第145話「お別れ」
しばらくするとダヴァンが戻ってきた。
ディスィリシアは違法奴隷の被害者として保護されることになった。
目下違法に使用された魔術式を解析し解除が目標とのこと。
「裁判はどうなるんですか?」
「そればかりはまだ、何も言えねぇ」
「そうですか。私は全力で支援したいと思ってます」
「ああ。一応あっちには無罪を求めるってのは伝えてある。しばらくしたら、騎士達がくるからお別れ済ませとけな。ハルティックはどこだ?」
「ハルティックはお部屋の掃除してくれました。埃がすごくて、涙流しながら……」
「あーまぁ、男所帯だろうしな」
事情が事情なのでハルティックがひとまず落ち着くまでは内緒にしておこうと思った。
なので部屋に入らないよう、例え泣いていたとしても不自然じゃないように誤魔化した。
「何から何まで本当にありがとうございます」
「いいえ。ディスィリシアさんはすごいですよ」
「そうだな。俺だったら関係者に斬りかかってるだろうな」
「可能だったらきっとやってたかもしれませんから」
「辛いことがあったらお手紙くださいね」
「はい」
サラティスはディスィリシアの頭を撫でる。
「お、ハルティックお疲れさん」
ハルティックも戻ってきた。
「見る限りかなり凶悪な部屋だったようだな」
ハルティックの目が赤くなっていた。
おそらく埃と対峙した証だろう。
サラティスはこそっと誤魔化したことを伝えた。
「ちなみにディスサルさんは?」
「魔法でどこかに帰られました」
そんな気はしていた。
騎士達がやってきた。
サラティスも可憐に騎士にお願いした。
所謂貴族の遠まわしの圧力である。
「一件落着か」
「大将さんも本当にありがとうございました」
「大将世話になった」
「ああ。預かった嬢ちゃんも大人しい良い奴だったからな。たいして世話してねぇよ。明日出てくのか?」
「お、柄にもなく寂しいのか?」
「客じゃねぇお前がいなくなろうが知ったこっちゃねぇよ」
「今度はもっとゆっくりお話しましょう」
「おう、嬢ちゃんなら客じゃなくても大歓迎だぜ」
「ったくよ」
職人として歓迎ということだろう。
ありがたいことに泊めてくれるということで三人は大将の所に泊った。
十人の職人とご飯を共にする。
お世話になったのでサラティスが費用を出し、ハルティックが買ってきてダヴァンが調理した。