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第186話「ぶらり、ぶらり」

 サラティスは手紙を書いていた。

 セクドとアレシア宛にだ。

 旅の道中こまめに旅の想い出を書いて送っていた。

 昨日のやりとりで、完成品の試運転はリステッドの屋敷で行うことになった。

 サラティスの旅の予定がずれたら先にワイビーがリステッドに到着してしまう。

 なのでそれら考え事前に伝えてあった方が良いため、連絡事項も書いていた。


「終わりましたー、ご飯に行きましょう」

「承知しました。昼と夜、どちらをお肉にしますか?」

「……」


 サラティスは真剣に悩む。

 さすがは家畜が盛んなだけあり、街中には肉屋や肉料理の店が多い。

 当然であるが、肉ばっかりの食生活などハルティックが許してくれるはずもない。

 なので昼か夜どちらか選択を迫られたのだ。

 熟考し結果昼は野菜中心の軽食にした。


「これからどうされますか?」


 宿に戻るか街を散策するか。


「それでしたら牧場に行ってみたいですね」

「なるほど……でしたらそれは明日ですね」

「確かにそうですね」


 ハルティックの視線で理解した。

 サラティスはスカートを履いているからである。

 街中を散策した。

 意外と服屋が多いことが分かった。

 畜産農家は清潔さが求められる。

 不衛生であると家畜が病気になったりして死んでしまうからだ。

 魔獣と接するのでどうしても汚れてしまう。

 そういった事情から作業着など農家向けの服屋が多いのだ。

 それと家畜に使う専門的な道具屋も多い。

 リステッドにはそこまで店がないので、商品を眺めた。

 とある雑貨店の中を見て回る。道具に関して目新しい物は見つけられなかった。


「すみません、これ水魔術の書物ですか?」

「そうですよ」


 棚に綺麗な本が陳列されていた。

 家畜についての書物、餌や病気に関してなど多岐な種類の本が鎮座している。

 その中で魔術書があり、思わず店員に質問した。


「水だけなんですか?」


 ざっと棚を眺めると、それ以外の魔術書は見当たらない。


「はい、あまり数はいらっしゃいませんが家畜小屋の掃除などを水魔術で行う人もいるので、畜産農家に実践的な水魔術が載ってる魔術書になります」


 サラティスが異常なのだ。

 魔術に精通している人間は畜産農家になることはまずないだろう。

 魔術とは専門的知識に、才能、長年の修練が必要である。

 それを日常に気兼ねなく使うことはあまりない。

 それこそサラティスならば水球を出して魔力切れになることはないが、ニ、三個出すのが限界な人間だっている。


「なるほど、確かに便利ですね」


 水魔術で出した水は飲料が可能だ。

 可能なだけで、それだけを飲んでいると身体を悪くする場合がある。

 まだ解明されていないが天然の水に含まれている要素が、魔術で生み出した水には含まれていないようなのだ。

 なので、基本的に家畜などには水魔術で出した水を与えたりはしない。

 だが、掃除に関しては別だ。


「これいただけますか?」

「お買い上げありがとうございます」


 サラティスは顔を輝かせながら店を出た。


「サラティス様、夜更かしはいけませんからね」

「分かってます」


 相変わらずの主人であった。

 美しい服や、流行りの物語の本。

 そんな物などより、専門的な魔術書の方がよっぽと嬉しいのである。

 顔に口にも出さないが、当然主人の喜んでいる姿を見る方が好きだ。

 サラティスは宿に戻ると黙々と読み進め、夜の挨拶に返事をするかのように眠りについた。

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