第195話「ぴとぴと」
その日の夜お風呂にアレシアと一緒に入った。
「サラティスもすっかり大きくなったのね」
「学ぶべきことがたくさんありました。からね。それに……とっても楽しかったです」
「そう、ならよかったわ。奴隷の件はどう思ったのかしら?」
「まず驚きました。本で昔私役という制度があったようですね。で、他国の奴隷としての制度をよく廃止できたなって思いました」
「そうね。これから学園で習うことだけどサラティスは今の制度も無くした方がいいと思う?それとも、他国の奴隷制度に変えた方がいいと思う?」
「私は現状維持が良いと思います。生活が苦しく犯罪に手を染めてしまう人は、政治によっては解消されると思います。でも中には生活と関係なく犯罪行為をすることが目的な人もいるかと思います。なので最低限の罰は必要かなと」
「そっか。ふふ、もうそこまできっちり考えてるのね」
アレシアは嬉しかった。
さまざまなトラブルに遭遇したことは心配であるが、それ以上に確かにうちの子は一回り、二回りも成長した。旅がとても良い経験になったと。
「そうだ、そういえばハルティックがやってきたわ」
「……」
恐らくあのことを告げたのだろう。
「ハルティックが魔人であることを隠していたことについて謝罪があったの」
「お母様、ハルティックをクビにしたりしないですよね?」
「もちろんよ……大事な使用人だもの」
「お母様?」
アレシアはサラティスの首筋から背中と指を這わす。
「だからサラティスが雇い直す必要なんてないのよ」
貴族の子供専用に使用人や護衛をつけることは珍しいことではない。
だが、子供自身が雇うことは聞いたこともない。
子供でありながらしっかりとした貴族であることが窺えた。
「よかったです」
「学園にハルティックかダヴァンを連れていく?」
金銭的余裕があるので一人連れていくことは可能だ。
「大丈夫ですよ。お兄様だって一人で頑張ってるじゃないですか」
「そうね。でもサラティスの場合は魔術具関連で連絡とかあるから、不都合が出たら直ぐ言ってちょうだいね」
「分かりました」