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第138話「魔術の腕」

「ありがとな!」


 右側の男が剣を抜きダヴァンに斬りかかる。

 ダヴァンは感謝を伝える。条件が満たされたからだ。

 モグレンヴァはすぐさま部屋を出て逃げ出した。

 それを二人は見逃した。


「見逃していいんですか?」

「ああ。本人が逃げた所で、ここは奴の本拠地だ。外に逃げることはないだろう。そもそも目的は、貴族に剣を向けた事案で逮捕するって名目を作ることだからな」

「どこか別の部屋に証拠を隠して破棄するかもしれませんよ?」

「多少はあるかもしれんが、奴隷という証拠があるからな」

「なるほど。分かりました」


 あくまでその場にサラティスがいないと、この作戦は通用しない。


「ダヴァン、大丈夫ですか?」

「ああ。どうやら騎士じゃないようだから、な!」


 ダヴァンは剣を抜き、男の剣を剣で受けとめる。

 そのまま男を剣ごと押し弾く。


『火柱』

「っつサラティス様!」


 左の男が魔術を使った。

 男が詠唱し、ダヴァンの視界は火柱でサラティスを見失う。


「っちくそが」


 すぐさま向かいたいが、男がダヴァン目掛けて剣を突く。

 ダヴァンは身をねじり突きを躱す。


「寝とけ」


 剣はダヴァンがいた空間を貫く。

 ダヴァンは男の足に足かけ転倒させる。

 ダヴァンは容赦なく剣を振り下ろす。


『ガキン!』


男は何とか振り向きダヴァンの剣を受けとめる。


「大丈夫です、ダヴァン。こちは任せてください」

「サラティス様、無事か」

「なんだと」


 魔術師の男は困惑する。

 確かに火柱が少女の身体を包み込んだはずだ。

 魔術が失敗したわけではない。

 この部屋の床と天井、壁は特別製だ。耐火性にすぐれており、すこしばかり魔術で火が出ようとも炎上したりはしない。

 だが、人の身はそうはできてない。

 火柱が消えるとそこには無傷のサラティスが立っていた。


「な、何をした」


 サラティスは火柱に包まれる最中考えていた。

 サラティスは魔術で人を傷つける行為に楽しさや快感など覚えない。

 難しい魔術、威力が大きい、範囲が広い魔術を使える魔術師が尊敬されやすいという軸が存在する。

 だが、サラティスは魔術師に師事して習ったわけではないので、これらが共感できなかった。

 威力が大きい、範囲が広い魔術は当然消費する魔力も多い。

 人を呑込む火を出したいのであれば、火柱ではなく、消費魔力の低い火球を使えばいいではないか。

 あくまでこれは独学でひたすら実践経験を得ることができたからこそであるが、当人は知らない。

 本来は逆で火球ではできないから、火柱の魔術を使うのである。

 サラティスは魔術を使うことは好きだ。

 サラティスは魔術を見るの好きだ。

 サラティスはふと思った。

 現代の人間の魔術師とはどれくらいのレベルなのだろうかと。

 シェリーから魔術を習ったが魔術を打ち合うことはしなかった。

 シェリー曰く、高レベルの魔術師同士がやりあえば無傷は難しいからやらないと。

 火柱を見て自分の命に迫ることはないと感じたサラティスは打ち合いをしてみよと思いついた。


「見た通りです」


 サラティスは風魔術で火柱を曲げ防いでいた。

 髪を乾かす魔術で熱の処理をいろいろと試行したおかげで、火魔術にも同様熱を完全に防ぐことができていた。


『火球』


 魔術師の周囲に人間の頭部程度の大きさの火球が十個現れた。

 火球が一斉にサラティス目掛けて飛んでくる。

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