第154話「奴隷の違い」
ダヴァンは手押しの荷台に籠を積み終えると、ヨルバドフも戻ってきた。
「どいた、どいた、どいた!」
「サラティス様!」
サラティスはハルティックに手を引かれる。
船着き場の方から大きな声が聞こえる。
男性二人が男性を抱えて二人の前を通過していった。
「あ」
担がれている男性は具合が悪そうであった。
見た限り外傷はないようであった。
そして何よりサラティスは首元を見てびくっとした。
「奴隷ですね……」
「恐らくですが、ほとんどの奴隷は法的に手続きを経てると思いますよ」
「そうですよね……」
「もしかして、お二人は奴隷を見るの初めてで?」
「いえ、初めてじゃないです」
「もしかして、結構扱い酷かった感じで?」
「はい……」
「うちの領では割と奴隷とかの区別はないからびっくりするかもな」
「そうなんですか?」
「あー確かにな」
ダヴァンも頷く。
「船の上だと奴隷だろうが何だろうか関係ないからな。うちの店に船長と奴隷が一緒にやってきたりするし。それに一番は奴隷が終わった後そのまま、漁師になるやつも少なくはないみたいで」
「それはいいですね」
つまりここで働きたいたと、奴隷の間に思うことができたという訳だ。
「ヨルバドフ!ちょっと来てくれ……て商談中か?すみません」
レザクターと同世代の老人が声をかけてきた。
しかし、レザクターとは明らかに肉付きが違った。
老人はサラティス達に謝罪した。
「ユーダリアさん!久しぶりです。サラティス様悪いちょっとだけ抜ける」
「そしたらお魚さん悪くならないようにお店に運びましょうか?」
「お、助かる」
「持ってくのは俺だけどな」
「私も引きますよ」
「おい、それは駄目だ。後でセクドに嫌味言われるからな」
「そうなんですか?」
「ふふ、サラティス様行きましょう」
三人は先にヨルバドフの店に戻った。
去り際に鍵を渡されたので外で待ちぼうけの心配はない。
「ありがとうございます、ダヴァン」
「ああ。これくらいならな」
ダヴァンは店の扉で閉ざされ客が入れない奥に籠を運んでいった。
「ハルティック体調は大丈夫ですか?」
「はい、私は大丈夫ですが……またどうして?」
「そりゃ、陸に戻ったからだろ」
ダヴァンが戻ってきた。
「船は揺れるので船に乗っていると体調が悪くなる場合があるって本で読みました」
「船酔いですね。昔一度だけ、手漕ぎの船に乗ったことがあってその時大丈夫だったので私は大丈夫だと思ってましたが、サラティス様も何もなく良かったです」
「しばらく船に乗って陸に戻ると、気分が悪くなる陸酔いがあるって見たので」
「なるほど……特に変りはないので問題なかったみたいです」
「それにしても、すごかったですね。ダヴァン、やはりうちの領で魚が少ないのは港の規模が小さいからですか?それとも漁師の数が少ない?」
「あー待て待て、落ち着いてくれ。ひとまず座ってからだな」
「ダヴァン様、よいのですか?」
サラティスとハルティックは椅子に座る。
ダヴァンは勝手に店のコップを出し水を入れ二人に差し出す。
「ああ。水だしな」
主人の不在に好き勝手していいのか。
だがダヴァンとヨルバドフは友達である。
これくらいは普通で後々問題にならないのであればよいかとハルティックは納得した。