第150話「儲からない」
「ニュールって作るのが大変でしょうか?」
「サラティス様、申し訳ない。詳しいことは俺も知らねぇな」
あくまで魚のプロなのだから致し方ない。
「サラティス様、後で知り合いに声かけてみるぜ。因みに引き抜きは考えてねぇよな?」
「さすがはダヴァンです、お願いします。引き抜きは……その口ぶりから難しいってことですかね?」
「そうだな。ニュールってくそでけぇ樽使ってんだよな。それに有名所は地域に根付いてる。移動するメリットが一切ねぇ」
「そうですか……」
「ワイルボロルの時のように、識者を呼んで教えてもらうのはどうでしょうか?」
「ハルティック名案です」
「お、それなら……条件次第ではいけるかもな」
「申し訳ないのですが、それを含めて情報収集をお願いできますか?」
「なぁ、一ついいか?」
「なんでしょうか?ヨルバドフさん」
「ニュール作っても儲からないたみいだぜ」
ヨルバドフによると二十年くらい前はニュールを作る店はそれなりにあったそうだ。
だが、年月が経つにつれ次第に数が減ってきた。
ニュールだけでやっていくのは厳しく、ニュール以外の商品で生計を立てる店ばかりなった。
「ありがとうございます。ニュールで商売は考えてないです」
調味料として何か作れないかと思っただけだ。
「なるほどな、ずいぶん風変りな貴族様なことで」
「そうですか?」
「ヨルバドフ様、サラティス様は子供ながら領主家として領民のことを深く考えていらっしゃるのですよ」
「ハルティック……」
サラティスは誤魔化されない。
「否定はしないのですね」
「っつ」
「だはははは、サラティス様それはちと酷だぜ。事実変わってるだろ」
「サラティス様」
ヨルバドフは背筋を伸ばす。
「なんでしょうか」
「ダヴァンは顔は極悪人だし、口も悪いしむさ苦しい。料理以外はがさつでぶっきらぼうだ。だけど、悪い奴ではない。だから見捨てないでやってくれ」
「おい、まるで見捨てられるみたいな言い方すんじゃねぇ」
「ヨルバドフさん、ダヴァンはリステッド領の食事事情に欠かせない人物です。本人が嫌で去らない限りは家にいてもらいますよ」
「よかったな、ダヴァン。お前みたいの雇って大事にしてくれるなんて」
ダヴァンはタキヌをかきこむ。
「そうだ、ヨルバドフさん。迷惑でなければ、どこか船に乗せてくれる漁師さん紹介してもえませんか?」
船に乗る。
水生魔獣を知る。
この二つは外せない目的である。
このためだけに家で泳ぐ練習をしたのだ。
セクドから大丈夫とお墨付きを貰い、船に乗ることを許可された。
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