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第160話「差異」

「上の服脱いでください」

「……本格的だな。お嬢さんいいのか?」


 それはハルティックにである。

 未婚の女性貴族の前で上半身といえ裸を見せていいのか。


「……はい。あくまで治療行為の一環ですから」


 ハルティックも複雑であろう。

 本来であれば絶対に避けるべきである。

 サラティスは医者じゃないのだから。

 だが、今までさんざん人助けをしてきた。

 ララスト領で凄惨な怪我を見ている。

 内臓などに比べれば大した事がないのも事実だ。

 タルサードは上着を脱ぐ。

 サラティスは椅子から立ち上がり、椅子に座っているタルサードの横に立つ。


「しばらく、深呼吸してください」


 年齢を感じさせない胸筋を横から凝視する。


「まだ、初期段階ですね」

「ああ、まだ気付いて一ヶ月程度だな」

「ありがとうございます。もう服を着てもらって構いません」


 タルサードが服を着終わるの待ってから告げる。


「タルサードさんは確かにルーリエ病です」


 それは十二分に承知していることである。


「すみませんが、口開けてください」


 再びタルサードは口を開く。

 サラティスが手を翳すと淡く光った。


「ひとまず、歯茎の出血の傷は治しました。すぐに開いて血が出ると思いますが」

「……驚いた」


 医者となんら遜色ない回復魔術。


「まず、タルサードさんには症状が改善されるまでお薬を飲んでもらいます。最初は二週間程度。そして、その段階で具合を見て薬を出すか出さないか決めます」

「ああ」

「それと食事ですが、魚は駄目です」

「なんだと?」

「魚が駄目じゃなくて、肉や野菜もしっかりとってください」

「これは?」


 サラティスはメモを一枚差し出す。


「食べて欲しい食材です。これを絶対食べてください」

「……本当にこんなので治るのか?」

「はい。さっきも言いましたが、ルーリエ病は食事が原因ですからね」

「そうだ、それについて詳しく聞かせてもらえねぇだろうか」

「はい、もちろんです」


 船乗り病。

 それは船乗りがかかるとされる病。

 何故陸地で生活している人間は掛からないのか。

 ネイシャは薬を提供したかいあって、聞けば全員自身の環境などの話をしてくれ、さらには聞きまわったりなど協力してくれ、情報の蓄積に成功した。

 陸地で生活する人間と大きく異なることがあった。

 それは食事だ。

 船上に置いて食事は制限される。

 船に積みこんだ物しか食べることはできない。

 それ以外となると、水生魔獣を捕ってしかない。

 船乗り病に掛かった人間は皆野菜や肉が不足していた。

 ネイシャが乗っていた船の乗員は誰も船乗り病になっていなかった。

 それは何故か。

 ネイシャはベアダボの肉を大量に持ち込んでいた。

 魚以外を定期的に食べていたのだ。

 この情報はすぐさま広まり、実践してみたところほぼほぼ、船乗り病を発症する人間が出なくなった。


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