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第17話「初めての狩猟」

 翌日、ダヴァンは屋敷にある武器を管理している部屋から一本剣を借りてきて、三人は庭から出て森の方に向かった。

 ジェリド、サラティス、ダヴァンの並び順で進む。

 ジェリドも訓練しているだけあって様になっている。

 同年代ではかなり抜きんでているかもしれないとダヴァンは評価した。

 サラティスはまるで自宅の廊下のようにひょこひょこ歩いている。

 サラティスは警戒心が低い。

 全盛期は即死さえしなければ、その場でどんな外傷でも治せた。なのでただの森にそこまで警戒などしない。

 抜け出して探検する時より、遠い場所まで訪れてわくわくしていた。


「ふと思ったんですが、サラティス様抜け出してますね?」

「な、なんのことかしら?」


 初めて森の中を歩く幼女の歩き方ではない。

 魔獣は勿論警戒しているが、サラティスが転ばないよう細心の注意を払っていた。

 そしたら、予想外にもすたすた歩いているのだ。

 慣れているようにしか見えない。なら、こっそり庭から抜け出して。簡単に想像できる光景だ。


「あーなんでもないですよと。足痛くなったら言ってくださいね」

「だいじょうぶです、そしたらなおすので」

「ははは、そりゃそうだ失礼しました」

「しずかに」


 ジェリドが何かに気づき二人に警告を出す。


「サラは下がって」


 ジェリドの視線の先にはお目当てのワイルボロルがいた。

 大きさも百セル程度と小型である。


「サラティス様、ジェリド様とワイルボロルと直線状にならないように移動しましょう」

「おにいさま、もうちょっとだけまってください」

「分かった。でもこれ以上近づくとたぶん気づかれる」

「わかりました。ここでしばらく、かんさつします」


 ワイルボロルは木の根近くに生えている草を食べている。


「因みにどのようにして倒すつもりで?」


 初手はジェリドに譲る。


「身体強化魔術使って一気に接近して首を斬る」

「そうですかい。もし一撃で仕留められなかったら俺がやるんで追撃は考えないでください」

「……分かった」


 暫くサラティスはワイルボロルを観察しジェリドに討伐していいと合図を出す。


「とりゃ!」

「わ」


 ジェリドがワイルボロルに向かって走りだした瞬間、ちょっとした風が吹いた。


『ごぼ』


 ジェリドはワイルボロルを追い抜く。

 すれ違いざまに剣を首に当て斬る。

 ジェリドが追い抜いた直後、後を追うように血が零れだす。

 ワイルボロルは何が起きた理解できなかったようだ。 

 斬られた直後頭を上げ、状況を確認しようとしたが体を痙攣させ地面に倒れこんだ。


「ジェリド様、サラティス様よく見ててください」


 ダヴァンはすぐにワイルボロル近寄り解体を始める。


「まず、肉は血抜きしないとだめだ。どんな美味い肉も不味くなる」


『洗い落とせ』


 ダヴァンは水魔術を発動した。

 すると、水が血を洗い流し地面を濡らしていく。


「あ、すごい」

「はは。ただの初級魔術だからすごかねーぞ。水の初級魔術は戦闘じゃ大して役に立たんが、生活だと便利だからジェリド様も使いこなせるようになったほうがいいぞ」

「う……確かに。難しくない?」

「まぁ、初級だからな。学園で馬鹿しなけりゃ覚えて帰ってこれるぜ」

「でも、それいとてきに、みずのしゅつげんはんいをせばめて、みずのいりょくをあげてるわね?」

「はははは。さすがリステッド家の神童。ジェリド様理解できたか?」

「……さっぱり」

「まぁ、セクド様は魔術使わないから仕方ないけどな。俺のはこれ使い勝手がいいように水の出る量を調節してんのさ」


 軽くジェリドにレクチャーしつつ手元は狂いなく素早く肉を解体していく。


「サラティス様、これくらい肉採れたがまだいるか?」

「……ひとまずそれだけあればじゅうぶんです」

「おっし。悪いがジェリド様これ持って貰えるか?」


 ダヴァンは肉を入れるために持ってきた籠にいれジェリドに渡す。


「死体をそのまま森に放置するのはあんまよくないからここで処理するぞ」


 ダヴァンは残った死体をある程度細かく斬っていく。


『燃やせ』


 ダヴァンが詠唱するとボッと、音とともにワイルボロルが燃えていく。


「処理の仕方はその時、人によりけりだな。一番簡単なのは穴掘って埋める。魔術使えるなら焼いてから埋めた方がいい。穴も小さくて済むしな。ただし、森の中で使うときは要注意。万が一森燃やすと個人で責任取りようないからな?」


『洗い落とせ』


 暫くし骨となった。念のため周囲に水をかける。


「ひとまず、家に戻りましょう。で、肉置いたらスノッチ持って埋めてやりましょう」


 スノッチとは穴を掘る道具である。


「あ」

「どうしました?」

「これくらいならこう」


 サラティスは指を振る。


「うお」


 サラティスの見つめる先の地面がブルブルと震えだした。


「サラ、もしかして魔術か?」

「そうです。つちまじゅつをならったから、やってみようかと」


『ザクザク』


 そんな小刻みに音を立てながらまるで生き物のように土が左右に分かれ盛り上がっていき中央は穴が空いていく。

 しばらくすると骨を埋められる程度の大きになった。


「サラティス様だからなー」


 習ったからと発動できるものでもないし、無詠唱なんてさらに不可能だ。

 だが、使用人は皆サラティス様の魔術の才を聞いたのでそこまで驚きはしない。


「穴掘る魔術なんて習ったのか?」


 かなり使い道が限られる魔術だ。


「ちがいます。つちをあやつるまじゅつです」


 魔術の中で一番簡単なものだ。

 火魔術なら既にある火を動かす。

 水魔術なら既にある水を操る。

 そして、次の段階になると先程ダヴァンが使った何もないところに火をつけたり、水をだしたりとなる。


「はーやっぱすげーな」


 初級も初級の魔術でも発想しだいでかなり応用がきく使い方になる。


「ありがとうございます」


 骨を入れ、土を被せる。

 サラティスは感謝の言葉を述べ手を合わす。


「よし、帰るか」


 何事もなく、無事に家に帰ることができた。

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