第157話「作れますけど……」
「どこで手に入るんだ?そんな薬見たことないぞ」
「うーん……そしたら作るしかないですね」
「作れるのか?」
「はい、材料があればそんな難しいことはないですね」
「分かった。金なら出す。作って貰えねぇか?」
「ヨルバドフ様お待ちください」
「そうだぜ、ヨルバドフ。サラティス様は薬師でも医者でもねぇ。慎重に動かねぇと駄目だろ」
「そうですね。まずそもそも、そのタルサードさんが本当にルーリエ病か調べる必要もありますし」
ヨルバドフは思いっきり頭を下げる。
「貴族様で、医者でも薬師でもない子供に頼むのはおかしいのは知って……分かっています。どうか助けて頂けないでしょうか?お金なら出します」
「……そうですね、薬に使う材料費は出してください。医者じゃないのでそれ以上はいらないですよ」
「サラティス様、一応聞くがそれはどこからだ?」
サラティスの一番の被害者であるダヴァンだ。
最小限の問いでお互い通じる。
「詳しくは忘れましたが、どこかの本で目にした覚えが」
「そうか。まぁ、聞いた中身から察するに、毒になるってことはなさそうだから、効果なくても問題はないだろけどな」
「……ヨルバドフ様。申し訳ないのですが、今回に関して結果はどうあれサラティス様は責任を負わない、そちらも問わないと明記し署名してもらえますか?」
ハルティックなりの譲歩である。
子供が作った薬を治療に使う。
本来であればこのような作り話では酒場を沸かすことはできない。
だがあのサラティスが作った薬であれば、恐らく本物であろう。
だが、何事ももしもはある。
料理や菓子なら失敗したとて、不味いと評をつければ済む話だが今回は他人の命に関わる話だ。
薬のせいで死んでしまった。
薬が効かず死んでしまった。
薬は効いたがその他の要因もあり死んでしまった。
子供とはいえ貴族の身分である。
万が一を考えたら、それらを明確に証明できないので、関わるべきではない。
だがこの状況で主人が見過ごすはずもないことを十二分に理解している。
なら自分が取るべき行動は主人を遠ざけるのではなく、主人に火の粉が掛からないように動くことである。
「ああ、確かにそうだな」
「それにヨルバドフ様が良くてもタルサード様が納得するのですか?こんな子供の飯事にと拒否されたら、こちらは説得の責は知りませんよ?」
「ああ。それも俺が納得させる」
「そうだな。じゃ、ひとまず俺たちは宿に戻る。まずお前はじいさんを説得して、治療と素人の薬について許諾を貰う。そしたら宿に来い」
「それもそうだな。分かった。頼んだ」
今日のサラティスは漁のために早起きした。
治療に万全にあたるためにも、日を改めえた方が都合がいい。
サラティスは探索せず早めに寝たのであった。