第187話「見せてください」
「準備できました!」
起きるとすぐさまサラティスはパンツに着替えた。
ハルティックに無理やり起こされることなく、自ら起きた。
ハルティックに髪整えまとめてもらい、支度を済ませ元気に農場に向かった。
「すみません、ちょっとお話いいですか?」
羽があるのならどこか遠い場所へ飛んでいってしまいそうな軽やかな足は、コココココ農場へと向かった。
かなり大きい農場でモルを飼っているのかと見間違う程であった。
飼育している魔獣は同じコココココでであってもこれほど、規模が違えば新しい学びを得れるかもしれない。
「なんでしょ……き、貴族様?」
農場の入口付近を歩いていた作業着の男性に声をかける。
男性はサラティスをまず見て、後に控えるハルティックを見た。
そして再度サラティスを見た。
明らかに育ちの良さそうな娘に、明らかに使用人である女性。
よってサラティスを貴族だと判断した。
「落ち着いてください。私はサラティスと申します。貴方はこの農場の方でしょうか?」
「はい、そうです」
「少しだけ見学したりお話聞かせてもらうことは可能ですか?
「あーえっと、申し訳ありません。責任者に聞いて参りますので、少しお待ちいただけますか?」
「はい、勿論です」
男性は小走りで農場の建物の中に入っていた。
農場は入口から見て右側に建物、左側にずらーっと畜舎が十棟並んでいる。
ニ、三分程で先程の男性と責任者らしき小太りな男性がやってきた。
「私はこの農場の責任者のコタルダといいます。うちの農場を見学希望ですか?」
「私はサラティスと申します。はい、できればお話を聞かせて欲しいなって」
「もちろん、構いまわせん。がやはり、魔獣ですから臭いなどがつく、汚れてしまうこともあるかもしれませんが……」
「はい、大丈夫です。そのための服装ですから」
「なるほど、承知致しました。立ち話では何ですからひとまずこちらにどうぞ」
建物に入り応接室に案内される。
コタルダがこの農場についていろいろと説明してくれた。
この農場では畜舎が十棟ある。
そして一棟あたり約二万のコココココが育てられているそうだ。
約半分が食肉、半分が卵用で分けられている。
この数は領内でも一、ニ位を争う大規模だそうだ。
説明を終え、実際の畜舎に案内された。
「……ん?」
サラティスは違和感に目を閉じ、それが何かを探る。
独特な臭いが溢れるなかに、すっと鼻の先に漂う異質な匂い。
「ど、どうされましたか?」
コタルダは大声でサラティスに声をかける。
畜舎の中ではコココココが鳴いているので、大声でないと掻き消される。
「何か鼻にすんとくる変わった匂いがするので……」
「あ、それはもしかして餌かもしれませんね」
「餌?」