。邪魔にならないように騎士が周囲に展開しているのでご安心ください」

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