第16話「密室、男二人……」
「……」
「……」
密室に男二人。
「何が目的だい?」
「さぁな。ひとまず内緒ってやつだな」
「……君はサラティスに仕え始めたのかい?」
「あのな、俺はリステッド家に仕える気はねーって言ったろ。あくまでお前だからだよ」
「なら、大人として危険のある子供の駄々は止めるべきじゃないのかい?」
「は、確かに俺はお前に仕えてるが首振り人形になるつもりはない」
「……」
「それに宣言するけどよ、俺は仮にアレシア様とお前で意見対立したら、ありえないが人道でも違えない限りアレシア様に味方するからな」
「っ。確かに君ならそうするだろうね。じゃ、サラティスは?」
「お前とサラティス様なら内容次第だが、基本はサラティス様だな」
「なっ。ジェリドなら?」
「それなら、まだお前だな。不敬か?」
「なんだかな……まぁなんとなく分るけどさ。まぁ、それはいいよ。そんなんで不敬にしてたら、君をうちに呼んだりしないさ」
「そりゃどーも」
「でもね、事情を隠すのはどうしてだい?領主として跡継の守護の重要さを分らない君ではないだろう?」
「まぁな。いいか?別に内緒にするわけじゃないぞ。今はまだ恥ずかしくて言えないんだとよ」
サラティスが説明しないのはまだ、確証も得れない状態で仮説を話すのは恥ずかしい。ある程度固まるまで仮説を出すのは待って欲しいと。
ダヴァンも料理人でこの感覚は理解できた。
まだ誰にも食べさせる予定もない、初めての料理の試作をレストランの商品のように出せと言わたら断るだろう。
「恥ずかしいって何する気なんだい……」
「なぁ、サラティス様の我儘だけどよ。お前気づいているか?」
「ん?」
「そこら辺のガキの癇癪なんて自分の思い通りにならないから騒ぐだけ。でもよ、サラティス様がああ言い出す時は必ず誰かのためだ」
「それは分ってるよ。サラティスは誰に対しても優しい子だ」
「それだけじゃねー。あの子が料理や菓子を思いついて俺に作ってくれと言った時偶然だと思うか?」
「どういうことだい?」
「あくまで俺が勝手に思ってるだけで、実は違うってこともあるかもしれねー。でも、あの子が何か生み出して、お前に渡す時。大抵、お前根を詰めすぎる時じゃないか?」
「あ……」
言われてみると確かにそうだ。
精神的にかなり疲労してる時、我が家の天使からの贈り物。
とてつもなく嬉しかった。
「ただ思いついたからじゃない。仕事でくたくたになってる父親のために何かできないか。あの子なりの我儘がこれだぞ?」
「っつ」
セクドの瞳が静かに光り潤む。
「なら頑固親父より、頑張り屋な娘に味方するのはおかしいか?」
「……すまないね」
「責めてねーさ。お前は領主だ。だからこそ、使用人の俺たちがいる。安心しろって怪我一つさせねーからよ」
「頼んだ」
「ったくよ。男なんだから泣くなよな」
「べ、別にまだ泣いてないじゃないか」
「へいへい」