表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
179/251

第179話「空白地帯」

  翌日すぐにマーナを発った。

 当初の予定では逆であった。

 ナンタルダートはザバラットとお隣さんである。

 ザバラットとからナンタルダートへ向かい、クスナへ行き、北に戻る予定であった。

 変更したのは突如決まった新しい魔術具の開発のためだ。

 学園に行ってからでは自由に時間が取れないので、最低限髪を乾かす魔術具の方は完成手前までは持っていこうという話になった。

 三人は木々を縫うようにホンスを奔らせる。

 ここは所謂空白地帯である。

 サグリナ王国は二十四の領地から成り立っている。

 そのうちの一つは王族が暮らす王都。

 残りの二十三の領地を貴族が統治している。

 リステッドが特殊なためサラティスは実感できていないが、普通領地には統治する立場の領主が存在し、それ以外の貴族が多数住んでいる。

 貴族は領主家と親族関係がある貴族や、一切関係のない貴族など住んでいる。

 リステッドにはリステッド家以外の貴族が存在しない。

 領地を統治するための負担がかなり大きいが、その半面政争や対立などがないというメリットがある。

 王国内には王族も貴族も統治していない土地がある。

 それを空白地帯という。

 空白地帯は政治的事情が主で存在する。

 長らく平和が続いているため、そうそう起こらないが国に貢献した人物に土地を与える場合があり、誰も所有していない土地がないとこれができない。

 隣同士の領主家同士、友好的とは限らない。

 領地同士のトラブル回避のために、 領地と領地の間に空白地帯を作り、緩衝の役目として設ける。

 今三人が進んでいる道はマーナとナンタルダートのどちらでもない地帯。


「どうしました?」


 少し前を行くダヴァンがホンスが駆ける速度を緩め、進行を遅くした。


「サラティス様は後ろを警戒してもらえるか?」

「はい。ダヴァン、間を空けてくださいね」

「ハルティックはホンスをしっかり見て暴れないように頼んだ」

「承知しました」


 直後ダヴァン達の前に一本の矢が飛来してきた。

 矢は地面に当たり、少し跳ね地に寝そべった。


「おい、金目の物とホンスを寄越せ。そうしたら命は助けてやる」


 木々の間から男が一人現れた。

 矢を放った人物が余りにも下手くそで外してしまったのではない。

 警告の意味で放たれたのであった。

 男は剣を抜いている。

 つまりこの男以外に弓でこちらを狙っている仲間が一人はいる。

 男がダヴァンに迫ろうとした瞬間。


「うわっ」


 男の目の前が紅く染まった。

 肌を焦がすような熱が、そして本能的に恐怖を覚える火の柱が。

 火柱が消えた途端、男の首元に先程の熱を忘れさせるほどの冷たさが襲った。

 ダヴァンは素早くホンスから降り、サラティスの魔術で驚き腰を抜かしている間に接近し剣を向けたのだ。


「抵抗すれば殺す。手を上げてゆっくりと地面に寝ころべ」

「分かった!殺さないでくれ」


 男は素直に手を上げ地面にうつ伏せになる。


「ハルティック、俺の鞄からロープ取ってくれるか」


 ダヴァンはロープを受け取り男の手足を縛る。


「仲間は後何人だ」


 ダヴァンは矢が飛んできた方向に警戒しながら地面に転がっている男から情報を聞き出そうとする。


「ひ、一人だ」

「嘘つくな」


 ダヴァンは少し力を入れると、男の首から一筋の血が垂れる。

「あのな、さっきの魔術見ただろ?近くの気配探るなんて簡単なんだよ。嘘つける状況じゃないの分かってるよな?」


 わざとらしく剣を強く押し当てる。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ